『私の奴隷になりなさい』2・3章が導く、城定秀夫監督のエロス革命!

 (C)KADOKAWA 2018

このところ日活ロマンポルノのリブートやピンク映画のR15バージョンを特集上映するなど、エロティック作品をより広く、女性客も含めて一般的に魅せていこうという動きが活発になっている感があります。

そういったエロスの魅惑的拡散に大きく貢献したひとりが壇蜜ではないかと個人的には思っていますが、彼女が大きくステップアップするきっかけとなったのが、映画『私の奴隷になりなさい』でした。

そして今年、『私の奴隷になりなさい』の待望の新章が2本続けて公開されます。

さすがに壇蜜は出てませんし、原作者はすべて同じサタミシュウですがストーリー的なつながりも特にはありません。

しかし、作品そのもののクオリティは前作をはるかにしのぐ優れた出来栄えです……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街335》

だって、監督が2作とも才人・城定秀夫なのだから!

“ご主人様”と“奴隷”の関係性を
鋭く描いた2部作

今回ご紹介するのは『私の奴隷になりなさい 第2章 ご主人様と呼ばせてください』(9月29日公開)と『私の奴隷になりなさい 第3章 おまえ次第』(10月13日公開)です。

どちらも主人公は同じ大手広告デザイン会社に勤める目黒(毎熊克哉)。

まず『私の奴隷になりなさい 第2章 ご主人様と呼ばせてください』では、結婚を間近に控えながらも、ふとしたことで出会った人妻・明乃(行平あい佳)に興味を抱いた目黒が、彼女を強引に口説いて関係を持ち、次第にその行為をエスカレートさせていきます。

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まもなくして明乃の夫が目黒のもとに現れますが、彼は社会的制裁の代償として、何と妻との関係を続けさせ、調教し、その詳細を逐一報告するよう目黒に強要するのでした。

言われるがままに明乃を調教し、アブノーマルな世界へ突入していく目黒。やがて明乃は性の奴隷ともいうべき資質を開花させていきますが、同時にそれは目黒自身が彼女の奴隷と化していくことにも繋がっていき……。

そして『私の奴隷になりなさい 第3章 おまえ次第』は、第2章から数年後の目黒のさらなる倒錯した生きざまを描いていきます。

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ここでの彼は数人の“奴隷”を方々に抱える“ご主人様”と化していて、また新たに繭子(杉山未央)という己の調教願望を刺激する女性をターゲットにしていきます。

しかし、そうした行為にのめりこめばのめりこむほど、目黒の心の奥にある一人の女性の影が……。

この2部作は“ご主人様”と“奴隷”という男女の倒錯した関係性がやがて逆転していくカタルシスや喪失感など、エロティック・ジャンルの王道ともいえるパターンを踏襲しつつ、倫理では割り切れない人間の心の闇をR-18というコードをフルに活かしながら描出していきます。

あえて比較すると、第2章はシリアス、第3章はブラックコメデイ風なテイストがあります。

あくまでも男性目線のダーク・ファンタジー的要素が強い作品ゆえ、女性の評価は分かれるかもしれませんが、逆に男性のさもしい願望であったり、情けなさであったりといった、なかなか異性に対して表に出したがらない心情をうかがい知る面白い機会かもしれません。

2作品続けて主演する毎熊克哉の、どこか世をひねた目で見据えている雰囲気が、ここではぴったりはまっています。

また演じる女優陣の熱演も見逃せないところではありますが、個人的に仰天しているのが、第2章のヒロインを務めた行平あい佳が、何と1980年代にっかつロマンポルノ女優・寺島まゆみの愛娘ということ!

当時、松田聖子にどこか雰囲気が似ていた寺島まゆみは“ロマンポルノの聖子ちゃん”と謳われ、『ひと夏の体験 青い珊瑚礁』(81)や『聖子の太股』3部作(82)、そして森田芳光監督による快作『ピンクカット 太く愛して深く愛して』(83)など、SEXを80年代ならではのライト感覚で描いた青春路線群で一世を風靡し、その時代を共に生きた世代としては絶対に忘れられない存在だったのです。

というわけで、やはり個人的にはどうしても行平あい佳に目線がいってしまうのですが、一見控え目で清純な雰囲気の中から妖艶さを漂わすあたり、次なる作品も見てみたくなる衝動にかられてしまったのでした。

一方、第3章主演の杉山未央はこれが映画デビュー作。その度胸の良さなども含めて、今後の活躍にも期待したいところです。

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才人・城定秀夫監督が
ついにメジャー進出!

そしてこの2部作、最も強く訴えておきたいのが、冒頭にも記しましたが監督が城定秀夫であるということ!

一言でいえば、城定秀夫は才人です。

1975年生まれの彼は自主映画からピンク映画、オリジナルビデオの現場に携わるようになり、2003年に『味見したい人妻たち(押し入れ)』で監督デビューし、これで同年度のピンク大賞新人賞を受賞。

以降、これまで100本以上のピンク映画やOVなどを手掛けてきた彼は、なかなか公には語りづらいものの人が生きていく上で欠かすことのできない性愛の世界に焦点を絞った作品を中心に、男女のどうしようもならない愛憎の想いを鋭くえぐった名作を多数輩出してきました。

個人的には『くりいむれもん 夢のあとに』(06)『蒼空』(08)『ヒン子のエロいい話』(11)『人妻』(13/七海なな主演のこれが個人的には一番お気に入り!)『桃木屋旅館騒動記』(14/城秀夫名義)『韓国に嫁いだ女』(15)などが印象的。

また2016年は『悦楽交差点』『舐める女』『箱女 見られる人妻』『箱舟の女たち』など城定監督の長年のキャリアの中でも特に豊作の年で、2018年も『覗かれる人妻 シュレーディンガーの女』や、ぽっちゃり系讃歌『恋の豚』(こちらはR-15版がR-18版より先に特集上映されて喝采を浴びたばかり。特に女性客の反応が良好でした)などコンスタントに良作を生み続けているのです。

ときに『新宿区歌舞伎町保育園』(09)のようなコメディや、『ガチバン』(08)『池袋ヤンキー戦争』(10)などのヤンチャ路線などでも才を発揮する城定監督ですが、やはりその本領はエロス。

そして男性のさもしい性の欲望が、結果として女性を輝かせるための生贄としてのツールに転じていく過程を、実に無理なく自然に猫出する術に長けた彼の資質は、今回の2部作でも巧みに発露されています。

いずれにしましても城定秀夫の角川映画というメジャー進出を大いに祝福しつつ、今後のさらなる飛躍を祈りたいものです。

いや、もうマジに希代の才能の新作2作に、革命的なまでに今は興奮しまくっているのでした!

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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