続・朝ドライフ

SPECIAL

2023年06月19日

「らんまん」竹雄から寿恵子へ、万太郎のお世話係がバトンタッチ<第56回>

「らんまん」竹雄から寿恵子へ、万太郎のお世話係がバトンタッチ<第56回>

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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第56回を紐解いていく。

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未完じゃだめ?

第12週「マルバマンネングサ」(演出:渡邊良雄)のはじまりは、クサ長屋にユウガオのお姫様こと寿恵子(浜辺美波)が訪問。でも万太郎(神木隆之介)の部屋は座る場所もないほど狭くて散らかっています。

寿恵子の純白のドレスが長屋の部屋に浮いています。

万太郎は寿恵子に、ライフワークにしたい植物図鑑を作るにはたくさんのお金がかかるので(しかも自腹)、苦労をかけるが、あなたが好きと告白します。

「花が日差しを待つように、水をほしがるように わしという命にはあなたが必要なんです」
「わしと生きてください」

とぐいぐい攻めます。

情熱的で勢いがありますが、理屈で考えると、何かヘン……と視聴者が思い始めたときーー

「それって万ちゃんの都合だよねえ」

丈之助(山脇辰哉)が割って入ります。

その通り!

万太郎は、植物が好き、寿恵子が好き、植物図鑑を作る支えに寿恵子になってほしい。という、かなり自分本位です。
従来なら、嘘でも、あなたを幸せにします的なことを言うものですが、寿恵子の利点については考えなしです。

ところが、寿恵子は父に似て冒険好きなので、万太郎の船に乗りたいと考えてしまうのです。
こういうのを「割れ鍋に綴じ蓋」というのでしょうか。

寿恵子は敬愛する滝沢馬琴先生の「里見八犬伝」のように、大長編を生み出すことを万太郎に期待しますが、またしても丈之助が、口を出します。

文学を学ぶ丈之助は、滝沢馬琴はもう古い、葬り去られる存在だと言うのですが、寿恵子は

「たとえ作者が亡くなっても完結した物語は消えません」

「百年たっても消えやしない」
(寿恵子)

と主張します。

古い新しいではなく、いいものはいいということ。そして、その評価の前提には完結させるということがある。完結させる、その絶え間ない努力と熱情こそが時が経っても色褪せないものにする。諦めないことの大事さを感じます。

作者が物語を愛しているのだなと感じるエピソードであります。たぶん、植物も好きだけど、それよりも物語が好き。作家を生業にしているのだから、そうに決まっています。世に数多ある物語で、作家の話が最も生き生き筆が冴えるのは仕方のないことなのです。

寿恵子の言うとおりで、丈之助が全作翻訳しようと思っているシェイクスピアは、400年経ってもいまだに上演されています。

丈之助がのぞいている万太郎の部屋の壁の穴。これもおそらく、シェイクスピアの「夏の夜の夢」の劇中劇で、恋人たちが壁の穴越しに会話する場面からとったものではないかと推察できます。朝ドラ「ちりとてちん」でも壁の穴が出てきて、そのオマージュとも言えますが、元ネタはシェイクスピアではないかと思われます。

「里見八犬伝」も、いろいろな形で残っています。

そして、万太郎のモデルである牧野富太郎の植物図鑑も1940年に刊行した「牧野日本植物図鑑」はいまも版を重ねています。ここに至るまでに紆余曲折あるわけで、万太郎の冒険も山あり谷ありになるでしょう。でも、寿恵子のこの言葉によって、諦めず、植物図鑑を完成させることになるのでしょう。

竹雄(志尊淳)から寿恵子へ、万太郎のお世話係がバトンタッチされた感じです。ちょっとさみしい感じもしますが。

(文:木俣冬)

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