「おむすび」歩は高校初登校の日、金髪に変身した【第24回】


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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。

平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第24回を紐解いていく。

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四ツ木のヨン様

聖人(北村有起哉)が帰宅すると、打ち上げで大盛りあがりしています。
ハギャレンがおじいちゃん(松平健)と騒いでいるのを見て、聖人は結(橋本環奈)を台所に呼び、これまでの経緯を聞きます。
はなからギャルたちに偏見を持っていて、結が嘘をついてギャル活動をしていたことを咎めます。
でも、愛子(麻生久美子)がギャルたちをかばいます。

台所は気まずい空気が漂っていますが、客間では南海ホークスの歌を合唱したり、四ツ木(佐野勇斗)がヨン様のポーズをしたり、楽しそう。

歩(仲里依紗)
の部屋では、歩がたそがれています。うるさい家から出ようとして玄関で聖人と鉢合わせしてしまったため部屋に戻るしかなかったのです。

歩は、神戸から糸島に来た頃、ずっと塞いでいて、この部屋にこもっていました。中学にも行かず、ずっと真紀ちゃんのことばかり考えています(その頃、結は神戸から越してきたのでいじめられていて。それを助けてくれたのが陽太でした)。

でも、そうもしていられない。平成8年4月、ようやく高校に行く決意をし、初登校の朝、歩は金髪で、制服を着崩してきて、家族を驚かせます。

このときのことを、結は子ども心に覚えていたようです。
第1話の冒頭、結が高校に初登校する朝、髪の毛をいじったり、ネクタイを緩めてみようかと逡巡したり、階下に降りてきた結をおじいちゃんが「茶色にしてきたりして」と言って食卓にへんな空気が漂ったのは、歩のことがあったからということがわかりました。

劇伴がコミカルだったので、てっきりギャルコントみたいなノリかと思っていましたが、じつのところずいぶんと深刻な話だったのです。結が鏡を見て制服を着崩そうかどうしようか迷っているのは、姉のことを意識していたから、すなわち震災の傷を引きずっていたからだと思うと切なくなります。

学校で歩の格好が問題になって退学になり、学校に入り直したものの傷害事件を起こしたりと、頭が痛い聖人。
昔、不良少女ものがドラマにありましたが、聖人と歩の確執はそういうドラマのようであります。

今日は悩める聖人を演じる北村有起哉さんのコメントをご紹介します。
写真提供:NHK


Q1 出演が決まったときの気持ちは?

役者を始めた 19歳の下積み時代に無謀な目標を掲げまして、そのひとつが朝ドラのヒロインの父親役を演じたいということでした。僕がヒロインの相手役というのはちょっと無理があるかなとそこは謙虚に(笑)。冗談はさておき、父の北村和夫が『おしん』のしゅうと役を演じていたというのも理由のひとつだったかもしれません。役者として父を超えてやるという若気の至りもありました。役者をやるなら、朝ドラに出演するぐらいの役者にならないと。おこがましいですけれど、目標が高くてもそこが一つの通過点であるぐらいの役者にならないと、と思っていました。今回、ヒロインの父役が決まって僕としてはホッとしたという気持ちが強かったです。うちのおふくろもすごく喜んでくれましたね。
聖人は、最近の僕が演じてきた役柄のなかでも、裏のない真面目な普通の役です。娘に対しては異常なほど心配性ですね。ドラマですからその性格をどこかで共感してもらえるように、憎めない部分もみせないといけないと思っています。実際の僕は割とのんびりとのんきなほうなので、父親はそこまで心配するもんかなと想像しながら、それを成立させるために現場でいろいろ試しています。聖人が心配性になった理由が今後描かれますが、やりすぎかもしれないけれど、一本筋が通っていると思っていただけるのではと思います。
聖人と永吉は非常に折り合いが悪く、相当仲が悪い親子です。健さん演じる永吉とはしょっちゅう親子げんかしていますね。監督とも相談してけんかのシーンはなるべく派手にやったほうがいいと、暴れさせてもらいました。
親子げんかというのは楽しくてすごく素敵なことなのだなと感じました。僕の父はもう他界していて、振り返ってみると、生前に親子げんかをしたことがなくて。僕もこうやって親子げんかをすればよかったなと少し感傷的になり、僕にとっては大切なシーンになりました。

Q2 演じる役・米田聖人について

聖人は、最近の僕が演じてきた役柄のなかでも、裏のない真面目な普通の役です。娘に対しては異常なほど心配性ですね。ドラマですからその性格をどこかで共感してもらえるように、憎めない部分もみせないといけないと思っています。実際の僕は割とのんびりとのんきなほうなので、父親はそこまで心配するもんかなと想像しながら、それを成立させるために現場でいろいろ試しています。聖人が心配性になった理由が今後描かれますが、やりすぎかもしれないけれど、一本筋が通っていると思っていただけるのではと思います。
聖人と永吉は非常に折り合いが悪く、相当仲が悪い親子です。健さん演じる永吉とはしょっちゅう親子げんかしていますね。監督とも相談してけんかのシーンはなるべく派手にやったほうがいいと、暴れさせてもらいました。
親子げんかというのは楽しくてすごく素敵なことなのだなと感じました。僕の父はもう他界していて、振り返ってみると、生前に親子げんかをしたことがなくて。僕もこうやって親子げんかをすればよかったなと少し感傷的になり、僕にとっては大切なシーンになりました。

Q3 阪神・淡路大震災のシーンや、聖人の神戸への思いについて

エキストラさん含め、本当にリアルに学校内の避難所を再現していただきました。ここでなんとか歯を食いしばりながら頑張ったうちの一人ですから、この風景に溶け込めるようにしなければと思いました。
避難所に永吉が来て「糸島にいくぞ」と言った時に聖人はまず反対しましたが、そのシーンのテストで、予想していたものとは違う感情が出てきたんです。本当に、「それだけはできない」って思いました。こんなに悲しくて悔しい。聖人ってこういうやつなんだ、と驚きました。永吉は聖人のそういう部分を見抜いているから、「子どもとどっちをとるんだ」と迫るんですね。
ある意味、聖人は神戸に親父と離れたくて糸島から避難してきたようなもんですからね。右も左もわからない神戸でとにかくがむしゃらにやっていたんだと思います。そんな時に、セリフにもありますが地元の商店街の人たちが温かく迎え入れてくれて、多分18 歳の聖人を親身になって支えてくれたのでしょう。聖人はそういう恩を決して忘れないタイプ。ものすごく義理堅く、人並以上にそういうものを大切にするので、被災して神戸から離れることになったことを「ひどいことをした、中途半端なことをした」とより強く感じているのだと思います。

Q4 視聴者へのメッセージと見どころ

登場人物のほとんどの人が、やさしくて温かい人たちばかり。それゆえに、人から頼まれたことを断れなかったり巻き込まれたり翻弄されるヒロインが、どんどん成長していき、父親である僕と親子げんかが起きたりと日常によくあるような出来事が丁寧に描かれます。そしてこのドラマは、明るいシーンの後に、大きなうねりとともに急にシリアスなシーンが起きるなど展開が読めません。そのあたりも楽しんでいただけたらと思います。


北村有起哉さん演じる聖人は、細かい性格で、子どもを束縛してしまうタイプに見えますが、悪い人ではなく、むしろ善人すぎるくらい。生真面目で義理堅い人です。だからこそ、娘たちに厳しくなってしまうのでしょう。娘がグレてしまったのは自分のせいだと自分を責めてしまっているのを見ると、いろいろなことを背負いこみ過ぎているのだと心配になります。家族関係がいい方向に向かうことを願います。


(文:木俣冬)

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