続・朝ドライフ

SPECIAL

2022年08月05日

「ちむどんどん」第85回:「シークワーサーが食べたい」と暢子。そういえばシークワーサー忘れられていたよね

「ちむどんどん」第85回:「シークワーサーが食べたい」と暢子。そういえばシークワーサー忘れられていたよね


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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。

沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。

本記事では、その第85回をライター・木俣冬が紐解いていく。

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ぬいや〜

ってどういう掛け声。

そう喚いて、権利書を取り返した二ツ橋(高嶋政伸 たかははしごだか)。

「カメ」(by暢子)のポーズで権利書を守り抜きます。

そう、これこれ、房子(原田美枝子)もテーブルから取ってしまえばよかったと思うんですよね。できそうな距離感だったし。

「カメ」だから手も足も出ず、ただ権利書を抱えて守るしかない二ツ橋。と、そこへ、三郎(片岡鶴太郎)が現れます。

権田(利重剛)とはシベリア時代の関係があって、一件落着。

三郎、無双。

ここで得られる教訓は、人には親切にしておくものだということです。

フォンターナを縁もゆかりもないと言いながら、うちの娘(暢子)が働いていると言う三郎。

こっそり聞いている房子の微妙な表情。第84回で恋バナをして「惚れちゃった」と言ったときの声のかわいさとか、「だめ 今ここを開けるのはだめ」とドアをかたくなに開けない姿とか、恋する房子はなにかかわいいのです。

お互い気にかかっているのに、会えない房子と三郎をなんとかしたい暢子は

「あ〜シークワーサーが食べたい」と久しぶりに無敵のシークワーサーのことを思い出します。

シークワーサーを食べなくても閃きました! 披露宴をフォンターナでやると言い、三郎に「まずは相手のお母さんのことが先なんじゃねえのか?」とたしなめられます。

やっぱり、暢子が他者への配慮がないのはわざと描いているようです。周囲の大人たちに学んで、一歩、一歩、ゆっくりと成長していくのでしょう。

お父さん(大森南朋)→房子→田良島(山中崇)→三郎

の順に助けてくれる人が登場してきます。

和彦のほうは重子を説得。

「美味しいものがいっぱい出る。母さんとも一緒に食べたい」

まるで小学生のようなセリフです。和彦、すっかり幼くなりましたね。重子の前では子供に戻ってしまうのでしょうかね。

黒島さんも宮沢さんも才能があると思うのですけれど、この内容とセリフは、子役さんたちでやったら全然違った印象だっただろうなあと思います。あるいは、どうも暢子や和彦の言動を見ていると、アニメ絵が浮かんできてしまうんですよね。意識的に単純化しているのだと思うんですが。

黒島さんは「アシガール」や「SICK'S」の頃ならハマったのかなという印象で、でももう大人になられて、天真爛漫な野生児のような役がちょっと大変そうに思います。ただ、第85回で、三郎に、房子とこのままではいけないと真剣に語る場面は想いが伝わってきました。

宮沢さんは、ドラマのあとの「あさイチ」にご出演予定がコロナに感染されて欠席されました。
でも彼の印象を共演者が語るVTRだけ流されて、そこでは、役とは違う、生真面目で紳士的な一面が紹介されました。

筆者もシネマズプラスでインタビューしましたが、ひじょうに知性的な印象で、沖縄のことにも意識を向けて語る姿が頼もしかったので、和彦がこんなにも未熟な役になるとは思いもよらなかったです。逆に、こういう役も演じることができるという幅広さでもあるとは思います。

暢子がつくったラフテー弁当を、中原中也の詩「無題」を浮かべながら食べる重子。その詩は、
激しい恋の詩です。そこに、和彦と暢子を重ねるのも良し、かつての三郎と房子を重ねるのもまた良し。

中原中也の詩と彼の実話を知ると、こんなにも一般的なルールに則って生きることが大変な人たちがいて、それがこんなにも美しい詩に昇華するんだなあと思います。

この世界、思い込みの強さがものを言う。それがバカップルになるか、高尚な芸術になるか、紙一重なんです。

演じている黒島さん、宮沢さんの資質を生かし、和彦と暢子がやがて成熟して素敵な物語に昇華されますように。

「絶対許さないんだから」と言いながら、パクパクお弁当を食べてる重子がいじらしかったです。


(文:木俣冬)

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