<興行分析>『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』“偉業達成”に絶好のスタート!
4月12日(金)に『名探偵コナン』の劇場版第27作目、映画『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』が公開されました。
2023年の『黒鉄の魚影(サブマリン)』で悲願の興行収入100億円を突破し(最終興行収入138.8億円)、シリーズは一段階高いレベルに昇りつめました。
そんな中で“月下の奇術師”の異名を持つ怪盗キッドと、キッドとは因縁深い“西の高校生探偵”こと服部平次を投入して、北海道・函館を舞台に謎に包まれた日本刀をめぐるミステリーが展開する新作を持ってきました。
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これまでの“100億円映画”とは違う
100億円の興行収入を突破した映画は2024年4月現在で45本あり、公開中の『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』が46本目になるのではという状況で、年に1~3作品ほどは“100億円映画”が誕生しています。
このように書くと、『名探偵コナン』の100億円突破もそれほど凄いことではないかのように思われるかもしれませんが、劇場版『名探偵コナン』は毎年新作が作られ続けている中でのこの数字のため、他の“100億円映画”とは事情が大きく変わっています。
これまでの連続100億円突破映画
シリーズものであり、興行収入100億円を連続で突破した映画を見ると以下のようになります。
- 『アナと雪の女王』(2014)『アナと雪の女王2』(2019)
- 『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001)『秘密の部屋』(2002)『アズカバンの囚人』(2004)『炎のゴブレット』(2005)
- 『踊る大捜査線 THE MOVIE』(1998)『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003)※同一監督
- 『トイ・ストーリー3』(2010)『トイ・ストーリー4』(2019)
- 『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェンスト』(2006)『パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド』(2007)※同一監督
『スター・ウォーズ』は『エピソード1 ファントム・メナス』(1999)と『フォースの覚醒』(2015)で飛び飛びになっており、それ以外のメジャーフランチャイズタイトルの『ジュラシック・パーク(ワールド)』や『ロード・オブ・ザ・リング』などでは、興行収入100億円を突破したのは1作品にとどまっています。
2本まとめて撮ったことで連続公開できた『パイレーツ・オブ・カリビアン』以外は数年のブランクがあります。
ちなみにシリーズものではありませんが、宮﨑駿監督の作品では『もののけ姫』(1997)から『千と千尋の神隠し』(2001)、『ハウルの動く城』(2004)、『崖の上のポニョ』(2008)、『風立ちぬ』(2013)の5作品が100億円を突破しています。最新作『君たちはどう生きるか』(2023)が現在90億円台半ばというところで、連続記録の行方に注目です。
もう一人挙げると、“100億円映画”の担い手となった感のある新海誠監督が『君の名は。』(2016)、『天気の子』(2019)、『すずめの戸締まり』(2022)と3作連続で大台を突破しています。
洋画ではただ一人、ジェームズ・キャメロン監督が『タイタニック』(1997)と『アバター』(2009)という2本の“100億円映画”をランクインさせています。
『名探偵コナン』劇場版シリーズの異質さ
ここまで書いた通りシリーズものであるorなしにかかわらず、2作品連続、ましてや2年連続で興行収入100億円の大台に達するというのは、非常に稀有な例なのです。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』のときは、まさに“パイレーツ・オブ・カリビアン イヤー”といった展開で「2作品で1パッケージ」の形で売れたからこそできた離れ業と言っていいでしょう。
そんな中での『名探偵コナン』の劇場版シリーズです。コロナ禍で丸々1年延期されたこともありましたが、基本的に「年に1本をGWごろに公開」というスタイルを30年近く堅持し続けています。「2025年GW公開予定」と次回作についても予告されています。
『名探偵コナン』の劇場版シリーズは何年もかけて作り上げるのでもなく、一瞬のブームの熱量を活かすのでもなく、毎年淡々と作り続けているのです。(その意味ではプログラムピクチャーの枠組みの1本と言っていいかもしれません)
このような公開ペースの映画といえば『ドラえもん』や『仮面ライダー』(これも厳密にはシリーズものではないですが)など、ごくわずかです。『名探偵コナン』の劇場版シリーズはそんな量産体制で作られながら、日本でたった45作品しかない“100億円映画”に昇りつめたのです(現状歴代18位)。
これは大げさではなく、偉業と言っていいでしょう。そして『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』は、邦画では初となる2年連続での興行収入100億円突破を目指します。
ついに映画『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』公開!!
『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』は『名探偵コナン』史上、歴代最大規模の515スクリーンでの公開となりました。
本作は「試写ゼロ宣言」の宣言通り、マスコミ関係者向けの試写も一切行われないままお披露目を迎えました。
私はここ数年の“ヒットの震源地”となっている感のある、TOHOシネマズ新宿で初日に鑑賞しました。
ネットでのチケット購入が定着したこともあり、チケット売り場が大混雑ということはなくなりましたが、やはりグッズショップには長蛇の列。通販で買えるものもありますが、やはり劇場限定のものもあり、ファンの熱量を感じさせる風景でした。
そんな『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』は週末3日間で興行収入で33.5億円、観客動員で227万人を記録。これは前作『黒鉄の魚影』と比べて興行収入で106.5%、観客動員104%という素晴らしい数字です。
今後の動向
シネコン時代の映画興行はその作品がどれだけ高いポテンシャルを持ち、高レベルな数字を叩き出していても、その前後に大きな作品(=ヒットを予想できる作品)がある場合は、公開規模に制限が出てしまいます。
そこで映画の公開スケジュールを見ていくと、これまた『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』にとっては廻り合わせが良く、『陰陽師0』『ゴジラxコング 新たなる帝国』、5月に入って『猿の惑星/キングダム』といった注目作が出てきますが、大きな障壁にはならないと思われます。
『ゴジラxコング』と『猿の惑星』とは、IMAXをはじめとする客単価の高いラージフォーマットの取り合いが起きるかもしれませんが、大勢には影響は少ないでしょう。
『100万ドルの五稜星』にとっては、『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』の方が、上映回数の競合となるかもしれません。
それでも、このロケットスタートと競合作品の並びを見ると、『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』の偉業達成の可能性は高いと見ていいでしょう。
“ちなみに”と強調してみると、日本では女性監督で興行収入100億円を突破した監督は今のところいません。
女性監督作品最大のヒットは、2019年の『名探偵コナン 紺青の拳』の93.7億円で、監督は今回の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』も手掛けている永岡智佳監督です。
つまり『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』が100億円を突破した暁には、永岡智佳監督が女性監督初の100億円映画監督になります。そういった意味でも、今後の興行は注目です。
(文:村松健太郎)
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