「虎に翼」毒饅頭殺人事件の真相にゾッとなる<第14回>
「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら
2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第14回を紐解いていく。
[※本記事は広告リンクを含みます。]
▶︎「虎に翼」画像を全て見る
「虎に翼」をU-NEXTで視聴する
「お気立てに難がおありでしょう」
「戦わない女性たち、戦えない女性たちを 愚かなんて言葉でくくって終わらせちゃだめ」
(寅子)
寅子の、人として大切なことを説く言葉が響きました。
女性たちはまだ戦うという土俵にすら立てずにいる。それがなぜか、どうしたら土俵に上がれるのか、そこから考えないといけないということでしょう。
第14回を順に見ていきます。
よね(土居志央梨)の生い立ちを聞いて、何か声をかけたいけれど、なんと言っていいのか迷う寅子(伊藤沙莉)。
こういう逡巡を、ナレーション(尾野真千子)が語るので、視聴者が寅子の感情を間違えずに済みます。伊藤沙莉さんの表情も相まって、とてもわかりやすい。
最近のドラマは、感情を語らず、余韻で見せようとすることも増えましたが、それだといろいろ多岐に想像を膨らませる楽しみもありますが、わからないままストレスにもなります。
今回「虎に翼」の場合は、法律という明文化する行為が題材なので、寅子の逡巡から決定に至るまで、あらゆる可能性を明確に提示することが選択されたのでしょう。そしてそれが多くの視聴者の心を捉えています。
寅子が迷って答えを出せないでいると、よねから話し出します。「余裕があって恵まれたやつらに腹が立つんだよ」と。
でもそこで、寅子は、よねの恵まれた点を発見します。生理で休まずに済むということでした。
さらに、涼子(桜井ユキ)が法廷劇で果敢に立ち向かったよねを讃えます。そのとき「お気立てに難がおありでしょう」や「股間を蹴り上げる」(これを数度繰り返す)など言葉遣いが個性的でした。「お気立てに難がおあり」って慇懃無礼にもほどがある!
寅子は、中止になってしまった毒饅頭殺人事件を検証することにします。饅頭に毒を入れることが可能か、寅子の家の台所で、みんなで実際にお饅頭を作ってみました。
よねも割烹着を着て参加。花江(森田望智)もはる(石田ゆり子)も手伝います。
お饅頭を作りながら、女子トーク。
ここで、いかにも女子トークな、恋愛あるあるみたいになっているところが、
そのあとの、よねのいらだちに繋がります。
「この社会は女を無知で愚かなままにしておこうとする」
(よね)
冒頭に引用したセリフは、このあと寅子がよねをたしなめたときのセリフです。
寅子はややがさつな感じに見えますが、そう見えてとても思慮深い。
そのあと、女性たちにとってこの社会の闇はさらに深いことがわかります。
法廷劇の台本を書いた涼子が、隠していた毒饅頭殺人事件の真実を明かします。
学長(久保酎吉)が、かわいそうな女性を法学部の女性が救うというわかりやすい設定に事件を改変していたのです。
「私の筋書きどおり、よーく書けている」という学長の「筋書き」とは、物語の筋書きと、学長の思惑とが掛かっていたのでしょう。
寅子たちが愕然となった、夫を毒殺しようとした妻の職業と毒の正体は、ミステリー仕立てに敬意を表して記しません。
「女たちはいつの時代もこんなふうに都合よく使われることはある」(ナレーション)。
土俵に立てたと思っても、女性活用をしているというアピールのためでしかない、じつは男性のお手盛りでしかないということが往々にしてあるのは、現代も同じ。だからいつまでたっても女性は戦えないという、虚しさと悔しさが伝わってきました。
毒饅頭殺人事件の真相というミステリー仕立てに女性問題を盛り込む凝った内容で、15分という短かさなのに、とても満足感がありました。
寅子たちの手伝いをするはると花江の描写も凝っています。はるが積極的に寅子たちのなかに入ってきて推理しているとき、花江は台所から出てこない。背中しか映らない花江の思いを感じて、なんともいえない気分になりました。
(文:木俣冬)
“朝ドラあるある”満載!「朝ドラ辞典」を見る
木俣冬著「ネットと朝ドラ」、現在好評発売中
「虎に翼」をU-NEXTで視聴する
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
(C)NHK