「ちむどんどん」第53回:こんな朝ドラはいやだの世界。謝らないしお礼も言わない。喧嘩上等。
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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第53回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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ニーニーがやって来た
シェフ代行という重責を任された暢子(黒島結菜)は矢作(井之脇海)をはじめとした同僚に冷たくされています。房子(原田美枝子)の親戚贔屓と思われているからです。悩む暢子の元に賢秀(竜星涼)がやって来て(養豚所を辞めたため住む場所がなくなったのでしょう)、
アドバイスしたことは「暢子はなめられている」「謝ったら負け」という「喧嘩上等」の精神でした。
さっそく暢子は謝らずお礼も言わずすべて「これはシェフ代行の命令です」と強気に出て、現場の空気を悪くしてしまいます。
同僚たちは、オーナーの身内であることにも不満があるうえ、暢子が女であることが不満なのです。でも暢子は厨房では男のつもりと主張しますが……。
ちょうどその頃、和彦(宮沢氷魚)は「おかあさんの味」を売りにした広告を批判する記事を上司に止められ苛立っていました。
あまゆで、暢子、和彦、智(前田公輝)、愛(飯豊まりえ)が男女の理想のあり方について語り合います。
食べる量は男女で関係ない、暢子は人一倍食べると息巻きます。
その主張を聞いた三郎(片岡鶴太郎)はポークと卵をたとえに、美味しいものはオスかメスかなんて関係ないとわかるようなわからないような持論を説きます。
第53回はツッコミエンタメ形式でした。登場人物が反面教師となり視聴者がおかしいところを指摘して楽しむ形式です。
何があっても謝らないしお礼も言わないという提案を成人し社会人になった暢子が鵜呑みにしてしまう謎の世界。
「こんな●●はいやだ」という遊びがありますが、「こんな朝ドラはいやだ」→社会人6年めの主人公が謝らず礼を言わない。……そんな感じです。
なめられたら謝らず強気でいくことも必要ですが、ときと場合に寄ります。賢秀の場合、それを言った理由は養豚所の清恵(佐津川愛美)の存在によるものです。彼女が賢秀にそうしているからで、彼女の強さを知らず知らずに好ましく思っているからでしょう。また、同じことをして対抗し合うことを内心楽しく思っているのです。だから暢子に勧める。まったくばかですねえ。賢秀に関してはばかだなあで笑って済ませることができますが、暢子は……。
朝ドラでは時々、謝らない、礼を言わない問題がSNSを賑わせます。なぜか、ヒロインが謝らない、礼を言わない人が多いのです。視聴者の多くは礼儀正しい登場人物が大好き。礼儀を知らない登場人物にいらいらするのですが、しょっちゅうこの反応があるのにドラマでは修正しないのは、理由があるのでしょう。
不倫なんかはご意見を元にあまり描かなくなっていますし、喫煙シーンもありません。世間の反応を気にして書かないことがあるなかで、謝らない、礼を言わない人物を書き続けるのはなぜか。
簡単に謝らないのは自分の意見を通す強さを、礼を言わないのは、当たり前のことに礼を言う必要のない心の大きさを伝えたいという理由ではないかと筆者は思っています。
謝り過ぎは卑屈だし、お礼を言い過ぎても善行の価値が下がります。和彦の言う「男も女もそれぞれあるがまま。尊重されて大切にされる世の中」のように、みんな自分を大事に堂々と生きるべきということなのではないでしょうか。
それにしても、余計なお世話ですが、このエピソードは暢子がフォンターナに入ってすぐのほうが良かったのではないでしょうか。1年目ではシェフ代行に抜擢は無理だから6年経過させたと思いますが、6年経って、職場で信頼関係を築ける人がオーナーとシェフしかいないというのはちょっとさみしい気がします。
オーナーとシェフに守られていたせいでチームワークの大切さに気づけなかった暢子の反省とこれからに期待したいと思います。矢作以外、全員モブでしかないのは、暢子が彼らとコミュニケーションをとっていないという現れですよね。
(文:木俣冬)
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