「ブギウギ」しつこい記者・鮫島(みのすけ)はスズ子のファンだった<第124回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第124回を紐解いていく。
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引退会見
スズ子(趣里)の引退会見が行われました。スズ子はピンクのスーツで首元に赤いスカーフを巻いて、おしゃれな感じです。寝耳に水の出来事に、たくさんの記者が詰めかけました。当然、鮫島(みのすけ)もいます。彼は写真も撮っているのに前列には並ばないんですよね。ちょっと後ろにいます。
最初に、タケシ(三浦撩太)が感極まって自分の経歴を長々披露し、スズ子に窘められるところはお約束。
スズ子が辞める理由は「いままでのようなパフォーマンスができへんようになってきた」ということ。
「自分が一番輝いていたときをそのまま残したい」という、自分に厳しい人なのです。
きれいな話でまとめようとしたスズ子でしたが、そこに鮫島が、スズ子が言いづらそうな質問をぐいぐいしてきます。
やはり水城アユミ(吉柳咲良)が脅威だったのではないか。そして、
羽鳥(草彅剛)はどう言っているのか。
大事なところを忖度しないで聞く鮫島、優秀な記者であります。
彼のそのしつこい取材の原動力は、スズ子の歌が好きだったということだったようで、「さみしくなるな」と言い「最後に、一曲聴かせてほしいな」とまでねだります。
残念ながらスズ子には冗談で交わされてしまいますが、鮫島も帽子を脱いで、慰労の拍手を贈るのでした。
鮫島がスズ子を認めていたことは、最初のステージ(「ジャズ・カルメン」)の反応で見てとれます。どんなもんだ?と斜に構えて客席にいた彼が、おお、という顔で真剣に見始める演技をみのすけさんはやっていました。
おそらく、捻くれ者なのと、雑誌を売るために、逆説的な取材の仕方でスズ子を応援してきたのでしょう。
こういうふうに、最後、この人にもいいところがあったというツンデレみたいな表現を好む視聴者も多いでしょうけれど、最後までやな記者でも良かったような気もしないではありません。ネズミ男的な人がいたほうがスパイスになるので。「ブギウギ」が「サザエさん」みたいに永遠に続く場合、「鮫島〜」としっちゅう言われるトラブルメーカーみたいなサブキャラになるに違いない。
みのすけさんは、ケラリーノ・サンドロヴィッチさん率いるナイロン100℃の主要メンバーで、前身の劇団健康の旗揚げから参加している古参です。筋肉少女帯の初期メンバーでもあり、ドラムを担当していました。サブカル最盛期の人であります。
鮫島はいやな感じの役で、こういうクセのある役はお手の物なのですが、演劇では、あの少し高いきれいな声で、ものすごく純真で切なくさせるような役が素敵だったりもします。だからこそ、下衆い雑誌記者のようで、それだけじゃない面のある人物を少ない出番で担えたのでしょう。
無事に引退会見を終えたスズ子のもとに、驚いた秋山(伊原六花)が大阪からやって来ます。いつもの、芸能人に関心のない喫茶店は「珈琲をどうぞ」という名前らしいです。
秋山は、まだまだ現役を続けながら後輩を育てています。
すっぱり辞める(俳優はやるけど)スズ子、歌一筋のりつ子(菊地凛子)、後輩も育てる秋山と三者三様です。
歌手を辞めるという決断を世間に公表した夜、スズ子は、愛子(このか)のほか、血のつながっていない家族のような人たち――タケシ、大野(木野花)、小田島(水澤紳吾)と一(井上一輝)と過ごしていることに感無量。
「みなさんはわての宝物です」
歌より家族という物語なのですね。スズ子は最も幸せだった、はな湯という原風景を求め続けてきたのかもしれません。
でも、羽鳥はひとり難しい顔をしていました。まだ羽鳥とスズ子の問題は解決していません。
(文:木俣冬)
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(C)NHK