キレたら止まらない男女が織りなす暴力と愛のカーニバル『GONIN』シリーズ!

「今度の週末は映画でも……。でも、何を見ればいいのかな?」

そんな風にお悩みのかたへ。

デジタル配信で見られる映画をご紹介する「金曜映画ナビ」が、流行や話題性を捉えながら、あなたの映画選びをお手伝いします。

では早速、今週も始めましょう。

月曜から金曜までお勤めの方々へ、ようやくお休みのことと思われますが、体も心もお疲れではありませんか?

いや曜日も日時も実は関係なく、日々の仕事や人間関係にストレスを溜めまくり、今にもキレかけているのをぐっとこらえている方々って、結構多いのではないでしょうか?

そんなあなたへ、映画の中の彼ら彼女らが、代わって切れまくってくれます。

そう、今回お勧めするのは……石井隆監督の名作ヴァイオレンス映画、キレたら止まらない『GONIN』シリーズです!

日本映画に久しくなかった
画期的ヴァイオレンス・アクション巨編『GONIN』

GONIN ブルーレイ

「石井隆監督に、男まみれの映画を撮ってほしい」

映画『GONIN』は、『天使のはらわた 赤い眩暈』(88)や『ヌードの夜』(93)の主演をはじめとする石井隆監督作品の常連でもある竹中直人の懇願から企画がスタートしました。

それまで名美という名のヒロインによる愛と性と暴力の映画を撮り続けていた石井隆監督ですが、そのセンスで男の映画を作ってみたらどうなるか?

まもなくして企画は動き出し、豪華なキャスティングが実現しました。

・借金まみれのディスコのオーナー(佐藤浩市)
・美しきコールボーイ(本木雅弘)
・元刑事(根津甚八)
・リストラされたサラリーマン(竹中直人)
・ボクサーくずれ(椎名桔平)

彼らはすべて日常の不条理に翻弄され、虐げられた日々を過ごしてきた連中です。

いつキレてもおかしくない、そんな連中に一攫千金のチャンスが訪れ、ヤクザ(永島敏行、鶴見辰吾など)の隠し金を強奪するのです。

しかし、その報復として組織の親玉(室田日出男)は殺し屋(ビートたけし&木村一八)を差し向け、やがて血で血を洗う抗争が繰り広げられていきます。

タイトルも『GONIN』と決定。

従来の日本映画に久しくなかったオールスター・キャストのヴァイオレンス・アクション大作として、またバブルが弾けて閉塞感漂う世紀末を間近に控えた時期、本作は多くの映画ファンのストレスを発散させるとともに、多くの者を虜にしていきました。

数々のハード・ヴァイオレンス描写はもちろんのこと、それらを彩るスタイリッシュかつセクシャルな映像美、特に土砂降りの雨や夜のネオンといった石井映画必須のアイテムの中、蠢く男たちの危険な香りや連帯もしくは敵対といった構図の妙から醸し出されていく、もはや“愛”としか言いようのない想いの描出などなど、本作は石井映画の新機軸ともなり、新たな代表作の1本としても屹立しています。

なお、『GONIN』は劇場公開版(109分)と、レーザーディスク用に編集された特別版(119分)、そして2007年ディレクターズカット(リアルエディション/121分)と3つのヴァージョンがありますが、今回は劇場公開版での配信となります。

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名美を演じた女優たちが一挙集結した
シリーズ第2作『GONIN2』

GONIN2 ブルーレイ

『GONIN』の好評を受けて「次は女まみれのバイオレンス・アクションだ!」と言わんばかりに、続いてキレたら止まらない女たちの闘いを描いた『GONIN2』(96)が製作されました。

今度は、強盗に押し入られた宝石店にたまたま居合わせた、それぞれワケありの5人の女たちが、いつのまにか宝石を奪って逃走し、そこに妻を自殺に追いやられた男(緒形拳)の復讐劇が交錯していくという壮絶なヴァイオレンス劇です。

今回のGONINは、『死んでもいい』(93)の大竹しのぶ、『ヌードの夜』の余貴美子、『夜がまた来る』(94)の夏川結衣と、それまで石井映画で“名美”という名前のヒロインを演じてきた女優たちが一挙集結。喜多嶋舞も後に『人が人を愛することのどうしようもなさ』(07)で名美を演じることになります。もうひとり、石井映画初出演の西山由海は、阪本順治監督の監督の異色作『トカレフ』(94)などで当時注目された若手女優でした。

また強盗犯の一人に扮した片岡礼子は、まさにROKUNIN目の存在としてその存在感を際立たせ、後の石井作品『黒の天使Vol.2』(99)でも主人公を超えるほどのインパクトある熱演を示しています。

ドラマ的に前作と直接的な関わりはありませんが、劇中、『GONIN』で佐藤浩市が経営していたディスコが出てくるなど粋な計らいもあります。また、前作の仕掛け人でもあった竹中直人も、別の役でゲスト出演しています。

本作の場合、現在では当たり前のように作られているヒロイン・アクション映画の先駆け的存在としてもリスペクトすべき存在でしょう。

男のみならず、女がキレたらいかに怖く魅力的に映えるかを、とくと堪能させてくれる作品です。

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なお、昨年は『GONIN』からおよそ20年後、あの強奪事件に関わった者の子どもたちが織りなす壮絶な世界を描いた『GONINサーガ』が製作され、大きな話題を集めるとともに高い評価を受けました。

そう、GONINの子どもたちも時代を超えてキレまくりながら、今なお閉塞感に満ちた現代に“何か”を訴えかけてくれています。

こちらも機会ありましたら、ぜひご覧になってみてください。

(文:増當竜也)

「GONIN」| 1995年 | 日本 | 109分 | (C)1995 松竹株式会社 | 監督:石井隆 | 佐藤浩市/本木雅弘/根津甚八/椎名桔平/竹中直人/木村一八/永島敏行/鶴見辰吾/ビートたけし |

「GONIN2」| 1996年 | 日本 | 108分 | (C)1996 松竹株式会社 | 監督:石井隆 | 緒形拳/大竹しのぶ/喜多嶋舞/夏川結衣/永島敏行/左とん平/多岐川裕美 |

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou

    鹿児島県出身。映画文筆。

    朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。

    取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。

    編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊)

    その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。

    ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊)
    現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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