続・朝ドライフ

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2024年04月03日

「虎に翼」寅子の親友・花江はえげつない女だった<第3回>

「虎に翼」寅子の親友・花江はえげつない女だった<第3回>


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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。

日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第3回を紐解いていく。

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欲しいものはしたたかに

寅子(伊藤沙莉)優三(仲野太賀)の通う夜学にお弁当を届けに行くと、たまたま、「婚姻状態にある女性は無能力者」という民法の言葉が授業に出てきて、はて?となります。

穂高重親(小林薫)桂場等一郎(松山ケンイチ)も、授業を邪魔した寅子を叱らず(ナレーション〈尾野真千子〉では叱られると予測していた)、言いたいことがあれば言っていいと、彼女の意見に耳を傾けます。

学生が寅子の話に笑ってもそれを窘めるほどでした。
法律を専門とする方々は皆、このようにフラットな思考の持ち主だったら素敵。みんな法律を学ぶといい。

この当時・昭和初期の憲法では、妻はなにかをするにあたって夫の許可を得ないとならず、家事に関してのみ夫の代理人であるとされていました。
それが戦後、大きく変わっていくわけですが、変わるまでは女性はそういうものと思って粛々と生きていたということです。

寅子はようやく、母・はる(石田ゆり子)が公の場でスンッとなってしまうわけを悟りました。

穂高は、寅子に才気を感じ、女子部法科に入ることを勧めます。そこから法学部に入り学ぶことができるのです。
やる気になった寅子ですが、6年もかかることは少し気がかり。
それを親に相談したときのことを考えると気が重くなります。

幸い父・直言(岡部たかし)は、実はお見合い結婚に懐疑的で、寅子を応援すると言いますが、はるはそれを許すかどうか……。

目下、実家の香川に行っているはる抜きで直言と寅子は女学校に願書に添える内申書をもらいにいきますが、担任の先生(伊勢佳世)は「出過ぎた発言をお許しください」と直言に断ったうえで「あまり学をつけすぎてもお嫁の貰い手が……」と丁重に意見を言います。

この女教師があとでひとり教室に残っている姿が気になりました。伊勢佳世さんのたたずまいから想念が立ち上ってきます。きっと先生も思うことがあるのでしょう。

さて、ここで第1週のサブタイトル「女賢しくて牛売り損なう?」というサブタイトルに目を向けてみましょう。朝ドラのサブタイトルにしてはネガティブというかシニカルです。女は賢いようで賢さを振りかざして結果、損失を被るということわざなのです。担任の先生の
「あまり学をつけすぎてもお嫁の貰い手が……」という心配と重なります。

なぜこの件を女性に限定しないといけないのか。男性は賢さによって損をしないのか。寅子だったら疑問に思うでしょう。

こういうことわざもあるから、女性は公の場で余計なことを言わずニコニコとお酌をするしかなく、お見合いでおしゃべりすると怒られてしまう。

寅子の親友・花江(森田望智)はこう言い切ります。


「どうしても欲しいものがあるならしたたかに生きなさい」
(花江)


花江はしたたかに、着々と、自分の目標(結婚)を達成しようとしていたのです。
その口調からおっとり屋さんに見えましたが、実はかなりの策士。そう思うと、この口調もあえて狙っているのだろうとわかります。完全に作り声ですし。

花江やはるのように内心を隠して、上っ面を作って行動しないといけないのは、世の中のせい。
もっと自由に素直に好きなことがやれるように、世の中が変わるといいなあと思うし、令和のいまはようやくそうなってきているような気がします。

このドラマは、鋭い爪を隠しながら虎視眈々と目的実現に向かう世の女性たちに大いに支持されるでしょう。

法律の話や生き方の話はちょっとお固い感じもしますが、実在する銘菓をモデルにしたらしき、クッキーやおだんごが出てきて緩和されます。

穂高が桂場に渡した竹もとのお団子を売ってる神田駿河台のお店で、寅子と直言が甘味を食する流れもさりげなく、このお店が人気店なのだとわかります。このへん、法律の朝ドラをつくるうえでのしたたかな戦略といえるでしょう。


(文:木俣冬)

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