「おむすび」1月17日はおむすびの日【75回】

続・朝ドライフ

「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら

2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。

平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第75回を紐解いていく。

[※本記事は広告リンクを含みます。]

▶︎「おむすび」画像を全て見る

「おむすび」をU-NEXTで視聴する

管理栄養士を目指す結

2012年1月17日、東日本大震災の翌年、神戸では東北に向けて祈りが捧げられ、東北も神戸に向けて祈りを捧げるという、祈りの交換が行われたそうです。「おむすび」がドラマのなかで言及する地震を阪神・淡路大震災と東日本大震災に絞った理由のひとつは、この件が印象的であったからなのだとか。筆者はドラマではじめて知りました。遠く離れた東と西の人たちが互いを思いやる、いいことであります。

この日が「おむすびの日」というのも「おむすび」をきっかけに筆者は知りました。阪神・淡路大震災で被災者におむすびが配られたことから「おむすびの日」として「ごはんを食べよう国民運動推進協議会」によって制定されたとか。ドラマのタイトルが「おにぎり」ではなく「おむすび」なのはこのためでしょう。ちなみに「おにぎりの日」は6月18日だそうです。そしてそれは石川県中能登町から発生しているそうです。

平成24年(2012年)1月17日、ヘアサロンヨネダでは相変わらず、商店街の人たちが集まっていて、17年前の震災のことを思い出しています。聖人(北村有起哉)は、このまま月日が経過したら、あの日の出来事が忘れられてしまうのではないかと心配しますが、菜摘(田畑志真)が「しっかりうちらの世代が伝えていきます」と真っ直ぐな目で答えます。彼女は現地にボランティアに行っていますから、その体験が生かされることでしょう。

佳純に続いて、菜摘がいいセリフを言う。朝ドラヒロインのように。さて、結(橋本環奈)は? 「ね?」と菜摘に言われて、花に伝えていくと言いますが、やっぱりおむすびチンしてと言ってしまったことを伝えるのでしょう。

結は1年間、育児に精を出し、花ちゃんはずいぶん大きくなっています。育休も終えて職場復帰したものの、代わりに働いていてくれた若者が自分が復帰することで仕事がなくなることが気にかかります。そんなとき、花ちゃんの定期検診に病院に行くと、西条(藤原紀香)と再会。西条が自分のことをちゃんと覚えていてくれたことに感銘を受け、悩み相談をします。

西条がバスガイドから管理栄養士になった経緯を聞いて、結は管理栄養士への憧れを募らせていきます。病の母の在宅介護をきっかけに管理栄養士の勉強をしたそうで。

西条の母との思い出がいい話でありました。病で固形物が食べられない母がラーメンを食べたいというのでスープだけ作ったら喜んできくれて、少しだけ長生きしてくれた。西条のお母さん、スープ、美味しかったでしょうね。西条のしみじみした回想を聞いて、かすかに結の表情が明るくなっていく感じが橋本環奈さん、お見事です。

結は管理栄養士になろうと考え、翔也(佐野勇斗)に相談します。ここで「おいしいもん食べたら悲しいこと忘れられる」の名言が出てきます。やっぱりこれだけは佳純には言わせられないものだったのですね(作家としては)。この言葉をずっと座右の銘にしてきた結は、西条と母のラーメンのスープの話にそれを思い出したようです。凍ったぶどうにもそう感じ、この言葉の正しさをさらに実感した結は、もっとたくさんの人を助けることができる仕事に邁進しようと考えるのです。

困ってる人を助けたくなるのは「米田家の呪い」と思っていたが「これがうちの生きる道」と覚悟を決めたのです。

働きながら育児をしながら管理栄養士を目指したいという結に、翔也はもう全面的に応援します。

いい話に水を差すのもなんですが、ふと、引っ掛かりが。おいしいものを食べるとーーと思ったら料理人を目指すものではないのでしょうか。栄養士はおいしいものを作る仕事ではないのでは……。栄養があってかつなるべくおいしいものを考える仕事で、まずは栄養ーー健康が優先なのでは、と堅苦しいことを筆者は考えてしまうのです。西条だってまず、母親が病気であったということがきっかけなのです。結も最初は野球選手の翔也のために栄養管理をしようとしたわけで。話がなんだかズレていっているような……。

こんなことを気にしてしまうのは、主人公よりも、佳純や菜摘や西条のエピやセリフが朝ドラヒロインみたいで、結がそれを聞いているだけだからなのです。そう思うと、いかに、ちょっと目立ったいいセリフや行動をしただけで、人はたちまち好意を持ってしまうもので、何もしてない(が悪人ではないむしろ素朴な善人であろう)人にはなかなか目がいかないものだと反省します。「おむすび」とはファッションは目立つけど、いかにも目立った善行をしない人も、それなりになにか考えているし、尊重しようという教訓のあるドラマなのかもしれません。少なくとも筆者はそういう考えに至るようになりました。

(文:木俣冬)

“朝ドラあるある”満載!「朝ドラ辞典」を見る

木俣冬著「ネットと朝ドラ」、現在好評発売中

「おむすび」をU-NEXTで視聴する

–{「おむすび」第15週あらすじ}–

「おむすび」第15週あらすじ

第15週「これがうちの生き方」1/13-1/17

2010年春、結は翔也と共働きをしながら、幸せな結婚生活を送り始める。しかしある日、結は体調を崩したことを自覚。その後もそのことを周りに隠して働き続けるが、翔也が結に熱があることに気づき病院で診断を受ける。結果、腎炎であったが、同時に妊娠していることも判明する。しばらく入院することになった結は、そこで管理栄養士の西条小百合に出会い、その指導に大きな刺激を受ける。

–{「おむすび」作品情報}–

「おむすび」作品情報

放送予定
2024年9月30日(月)より放送開始

出演
米田結(よねだ・ゆい)/ 橋本環奈
『おむすび』の主人公。平成元年生まれ。 自然豊かな福岡県・糸島で、農業を営む家族と暮らしている。 あることがきっかけで、人々の健康を支える栄養士を志すようになる。

【結の家族・米田家の人々】

米田歩(よねだ・あゆみ)/ 仲里依紗
主人公・結の8つ年上の姉。
福岡で“伝説のギャル”として知られる。 奔放な振る舞いで米田家に波乱を巻き起こすが、ギャルになった裏にはある秘密が…。
主人公・結の父。 娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田聖人(よねだ・まさと)/ 北村有起哉
主人公・結の父。
娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田愛子(よねだ・あいこ)/ 麻生久美子
主人公・結の母。
結の祖母・佳代と家事をしながら、聖人の営む農業を支えている。 絵を描くのが得意。

米田永吉(よねだ・えいきち)/ 松平健
主人公・結の祖父。
野球のホークスファンで、自由奔放な“のぼせもん”。 困っている人がいたら放っておけない、情に厚い性格。

米田佳代(よねだ・かよ)/ 宮崎美子
主人公・結の祖母。
古くから伝わる先人たちの知恵に明るく、結が困った時の良きアドバイザーでもある。

【福岡・糸島の人々】

四ツ木翔也(よつぎ・しょうや)/ 佐野勇斗
福岡西高校に野球留学中の高校球児。
四ツ木という姓と眼鏡姿から「福西のヨン様」と呼ばれている。 糸島に練習場があり、結と時々出くわす。栃木県出身。

古賀陽太(こが・ようた)/ 菅生新樹
結の幼なじみで高校のクラスメイト。野球部員。
父は糸島の漁師だが家業を継ぐ気はなく、IT業界を目指している。 ある約束により、結のことを何かと気にかけている。

風見亮介(かざみ・りょうすけ)/ 松本怜生
書道部の先輩。
結にとって憧れの存在。 書道のイメージを一新するような書家を志している。

宮崎恵美(みやざき・えみ)/ 中村守里
結のクラスメイトであり、高校での最初の友達。
結を熱心に書道部へと誘う。 派手なギャルが苦手。

真島瑠梨(ましま・るり)<ルーリー>/ みりちゃむ
結の姉・歩が結成した「博多ギャル連合」(略してハギャレン)の、現在の総代表。
ハギャレンの復興を目指している。

佐藤珠子(さとう・たまこ)<タマッチ>/ 谷藤海咲
ハギャレンのメンバー。
子どものころからダンス好きで、ハギャレンではパラパラの振付を担当。 筋が通らないことを良しとしない、一本気タイプ。

田中鈴音(たなか・すずね)<スズリン>/ 岡本夏美
ハギャレンのメンバー。
結と同い年で、いつもスナック菓子を食べている。 手先が器用で、ネイルチップ作りが趣味。

柚木理沙(ゆずき・りさ)<リサポン>/ 田村芽実
結のクラスメイト。
学校では校則を守るおとなしい女子高生だが、実は隠れギャル&ハギャレンメンバーでもある。ギャルの歴史を本にすることが夢。

ひみこ / 池畑慎之介
糸島の「スナックひみこ」の店主。
年齢、性別、経歴、すべてが不詳の謎の人物。 糸島の住人一人一人の事情をなぜか把握している。

草野誠也(くさの・せいや)/ 原口あきまさ
糸島の商店街で陶器店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

古賀武志(こが・たけし)/ ゴリけん
結の幼なじみ・陽太(ようた)の父親。
糸島で漁師をしている。

大村伸介(おおむら・しんすけ)/ 斉藤優(パラシュート部隊)
糸島の商店街で薬店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

井出康平(いで・こうへい)/ 須田邦裕
結の父・聖人(まさと)の幼なじみ。
糸島の農業を何とかしたいと日々奮闘している。

佐々木佑馬(ささき・ゆうま)/ 一ノ瀬ワタル
結の姉・歩と行動を共にする“自称・米田歩のマネージャー”。

大河内明日香(おおこうち・あすか)/ 寺本莉緒
結の姉・歩と対立していた、元天神乙女会のギャル。

飯塚恭介(いいづか・きょうすけ)/ BUTCH
福岡県博多のカフェバー「HeavenGod」の店長。


根本ノンジ

音楽
堤博明

主題歌
B’z「イルミネーション」

ロゴデザイン
大島慶一郎

語り
リリー・フランキー

制作統括

宇佐川隆史、真鍋 斎

プロデューサー
管原 浩

公式サイト

タイトルとURLをコピーしました