「虎に翼」航一(岡田将生)のキラーワード「ゆうべ、泣きましたか」<第78回>
「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら
2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第78回を紐解いていく。
[※本記事は広告リンクを含みます。]
▶︎「虎に翼」画像を全て見る
「虎に翼」をU-NEXTで視聴する
優三に似ていた優未
おとなしそうだった高瀬(望月歩)がキレました。寅子(伊藤沙莉)に「よそもんのくせにこっち側のふりをしなくて(いい)」「波風立てず立つ鳥あとを濁さずでお願いしたい」と本音を吐露します。ひどいことを言う前に、懸命になさろうとしていることや優しい人なのはわかる、と前置きするのが丁寧です。キレながら相手を思いやり、でも、言いたいことを大声でぶちまける、望月歩さんの名演技でした。そういえば、「エール」では銀行員役でした。堅実な職業が似合う俳優です。
つまり、この職場では、空気を読んで、スンッと物事を流していくしかないのに、読まない寅子に苛立っているのでしょう。
帰宅すると、優未(竹澤咲子)がまた点数を偽装しようと練習していることを発見。よくよく聞けば、テストになるとお腹が痛くなって実力を発揮できなかったと言うのです。優三(仲野太賀)のクセが優未に遺伝していたことを知って寅子はつい微笑んでしまいます。
父と同じと聞いた優未も嬉しくなって、「もっと駄目なところ教えて」とねだります。花江(森田望智)たちは、いい人、優しい人としか言ってなかったとか。
寅子とはここまで、一度もお父さんの話をしてないのか!とびっくりしますが、新潟から親子関係の積み直しなので、いまからなら間に合う! 点数偽装の件も、寅子が叱らなかったため優未が心を開きました。
ところが、ここで寅子は何も言えなくなってしまいます。
花江のいう「トラちゃんにしかしてあげられないこと」だとわかりながら、言葉の出てこない寅子。優三とのいろんなすてきな思い出は浮かんでくるのに、「なぜだろう胸が詰まって話せない」(ナレーション尾野真千子)
布団に潜って泣いてしまう寅子。
寅子の気持ちを知らない優未は翌朝、また心を閉ざしてしまったようですが、寅子が仕事いきたくない〜とジタバタしていたら、その様子を見られてまた気まずい。
寅子のジタバタ具合はアニメキャラみたいな動きでした。伊藤沙莉さんはこういうのが可能な逸材です。朝ドラヒロインにはあまりいません。
出勤すると高瀬は休んでいました。
航一(岡田将生)が今日も来ていて「ゆうべ泣きましたか」と尋ねます。
どきり、となったところに、杉田次郎(田口浩正)が賄賂的なお弁当を持ってきます。
航一は裁判官とはそういう仕事であると、受け取りません。
受け取っちゃだめなんですよ、寅子。単なる親切ではないのですから。寅子もそこはわかっていて、お代を払って、自分が持ち帰ると言います。食べ物は無駄にしてはいけませんから。
お弁当を置いて帰るかと思いきや席に座って、おしゃべりする気満々な次郎。え?となる寅子。田口浩正さんと伊藤沙莉さんのコンビネーションがみごとです。
と、そこで次郎が高瀬の話をします。山中でキレたわけは、どうやら亡くなった兄と比較されてブチ切れたようでした。
「思い出にできるほどお兄さんの死を受け入れられていなかったのでしょう」と淡々と慮る航一。
これは、期せずして、夕べの寅子の状態を説明したかのようではないでしょうか。
そして、高瀬にとりつくしまがないようだったのが、寅子との接点ができたということです。
扱いづらい若者や手をこまねいている娘との関係に解決策が見つかるのか、明日も楽しみです。
優未の精神的に弱いところは父似。偽装してごまかすちゃっかりしたところは母似でしょうか。「私がやります」とか「はい」とか時々寅子への口調がやけに丁寧になる(話し方が一貫してない)ところも、優未が母にどういうふうに接していいか迷いの表れのようにも思えます。
(文:木俣冬)
“朝ドラあるある”満載!「朝ドラ辞典」を見る
木俣冬著「ネットと朝ドラ」、現在好評発売中
「虎に翼」をU-NEXTで視聴する
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
(C)NHK