「虎に翼」お父さん(岡部たかし)、罪を否認するも、判定は金曜日に持ち越し<第24回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第24回を紐解いていく。
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やっぱり扇子がうるさい
倒れた直言(岡部たかし)が一旦、休憩して戻ってくると、寅子(伊藤沙莉)に「ごめんな トラ」と謝り、検察側の主張する事実をすべて否認しました。この「ごめん」は、嘘を言って「ごめん」ではなく心配させて「ごめん」でした。直言は自白を強要されたとまで言い、法廷は騒然。
が、日和田(堀部圭亮)は予審で自白したではないかと強気で攻めてきます。このとき、また扇子をパンパン叩きます。直言は今度は「やめてくれませんか」と言い返すことができました。その言い方が岡部たかしさんらしく、真面目なシーンのいいアクセントになっています。
一旦休憩して、穂高(小林薫)と話したことで気持ちの整理がついたようで、よかった。
ここから弁護側が反撃開始。検察側が証拠とする事実が曖昧であることを指摘していきます。が、いったん自白したではないかとなお強気で、記録はいくらでも偽装できると突っぱねます。
弁護側は、身内のはる(石田ゆり子)の日記はいくらでも改ざんできると検察側に言われても、はるが着物を買った呉服屋の記録もすでに調べていたりして、抜かりはありません。
検察側の指摘する証拠はどれも曖昧。「疑いがある」「推測できる」「そう察せられる」と「どれもぼんやりしている」と穂高は指摘。
そして、長時間にわたり革手錠をして自白に追い込んだことは人権蹂躙に当たるのではないかと切り込みます。日和田はひどい暴れようをしたから手錠をしたことを「鮮明に覚えています」と言いだします。「曖昧」と言われたから「鮮明」と言い換えたのでしょう。
こういうやりとりは頭の体操になり、朝の眠い目が覚めて、ありがたい。
革手錠で縛ることは、違法の可能性があるが、直言が暴れたからだと言い逃れようとしますが、
寅子が監獄法施行規則第49条に規定されたことに気づきます。手錠は所長の許可を得ないと使用できないが、それをできたのかと。
「記憶が定かではない」と言い逃れする日和田に、さっきは「鮮明に覚えている」と言ったことを指摘。ついに形勢逆転。
言葉尻を捉えて攻めていくのはじつに小気味いい。
世論も検察側への批判が高まります。それでも1回自白したことを盾にことを押し通そうとしていて……。
裁判で、さりげなく桂場(松山ケンイチ)が助け舟を出していました。松山さんは大河ドラマ「どうする家康」で扇子を小道具に使っていましたが、今回は扇子を小道具に使っている日和田にチクリと言う役割です。
桂場が裁判で余計なことを言ったからか、日和田と繋がっている水沼(森次晃嗣)が目をつけたようで、出世をちらつかせてきます。ここまでの桂場のキャラをふまえると転ぶ人ではないであろうと思いますが、さて……。
第1回公判は昭和11年1月で、それから12月。1年も争っていたのか。長い。でもドラマは15分。
判決ーー。当然ながら、結論は次回に持ち越しです。土日挟まないだけマシですが、気になる〜。
リーガルドラマは情緒ではなく理屈推しで、よくも悪くもシンプル。視てる誰もが間違えようがなく、展開がわかりづらいとかほかの人の解釈が気に入らないとかいうストレスなく見られるのが、人気の要因でありましょう。
こういう場では俳優の芝居が情緒を担います。
狸親父的な小林薫さん。口ぶりは柔らかく、でもチクチクと攻めてくる賢い意地悪さ。敵に回すとこわいけれど、味方にしたら愉快だし頼もしい。
ちらっと出たときのちょび髭がユーモラスかつ当時の人らしさもあり、いいアクセントになって印象に残る錦田役の磯部勉さんもさすがで、ひたすら実直そうな雲野役の塚地武雅さんも。
松山さんも、澄ました顔の下に何かを秘めていることがわかります。
堀部さんのあの異様な圧の強さもなかなか出せるものではない。
そして、岡部さん。人間の弱さを惜しげもなくさらけだしている。
言葉にならない部分を豊かにふくらませてくれる俳優たちの層の厚さが見どころです。
(文:木俣冬)
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