続・朝ドライフ

SPECIAL

2024年04月16日

「虎に翼」法学部男子のやじがひどい。彼らに法は任せられない<第12回>

「虎に翼」法学部男子のやじがひどい。彼らに法は任せられない<第12回>


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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。

日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第12回を紐解いていく。

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「慎みなさい」

寅子(伊藤沙莉)の家で行われた法廷劇の衣裳づくりに、花江(森田望智)も参加してチクチクチク……。

女中に間違えられた花江は、姑はる(石田ゆり子)への不満もあって機嫌が悪く、なんだか空気が悪いため、早々に解散することに。

そこへ、涼子(桜井ユキ)の家の執事・岸田(奥田洋平)が立派な箱に入った手土産を持って迎えに来ます。

ニコニコしているけど慇懃無礼な岸田。寅子の父・直言(岡部たかし)が帝都銀行に勤務しているので「ホッといたしました」と言います。

男爵家がつきあう相手はある程度、家柄が良くないといけないようです。寅子の家がいわゆる庶民の家でなくて良かった。梅子(平岩紙)も女中はどこの家にもいるというような感覚なので、寅子の仲間たちは、いい家柄が揃っていると言えます。香淑(ハ・ヨンス)も外国からの留学生ということは恵まれているほうなのではないでしょうか。

よね(土居志央梨)はカフェーで働いているので苦学生なのか。彼女の家庭環境は未だ謎です。
恵まれたお嬢様の嫁入り前の時間稼ぎや、奥様の暇つぶしとは違うと苛立っているようですが……。そして、カフェーでも、男たちの偏見に苛立っています。よねはどこに行っても居心地が悪くてイライラ。涼子の書いた法廷劇の台本も気に入りません。

「私は本気なんだ。本気で弁護士になって世の中を変えたいんだ」と主張するよねに寅子が反論します。

「たとえ あなたの本気が勝っているからって 誰かをけなしていいわけじゃないと思うの」(寅子)

そのときの、よねの表情が印象的でした。
確かに、みんな、それぞれの尺度で本気なのです。

皆、それぞれ思うところあって法を学びに大学に来ていて、目下、涼子の家庭環境がじょじょにわかりはじめているところ。

男爵家の娘である母・寿子(筒井真理子)はお酒ばかり飲んで、退廃的な雰囲気です。家柄がよく代々続く資産があるせいで、だらだら暮らしているようです。お母さんが出てくるとがぜん、昼のメロドラマふうになります。

三代、男子に恵まれなかったので、婿養子をとり続けていて、夫・侑次郎(中村育二)は妻に頭が上がらなそう。涼子にもいい婿をとることが求められているようで、そういう生き方が涼子には耐えられないのでしょう。

なんだかんだで、法廷劇当日。
一生懸命、演じていると、「魔女部」とからかってくる男子学生がヤジをとばします。穂高(小林薫)はやけに上品に咳払いするだけで本気で止めようとはしていないような……。そのため学生は増長していくばかり。

最初は無視して冷静に芝居に集中しようと寅子はしますが、そのうち辛抱たまらず、「退廷なさい。ここは法廷ですよ。慎みなさい」と毅然と言い放ちました。
それでも男子学生は馬鹿にするばかり。

「どうせ誰も弁護士になんてなれねえよ」と言われても、
「いま、わたしたちにその言葉を投げかけることがどれだけ残酷かわからないの」と寅子はあくまで自制的に反論します。

相手を言い負かそうと侮辱や否定する言葉を使うのではなく、自分たちの気持ちを伝える。このセリフは、いろいろ苦しい思いをしている者たちの声の代弁だなあと感じます。

でもついに爆発しそうになります。尾野真千子さんのナレーションが「舞台降りたらダメ!」と小さく叫びますが……。寅子のすごい形相で続くと相成りました。

こんな不良生徒が法を学びに来ているのは、家柄が良くお金があるからでしょうか。彼らがまかり間違えて法律家になったら人々の尊厳は守られない。最悪です。
暗澹たる気持ちになります。

ところで。花江は女中に間違えらるほど、家事ばかりやっています。ただ、はるだって気をつかって穏やかに接しているようで、いわゆる嫁虐めが行われているわけではないようです。

花江のお出汁の味をはるが味見して、「うんいいわね でももうちょっと甘くても」とアドバイス。別になにも意地悪ではない。でもお台所で鍋の中身を甘くしている花江の顔が浮かないことこの上ない。ちょっとしたことが、花江のストレスとなって積み重なっているようです。

豆皿に出汁をいれて試飲する家事描写。何気ない生活描写も当たり前に思わず、意味を問い直すことも大切でしょう。

(文:木俣冬)

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