続・朝ドライフ

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2024年07月11日

「虎に翼」寅子の問題はみんなに「好かれてしまっている」こと?<第74回>

「虎に翼」寅子の問題はみんなに「好かれてしまっている」こと?<第74回>


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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。

日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第74回を紐解いていく。

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桂場、異動の理由を明かす

斬りつけられてショックなまま帰宅すると、家族がカルタをやっていました。家族制度と母について描いた寺山修司の「身毒丸」だったら、主人公・身毒丸の家族が「家族合わせ」のカード遊びをしていて、なぜか母札がありませんという悪夢のような話になるのですが、猪爪家は素朴なカルタ遊びです。

家族のなかに、なぜか他人の道男(和田庵)がいて、ずけずけと、はる(石田ゆり子)がいたときといまの寅子は変わってしまったと指摘します。以前はもっとふつうのおばさんだったというのです。いまは、威張ったおばさんになってしまったことを、他人の道男だから言えるのです。

寅子は思いきって家族会議を開き、家族のみんなに思っていることを語ってもらうことにします。
これまで、ドラマで、感謝と謝罪の言葉がなかったことがここで一気に解決します。
いつもものわかりのいい役回りだった直明(三山凌輝)まで、実は寅子に対していろいろ不満を抱えていたこと、そして、実は、寅子が新潟に家族を連れていってひとりになるのは寂しいと本音を漏らしました。戦争中のトラウマが残っているようです。

「かなしい」「さみしい」「やだ」と子供みたいな口調になるのは、はるが亡くなったときの寅子が「やだ!」と子供に戻ったかのようなときと同じで、ひとは極限状態になると子供に戻るのが「虎に翼」のデフォルトのようです。
また、「おりこうさんでいるように呪いをかけてしまってごめんなさいね」と近年流行の「呪い」という言葉を使用して、現代的な感覚に。

そして、こうやって、みなの要望を聞いていると、みんな寅子に経済的にも精神的にも頼っていて、これは寅子も重たいものを背負わされている気がします。

概ね、寅子が仕事にかまけて家族を顧みなくなっていたことが問題で、寅子は反省します。そして、優未(竹澤咲子)にどうしたいか、聞きます。花江(森田望智)は優未にそんな決断をさせるのは酷だと反対しますが、子供も大人も平等に、意思を聞くのです。

どうしたいか聞くといいながら「一緒についてきてください」と頼んでいるのが気になりますが、優未は間髪いれず、寅子といっしょに新潟に行くことを了承します。このときの返事の素早さが、いつものいい子のふりしているときと変わらないような……。

家族の本音を語り合い、反省したあとは、仕事の問題を解決。
なぜ、新潟に異動になるのか、寅子が増長するのを抑えるためかと桂場(松山ケンイチ)に問えば、そうではなく、いまのままだと、優秀で、みんなに好かれてしまっていることが問題で、昔の弱者ではなく、まわりを動かす力があるが、このままではいずれ崩れるので、地方で地盤を築くように言うのです。
多岐川(滝藤賢一)は「とびきりの愛じゃないか」と大喜び。

いや、これ、言い方を変えただけで、天狗になった寅子を味方のいない地域で鍛え直すということでしょう。
要は、ネガティブな考え方と言い方をするか、ポジティブな考え方と言い方をするかの違い。
これも、令和のハラスメント問題による「リスペクト」を念頭に入れたセリフと展開ではないかと思います。

寅子の言動がどんなにおかしくても、リスペクトして、受け入れていかないといけないから、桂場は考えに考えたうえ、このようにして、寅子を落胆させないようにせいいっぱい気を使っているのです。
たぶん、現代の会社等は、若い世代にこんなふうにすごく気を使っているのではないかと思います。
いや、寅子はもう十分大人なので、本来、後輩に気を使う側のはずなのですが、おばさんと言われながら、立ち位置が若者扱いなのが謎です。

正直、釈然としないのですが、こんなとき「あさイチ」の受けが参考になります。本編の感想ではなく、これからどうなるか予想をして、前向きに対処しているのです。とりわけ大吉さん。最近、エンド5秒の写真を気にかけていて、今朝も写真のペンネームに注目、ドラマをちゃんと見ているが、最後の写真に全部持ってかれるときがあると語っていました。他局の「IPPONグランプリ」で「写真で一言」をやっているから、写真を見て冴えた発想が浮かぶかつねに考えているのかも。

発想や言い方を変える、何事もこれが大事です。


(文:木俣冬)

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