続・朝ドライフ

SPECIAL

2024年05月30日

「虎に翼」第1話冒頭へ。【日本国憲法】すべての国民は、法の下に平等である<第44回>

「虎に翼」第1話冒頭へ。【日本国憲法】すべての国民は、法の下に平等である<第44回>


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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。

日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第44回を紐解いていく。

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焼き鳥の包み紙

昭和21年10月。
直言(岡部たかし)が亡くなっても「生活は続いていきます」という語り(尾野真千子)を聞くと、昨日の直言の「弱くてだめ」の自虐を思い出し、いてもいなくても生活はあまり変わらないのでは、という気持ちに。

いやいや。直言は立派なムードメーカーでした。彼がいたからギスギスしないで空気が柔らかくなっていたはずです。

なんだかんだいっても直言が猪爪家の支柱でした。それをわかっているのでしょう、直明(三山凌輝)が”大黒柱”になるため、マッチ箱作りとは違う仕事をしようと考えます。

「大黒柱」という概念になにか思うところありそうな寅子(伊藤沙莉)。
でももう前みたいに「納得いかない」と言葉にはしません(この言葉も尾野真千子でしたが)。

日々無気力に過ごしていると、復員兵が訪ねてきます。彼は、優三(仲野太賀)のお守りを持っていました。優三とは病室が一緒で、復員兵の病状が悪化したとき、このお守りを持たせてくれたというのです。

「私がご利益を吸い取ってしまったんじゃないかとずっと申し訳なくて」

五黄の寅年生まれ効果はあったのかもしれません。そして優三は最後まで他者思いのいい人でした。

復員兵には悪いけれど、優三に帰ってきてほしかった。
寅子はそれでも泣くことができません。
心配したはる(石田ゆり子)が直言のカメラを売ってお金をつくり、寅子に手渡します。

はるも花江(森田望智)も、どうしようもなくなる前にこっそりお酒を飲んだりお菓子を食べたりしてガス抜きをしていたことを明かします。

はると花江はひとりでこっそり。そう思うと、かつて寅子は優三とふたりで美味しいものをこっそり分かち合っていて、仲良しで幸せだったと言えるでしょう。
いや、はると花江も、夫が死んだあとのこっそりなのかもしれません。が、夫婦でいたときもたぶん、ふたりでこっそり分かち合うようなことはなかった気がします。それがこの時代の夫婦関係、男女関係なのでは。だからこそ、寅子と優三の関係性が特別だし、このあとの法改正が大きいのです。

はるだって、直言が亡くなってかなり参っているのではないかと思いますが、娘のことを第一に考えているようです。長年、スンッとして生きてきただけあってちょっとメンタルが違うのかもしれません。

直明はガス抜きしているかなあ。優三に継いでいい人要員なので心配です。

寅子は闇市の焼き鳥屋さんで焼き鳥とどぶろくを頼みますが、食べる気がしなくてそのまま店を出ると、店員が追いかけてきて新聞紙に包んだ焼き鳥を手渡します。

その包みこそ、第1話冒頭、寅子が河原で読んでいた新聞でした。

焼き鳥のタレがついた新聞には、昭和21年11月3日に公布された日本国憲法が記されていました。ようやくすべての国民が平等になったのです。

うれしいニュース、でも、それを一緒に喜ぶ優三はいない。
「分け合って食べるって言ったじゃない」のセリフが染みます。


日本国憲法が公布されたことを寅子は、ラジオで聞きもしなかったのか。猪爪家は新聞もとれないほど貧乏になったのかも気になりますが……。焼き鳥を頼んで食べないもったいなこともしてしまうのは、すべて、それだけ寅子の心が死んでしまっていたからでしょう。

1度、法から離れたとき新聞を読まなくなった描写もありました。生きるために弁護士として働こうと思い直したこともあったわけで。どんなに心が死んでいても、法律がらみ(しかもすごく大事な)には体が反応してしまいそうと思うのですが、これも寅子の場合はそうじゃなく、そこまで心が死んでしまっていた。それが憲法公布で、どこかにつかえていた優三の死を飲み込むことができたことで、涙がようやく溢れて、心が生き返って……。

すべてはここから――。

この回、闇市のスリの勢い良さ、花江の息子・直人、直治が優未をあやしている自然な感じなど、本筋とは関係ない部分にも心がこもって見えて、そこが良かったです(安藤大佑演出)。


(文:木俣冬)

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