「虎に翼」闇米を拒否した花岡の質素なお弁当、寅子のお弁当は闇米<第49回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第49回を紐解いていく。
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花岡(岩田剛典)と再会した寅子(伊藤沙莉)。
以前のようにベンチに並んでお弁当を食べます。
前回、もうひとつのベンチには優三(仲野太賀)の幻が出て、今回ベンチの隣には花岡。
花岡のほうが距離が近いのが、亡くなってからも優三がやや不憫であります。
花岡は、東京地裁、経済事犯専任判事として食糧管理法違反の事案を担当しているせいか、やたら質素なお弁当。寅子のお弁当は闇市で買ったお米が入っていたため気まずい。でも、「闇市で買ったものでした」の尾野真千子さんの語りの語尾がやわらかくて、ほっとします。
花岡は、自分を律しているけれど、寅子を責めることはしません。闇で商売している人たちが罪であり、それを食べている人たちには罪がないと思っているのでしょう。
寅子が「謙虚」と言われていると聞いて「謙虚?」と驚くというお約束ぽい場面のあとに、
梅子(平岩紙)の言葉を引いて「どうなりたいかは自分で決めるしかない」と励まします。
みんなどうしているかなと思いを馳せるふたりは、大学時代の向学心に燃え、きらめいた思い出のなかにいるんだなあと思います。こればっかりは優三には入っていけない世界なのです。
「僕の大好きなあの何かに無我夢中になってるときの寅ちゃんの顔をして何かをがんばってくれること」と願った優三がもうひとつのベンチ、「前もいまも全部君だよ」という花岡は同じベンチ。この位置関係とそれぞれの言葉が深いです。
寅子はもらったチョコを半分に割って花岡に渡します。
闇の物資を食べている人を責めないけれど、自分は食べない。それが彼のなりたい自分のようです。でも、チョコは闇のものではなく、子供のために彼はありがたくもらって帰ります。
第48回で花岡がいくらか小銭を援助していたハーモニカのうまい傷痍軍人に、寅子がチョコを分けないわけは、闇市のものを食べない花岡と闇市のものを食べる寅子の違いでしょうか。すでに小銭を援助していたのかもしれません。
花岡は桂場(松山ケンイチ)に会って、
「人としての正しさと司法としての正しさがここまで乖離していくとは思いませんでした」と語ります。
何か思い詰めているような花岡が心配。前はあんなに前途洋々でキラキラと輝いていたのに。桂場も心配しています。
帰宅すると、ライアン(沢村一樹)に連れられてホーナー(ブレイク・クロフォード)が子どもたちにたくさんチョコを携えて来ました。祖父母がユダヤ人でアメリカに亡命したホーナーは戦争でいろいろ苦労してきたようです。
花江(森田望智)は英語で礼を言い、子供たちは喜びます。ここも注目ポイントかと。花江は女学校で英語を学んでいたけれど、結婚によってその教養が生かされることなく、子供たちは花江の実力を知りません。そして、花江のことを言うのははる(石田ゆり子)で、彼女もまた勉強していたけれど、結婚して勉強を活かす場を失っていた人です。
そして、民法改正案の会議。
家族制度の改正案に反対な神保(木場勝己)とGHQの意見に倣う派の穂高(小林薫)が対立。
心配する寅子に、桂場は
「司法にはどちらかに偏りすぎず、相反する意見・主張が必要だ」と平然としています。
会議では、女性の側に立ったように見えた穂高。寅子がいま、子供のために無理して働いていると感じて、職を紹介しようとします。
会議では、女性が寅子しかいないことを指摘していたのに、その寅子を辞めさせようとする真意は……。
改正案推進に見えるのも単にGHQの顔色を伺っているだけなのでしょうか。大学でもそういうところがありました。いやでも、それは「雨だれ石を穿つ」の精神で、地道な活動をしているのでしょうか。彼にとっては未来の子供を大事にすることが最優先のような気がします。寅子の妊娠を知ったときも、いまも、子供のために良きことを考えているように思えます。自分たちのあと、子供たちが未来を作っていくものですから。
神保教授もライアンも桂場も、穂高も謎が深い。
(文:木俣冬)
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