続・朝ドライフ

SPECIAL

2024年06月28日

「虎に翼」茨田りつ子が歌った。寅子も歌った。歌の金曜日<第65回>

「虎に翼」茨田りつ子が歌った。寅子も歌った。歌の金曜日<第65回>


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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。

日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第65回を紐解いていく。

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花江の本音

竹もとでお茶していたら、寅子(伊藤沙莉)は仕事に戻らなくてはならなくなり、あまり接点もなかった梅子(平岩紙)花江(森田望智)がふたりきりになります。

花江は昔、寅子の同期たちと一緒に毒饅頭を作ったことを思い出し、その頃と自分は変わっていないと言います。そうそう、みんなが学んでいるのに、自分だけ家庭に入っていることにコンプレックスを感じていたのでした。

そして、梅子に打ち明けます。
息子に、道男(和田庵)といっしょになってもいいと言われて驚いた話を。細かいところは割愛しますが、決して恋愛感情を抱いてはおらず、道男が来ると、その晩、亡くなった直道(上川周作)が夢に出てくるからうれしくてつい笑顔になっていただけというのです。

「色男」とか言ってまんざらではない道男はこの話を聞いたらどう思うのでしょうか。まあ、子どもの一員になりたかっただけだから、気にしないでしょう。きっと「色男」も意味をわかって言ってないのだと思います。

道男は、どういうときに言う言葉なのかという知識に乏しい、身体は大きいけれどまだ子どもなのだということを描きたいのだと思います。子どもがやけに深刻にお母さん再婚するの?みたいなことを言い出すのも、子どもゆえの反応だと思われます。

道男や子どもたちの、幼さゆえのズレみたいなものを書いた脚本のおもしろさは、演出でわかりやすく見せる工夫も必要だったのではないかと感じます。ただ、花江が忙しそうで、何かが溜まってる顔はおりにつけ映していました。

「いい母になんてならなくていいと思う。自分が幸せじゃなきゃ誰も幸せにできないのよきっと」と自分にも言い聞かせるように言う梅子。
妻としても母としてもうまくできなくて降参し、家を出た梅を見倣ってか、花江は、その日、家族に、家事を手伝ってほしいと頼みます。
ここのところ、忙しそうで、もう限界にきていたのです。

はる(石田ゆり子)は完璧主義でなんでも全部やっていたけれど、花江はそれができないと。
つまり、はるの突然死は過労死だったのかも? なんでも自分でやってしまう人は寿命を縮めてしまいますから気をつけたいものです。

梅子と花江には接点がないように思いましたが、家事に悩む点において接点がありました。

できないことはできなくていいのです。
梅子は、良き妻、良き母にはなれませんでしたが、(しかも法律家にもなれませんでした、今後はわかりませんが)、おにぎりだけは絶品です。

よね(土居志央梨)
轟(戸塚純貴)の事務所に居候しはじめた梅子はおにぎりを作って振る舞います。
寅子はそれを、汐見(平埜生成)に託します。家で待ってた香淑(ハ・ヨンス)はそれを食べて涙します。それだけで梅子が戻ってきたのだと感じていることでしょう。寅子が梅子に香淑の話を勝手にしていないという、暗黙のメッセージも感じられて、いい場面でした。

そして、茨田りつ子(菊地凛子)の愛のコンサートが開催されます。「別れのブルース」を歌うかと思ったら、「雨のブルース」でした。「別れのブルース」は恋の歌なので、ここは恋ではなく、誰もが抱える悩み苦しみを歌った歌にしたのでしょう。ドラマでは描かれない、深い悲しみを茨田さんが代わって表現してくれました。

楽屋で、りつ子と寅子が会話を交わします。寅子がこの仕事、すなわち法律が好きだからやっていると言うと、りつ子も同意します。
寅子も、お裁縫は上手ではないですが、法律が好きで、その知識を生かした仕事ならがんばれるのです。

コンサートのあとのお疲れ様会のようなもので、寅子は十八番の「モンパパ」を歌います。
その歌のなかで、花江は夢で直道を思い出し、寅子は優三(仲野太賀)を思い出します。やっぱり大事な人を亡くした悲しみを抱えているのでしょう。

ここでおもしろいのは、汐見は飲み会につきあわず家に帰り、寅子は残って深酒して翌朝寝坊することです。なんだか男女逆転していておもしろいです。

ちなみに、毒饅頭殺人事件は、医学生だった乙蔵と恋仲になった女給・甲子が、結婚するつもりで乙蔵に長らく資金援助を続けていたが、乙蔵が医師になった途端、別れを切り出されてしまい、毒饅頭を使って乙蔵一家の殺害を図ったという事件。光三郎とすみれの件を若干思い浮かべます。すみれが大庭家殺害を図りませんように。

(文:木俣冬)

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