「あなたがしてくれなくても」第10話:自分勝手な愛と他人思いな愛の決定的な違い

奈緒が主演する木曜劇場「あなたがしてくれなくても」が、2023年4月13日にスタート。

ハルノ晴による同名コミック(双葉社刊)を原作とする本作は、セックスレスをテーマにした大人の恋愛ドラマ。奈緒と永山瑛太、岩田剛典と田中みな実が演じる2組の夫婦の関係が複雑にもつれていく様を描く。

本記事では、第10話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「あなたがしてくれなくても」第10話レビュー

ついに”離婚”というワードを切り出したみち(奈緒)と(岩田剛典)。

「なんで急に」と『今更なにを?』と突っ込みたくなるような反応をする陽一(永山瑛太)と、「いいよ。離婚しよう」とすんなり受け入れた(田中みな実)。

この違いは、”依存度”にあるのではないだろうか。

楓には、仕事という揺るぎない味方がいる。常に仕事第一、生活も顧みず没頭してきた。ここ最近は、誠が離れていくことを察して奥さんらしい振る舞いをしようとしていたが、客観的に見ると全く持って楓らしくない。誠も言う通り「仕事を頑張る彼女」でこそ”楓”なのだ。

離婚という結果は、今の彼らにとっては必然だったのではないかと思う。
パートナー以外の女性を愛した夫と、改めて仕事に一念発起することにした妻。終わりが近づくにつれてようやく本音を吐き出せるようになった二人の関係性から見ても悪くない、最良の結果だと腑に落ちる。

対して陽一には、みち以外なにもない。まぁ、珈琲と高坂(宇野祥平)も貴重な味方ではあるが、陽一にとっての真の心の拠り所は、みちしかいないのだ。
どうしようもない自分だけど、みちがそばにいてくれるからーーそんな陽一からみちを奪ったら、一体なにが残るのだろうか。

「陽ちゃんは私のことが好きなんじゃないよ。自分のことが好きなんだよ」
「自分が困るから。自分が寂しいから。自分が好きだから。陽ちゃんの中に私がいないんだよ」

圧倒的真意。
この台詞を突きつけられたときの陽一、きっと逃げ出したかっただろうな。図星でもあり、やっぱりそうだったんだと認めざるを得ない事実。

これまで流されて生きてきたみちにとって、第二の人生を踏み出すことができた歴史的瞬間でもあった。

ただひとつ、喫茶店を舞台とした誠との対峙を経てもみちになにも言わなかったことは彼にとっての成長だったのかもしれない。

そんな状況の中、後輩の田中(北川尚弥)とともに昇進試験を受ける流れで、みちと誠は再会。
今まで流されっぱなしだった分、一人で生きていきたいーーそう決意したみちは、これまでになく仕事に打ち込む。
そんなみちのことを優しく見守る誠。
二人きりになる機会はいくらでもあるのに、離婚への第一歩は踏み出しているのに、理性を保とうとする彼らがもどかしい。

ラスト、健気な誠をどん底に陥れるような展開が訪れようとは、誰も思わなかっただろう。
みちの離婚を待って告白を切り出す誠、結果は惨敗。
"一人で生きていきたい"というみちの意志は、確固たるものだったようだが、思わず「嘘でしょ」と声が漏れ出たのは、私だけではないはずだ。

そりゃ誠とのつながりを持たなくとも、陽一と離婚する未来には変わりなかったかもしれない。だが、人生における選択のスピードを加速させた人とのお別れをする揺るぎない決心には驚いた。

泣き崩れる誠、一人ぼっちの陽一、そして、まさかの編集長就任を逃す楓。
みちだけが前を向いて歩みはじめている。

「あなたがしてくれなくても」序盤でも記したような気がするのだが、"夫婦”の定義を深掘ろうとすればするほど気が遠くなる。

たった一枚の紙切れに、必要な情報を埋めていき、朱いサインを添えるだけで、なぜこんなにも悲しくなるのだろうか。

誠の母(大塚寧々)のお葬式にて、父(山中敦史)が泣き崩れる姿を見て、私は今後、だれかと結婚してそのだれかと永遠の別れを迎える時、あんなにも悲しむことができるのだろうか、あんなにも人を愛せることができるのだろうかと、少し羨ましくなった。
今さらではあるが、みちにとっての陽一は、誠にとっての楓は、果たして。

次週、ついに最終回ということに驚きを隠せない。
男女二組ではなく、男女四人の結末を、しっかりと見届けたいと思う。


(文:桐本 絵梨花)

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