トラウマ必至!不快指数120%のフレンチ・ホラー映画の旗手たちによる3選!

映画にはその国その国のお国柄というものがあって、たとえば日本のジャパニーズ・ホラー独自のおどろおどろしくもうすら哀しい怪談テイストは、海外でリメイクしてもなかなか再現できないものがあったりしますね。

そんな中、『BEYOND BLOOD』(18)という小林真里(まさと)監督によるユニークなドキュメンタリー映画がジャンル・ファンの注目を集めつつ、現在配信中です。

これは2003年のアレクサンドル・アジャ監督による『ハイテンション』に始まるフレンチ・ホラー映画の興隆を検証していく作品で、アジャ監督をはじめ、パスカル・ロジェ、ジュリアン・モーリー、アレクサンドロ・バスティロなどフレンチ・ホラーの旗手や、ファンタスティック映画および映画祭関係者、マスコミなどが多数登場。

それまでホラーのイメージが薄かったフランス映画界ですが、21世紀に入って一転し、徹底的な残酷描写で見る者をひたすら不快感の底なし沼へと落とし込んでいくという、肉体的にも精神的にもド直球スプラッターな映画のメッカと化していきました。

今回はそんなフレンチ・ホラーの担い手と、その作品群を紹介していきたいと思います。

ブームの火付け役監督のダークな
ファンタサスペンス『ホーンズ』

(C)2014 The Horns Project, Inc. All Rights Reserved. 

友人を殺人鬼にさらわれた女子大生の救出劇、と呼ぶにはあまりにも描写が残酷&壮絶すぎる惨劇を描いた『ハイテンション』(03)でフレンチ・ホラー映画ブームを巻き起こし、世界中を震撼させたのがアレクサンドル・アジャ監督です。

その後、彼はいち早くアメリカにわたり、砂漠の食人一家の恐怖を描いた『カサンドラ』をより残酷にリメイクした『ヒルズ・ハブ・アイズ』(06)、呪われた鏡の謎に挑むキーファー・サザーランド主演『ミラーズ』(08)、堂々3D映画として蘇った動物パニック・シリーズ第3作『ピラニア』(10)、死んだ我が子に会おうとして禁断の儀式に手を染めた家族の恐怖『アザー・サイド 試写の扉』(16)、ピラニアに続いて大量発生ワニ・パニックを描いた『クロール 凶暴領域』(19)など、順調にそのキャリアを伸ばしています。

そんなアジャ監督の凶暴キャリアの中でも比較的異色作ともいえるのが、ハリー・ポッターことダニエル・ラドクリフ主演の怪奇ミステリ『ホーンズ 容疑者と告白の角』(13)でしょう。

恋人のメリン(ジュノー・テンプル)が殺害され、その容疑者とされてしまったイグ(ダニエル・ラドクリフ)は、誰からも無実を信じてもらえない苦しい日々の中、ある日突然額に角が生えてしまいます。

その角には、対面した人物に本心を語らせ、欲望を露にさせる不思議かつ異様な能力がありました。

リグは角を使ってメリンを殺した犯人を捜し始めますが、やがて思いもよらぬ真実が次々と明らかに……。

本作はスティーブン・キングの実子ジョー・ヒルの小説”HONES”を映画化したもので、ここでのアジャ監督のタッチは一見静謐でミステリアスな雰囲気の中での精神的暴力性に注力している感がうかがえます。

さまざまな過去のエピソードなども、ノスタルジックな情緒の中にもどこか残酷な影が忍び寄ってくるのです。

救いはダニエル・ラドクリフの角姿が妙に似合っていることで、そのオーラが影響してか作品全体に不思議なユーモアまでもたらすことにも成功しています。

この作品を機にアジャ監督は、手掛けるジャンルの幅を広げていき、9歳の誕生日に昏睡状態に陥った少年の人生をミステリアスに描いた『ルイの9番目の人生』(15)を手掛けています。

ただしショック描写に関してはまだまだ衰えを知らないようで、また衝撃の真相にこだわっているあたりも、常に観客を驚かせたいと願う彼の信念でもあるのでしょう。

トラウマ・ホラ―監督の本領発揮!
『ゴーストランドの惨劇』

(C)2017 – 5656 FILMS – INCIDENT PRODUCTIONS – MARS FILMS – LOGICAL PICTURES 

少女時代に過酷な拷問を受けた若い女性の復讐劇が二転三転していく残酷スプラッタ映画『マーターズ』(07)や、寂れた炭鉱町で頻発する幼児失踪事件の真相を追うサスペンス・ホラー『トールマン』(12)などで名を挙げたパスカル・ロジェ監督。

見る者にトラウマをもたらすことにかけては、随一の鬼才であります。

そんな彼の2018年度作品が『ゴーストランドの惨劇』(18)です。

シングルマザーのポリーン(ミレーヌ・ファルメール)と双子の娘ヴェラとベスが、人里離れた叔母の家に移り住むことになりました。

しかし新居に到着した夜、二人組の暴漢が家に押し入ってきて……。

そして16年後、小説家として成功しているベス(クリスタル・リード)が、ヴェラ(アナスタシア・フィリップス)からのただならぬ電話を受けて、久々に家に戻るのですが……。

監禁に拷問、凌辱と、ロジェ監督作品に必須ともいえるイヤ~ンな残虐非道のイジメ要素が今回もてんこ盛りの問題作ですが、今回はミステリアスな描写にも力を入れていて、その結果としてもたらされる「衝撃の真相!」には誰もがショックを受けること必至。

まさにネタバレ厳禁とはこの映画のことといっても過言ではないのですが、それを知ることでなおさらドヨ~ンとなるのも間違いありません……。

フレンチ・ホラーの気概を否が応にも体感させられる作品ではありますが、鑑賞にはくれぐれもご覚悟のほどを(精神的にかなりキます……)。

ホラー・コンビ監督による
『恐怖ノ白魔人』(14)

(C)METALUNA PRODUCTIONS / SND – 2014 – visa n°135 987 

出産直前の妊婦を襲う女の狂気を描いた『屋敷女』(07)や、バンパイア伝説を独創的かつ幻想的にアレンジした『リヴィッド』(11)や『屋敷女』などで知られる、ジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロ。

このコンビ監督が2014年に放ったのが、『恐怖ノ白魔人』(14)です。

ダンとトム、そしてビクターの悪ガキ少年3人は、廃墟となった映画のスタジオに忍び込みました。

しかし、そこで彼らが目撃したものは……。

やがて夜になって帰宅した3人ですが、何者かに尾行されていることに気づきます。

それは、彼らにとって長く恐ろしい夜のはじまりでもありました……。

スティーブン・キング原作の『スタンド・バイ・ミー』や『IT』さながら、恐怖と子どもたちの関係性をモチーフにした作品で、前半部はかなり意識しているなと思わされるところもありますが、やはりフレンチ・ホラーの旗手コンビ作、他作品に比べて見た目のグロ描写は控え目なれど(ただし本編が始まる前のプロローグはかなりヤバイです……)、描いている内容そのものはなかなか残酷です。

映画を見終わると、邦題にもある“白魔人”のネーミングはいかがなものかと思う節もありますが(ってか、いや違うでしょ! とツッコミを入れたくもなる!?)、まあB級プログラムピクチュアのノリで接するのが得策ではあるでしょう。

ちなみに『屋敷女』で怪演したベアトリス・ダルがカメオ出演していますので(このこと自体が、実は本作のテイストを象徴している!?)、そのあたりもご注目を。

なお、こうした作品群の成功によって、やがてこのコンビは『悪魔のいけにえ』シリーズでおなじみ伝説の殺人鬼レザーフェイスがいかにして誕生したかを描く『レザーフェイス 悪魔のいけにえ』(17)の監督に抜擢され、アメリカへ赴くのでした。

いかがでしたか、フレンチ・ホラーの旗手たちによる、日本やアメリカ映画などの感覚とは大いに異なる作品群。

ソフトでもハードでも、底辺に残酷テイストが敷かれているだけに、気の弱い方はやはりそれ相応の覚悟を持ってご覧になってみてください。

本当にイヤ~ンな気持ちになりますので!?

(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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