「ばらかもん」1話:半田(杉野遥亮)が“見ようとして見た”夕日は、綺麗だった
本記事では、第1話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「ばらかもん」1話レビュー
父親は有名な書道家・半田清明(遠藤憲一)。「七光り」「賞をとるためにコネを使った」と判を押したようなやっかみを向けられる息子・半田清舟を演じるのは、若手役者のなかでも独特の地位を築きつつある杉野遥亮だ。半田清舟は書道家の雅号で、本名は半田清。父親の名前から一文字“欠けている”ことも、彼が密かに抱える劣等感に通じている、と考えるのは行き過ぎだろうか。
影響力のある美術館の館長・八神龍之介(田中泯)からの「手本のような字」という評価に激高し、掴みかかってしまった半田は、しばらく長崎は五島列島で頭を冷やすようにと言いつけられてしまう。
都会に慣れた半田にとって、空港を出た先にタクシーが停まっていないことも、バスの間隔が数時間も空いていることも、許可なしに村民がズカズカと自宅へ上がり込んでくることも、何もかもがカルチャーショック。
しかし、半田にとっては良い薬、とも言えるだろう。このドラマは、「お手本」や「基本」にがんじがらめになり、型に嵌まり込んでしまった半田が、五島やそこに暮らす人たちとの交流をとおして、少しずつ“柔らかく”なっていく物語だから。
思っていたよりもコメディ色が強めだが、軽快すぎるわけではなく、バランスがちょうどいい。杉野演じる半田の真面目さ、気難しさ、なんだかんだ言って悪くはなりきれない持ち前の素直さが、良い塩梅で表現されている。
そして、子役の宮崎莉里沙演じる琴石なるが、また良い。かわいらしさも交えた、ルールに縛られない自由さと奔放さが、飯田との良い掛け合いを生んでいる。
半田はこれまで、父のようになりたいと憧れ、理想の書道家になるよう努力してきた。「親の七光り」と影で言われようが、持って生まれた才能以上の時間と労力をかけてきたに違いない。お手本や基本が“褒め言葉”だった世界から、いつの間にか、「賞をとるために書いた字」「平凡という壁を乗り越えようとしたか」と一段違う道を示唆されるようになっていた。
きっと半田は、この五島で試される。
嵌まった型から抜け出ることを。壁を越えることを。
その先に見える景色を確かめるために。
「見ようとしないと見られない」「この壁を越えなきゃ、何も見られないぞ」……なるのそんな言葉が、半田を鼓舞する。
防波堤を越えた先に見えた夕日は、綺麗だった。
(文:北村有)
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