「おむすび」モリモリ(小手伸也)、バツイチだった【55回】
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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。
平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第55回を紐解いていく。
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ようやくビールを飲める年
モリモリ(小手伸也)が夜の街で女性と親密そうにしているのを目撃した結(橋本環奈)。不倫? とさっそく学校で佳純(平祐奈)と沙智(山本舞香)に報告します。
そこへ、モリモリが来て、真相が判明しました。
「結婚!?」と3人が大声をあげて、主題歌へーー。この流れはひじょうにいい感じと思って脚本を書いている気がします。
実は、モリモリ、バツイチで、娘は元妻と暮らしているそうです。モリモリは調理師の女性と再婚し、お弁当屋さんを開業するそうです。
46歳ですから、人生もいろいろとは思いますが、やたらと話し好きな感じのモリモリが2年間、バツイチであったことを言わないのも不自然な気がしますが……。
ただ、いっつも一緒につるんできた結たちが、彼のプライベートには興味ないのは、まあそういうものかなという気もします。それと、昨今は個人情報の扱いがデリケートになっているので、プライベートのことを聞かないのもヘンではないかも。いや、むしろホッとします。4人が、お互いの余計なことは聞かずに、お互いを信頼して仲良くできたのはとてもいい。まあ結だけは余計なことを聞いてましたし、自分の話し(野球選手である彼氏を支えたい)を聞かれもしないのにじゃんじゃんしてましたが。
再婚とお弁当屋開店計画について語らずにいたなのは、結が就職が決まらず悩んでいるときに言えなかったという気遣いでした。こんなふうに、気遣ってくれる人がいるのに、結はデリカシーなく他者に踏み込んでいっていたんですね。
モリモリに励まされ、結は星河電器の面接を、ものすごく優秀な回答でクリアします。これまでの反省を活かして、急成長です。
みごとに就職が決まり、二十歳の誕生日を迎え、家族でのお祝いの席に四ツ木(佐野勇斗)も参加します。
四ツ木から結婚生活がうまくいくコツを聞かれた聖人は、「ひたすら我慢」「すばやい謝罪」と秘訣を語ります。すっかり仲良くなっている四ツ木と聖人なのでありました。
そして、卒業式。結、佳純、沙智は、袴姿で、モリモリも一緒にプリクラ撮影。
3人の袴姿は艶やかで素敵でした。
朝ドラあるあるに「写真」があります。たいてい家族写真を大切に家に飾っているのですが、平成ではプリクラで友人たちの集合写真を大切にするのです。時代の変化が見てとれて面白いです。
こうしてあっという間に栄養学校編は終わり、いよいよ社会人。結の栄養士としての日々がはじまります。
ここで栄養士編の良かったところをあげてみましょう。モリモリのような46歳のおじさんが、若い人たちに混ざって学校に通い、第二の人生を切り開く物語は高齢の視聴者への目配りでしょうか。彼が娘のような十代の女子3人が仲良くできたことは多様性の理想のようです。
思えば、「おむすび」はエイジレスな感じがします。愛子(麻生久美子)もものすごく若く年齢不詳です。しかも十代で出産しています。世間的にちょっと早いんじゃないかという年齢で出産していることもあまり問題視されていません。永吉(松平健)も従来のおじいちゃんらしくなく、若く見えるし、無分別な感じです。歩(仲里依紗)も年齢不詳。世の中、ジェンダーレスのことばかり盛んに推し進めていますが、エイジレスももっと推し進めてほしいもので、その点においては「おむすび」は評価できます。
エイジレスといえば、橋本環奈さん。この回で結は二十歳になって家族でお祝いにビールを美味しそうに飲みます。演じている橋本さんは、結が高校生の頃からビールのCMに出ていて、朝ドラを見ていると違和感がありました。演じている御本人は成人ですが、高校生を演じている間は、ビールのCMを流すのはしばし待って、結が二十歳になった時点でビールのCMがはじまったら面白さが増した気がするのですが、メーカー側は待ってはくれなかったようです。
(文:木俣冬)
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