2020年も恐怖が熱い!マニアックJホラー映画5選

浅川梨奈主演でシュールな恐怖を醸し出す
『黒い乙女』Q&Aの2部作

黒い乙女 -A-

『がっこうぐらし!』もそうですが、ティーンを主人公とするホラー映画は、美少女アイドルならだれもが一度は通る道といっても差支えないものがあります。

SUPER☆GIRL出身の浅川梨奈もそのひとりですが、彼女の場合『人狼ゲームマッドランド』(17)『トウキョウ・リビングデッド・アイドル』(18)『血まみれスケバンチェーンソーRED』2部作(19)『映画としまえん』(19)とホラー映画に連続主演し、まさに現代のホラー・プリンセスとしても君臨している感もあります(その一方で『劇場版リケ恋』のようなキラキラ系にもちゃんと主演しています。2019年の『日経エンタテインメント』11月号では「映画&連ドラ出演・主演ランキング」と「20代以下女優主演数ランキング」で第1位を獲得)。

そんな彼女のホラー路線の中で、もっとも異彩を放っているのが、この『黒い乙女Q』『黒い乙女A』の2部作(19)でしょう。

非常に不穏で不可思議な作品です。

養護施設で育った孤児の芽衣(浅川梨奈)が、裕福な宇田家夫妻(和田聰宏&三津谷葉子)の養女として迎え入れられますが、そこには一足先に同い年の少女ラナ(北香那)も引き取られていました。

ふたりは趣味も誕生日も同じということがわかってすぐに意気投合しますが、まもなくして宇田家の家業が失敗してしまったことで、ふたりのうちどちらかが施設に戻されることになるのですが……。

と、ここまではほんの序章で、以後はもうあっと驚くどんでん返しの連続で、さらには「地球に隕石が降ってくる」だの「お多福様」だの謎めいたキーワードが多々散りばめられ、同時にキャラクターの性格付けなどもめまぐるしく変化していくことで、単なるサスペンス・ホラーの域を優に超えたシュールかつ甘味な世紀末感に翻弄されていきます。

この感覚についていける人といけない人とで評価は二分するかもしれませんが、理路整然とした教科書的なドラマよりも、演出と演技と映像で見る者を錯乱させてくれる本作のようなタイプのものは、個人的には大いに好みです。

特に第1部『Q』後半部の怒涛のような展開はお見事で、対して第2部『A』は一見解決篇のふりをしながら、ますます見る側を煙に巻いていきます。

監督の佐藤佐吉は『東京ゾンビ』(05)や『平凡ポンチ』(08)『奴隷区 僕と23人の奴隷』(14)などの異色作を手掛ける非凡な才人で、『金髪の草原』(00)『麻雀放浪記2020』(19)などの脚本家としても、また『キル・ビル』(03)をはじめとする俳優としても活躍中ですが、今回はホラーを含めた古今東西の映画的記憶を巧みに換骨奪胎させながら、人間の悪意を少女たちの美に託しつつ、セカイ系とも迷宮ともつかない混沌=カオスに導いてくれるのです。

決して潤沢とはいえない予算や撮影期間であったことは想像できつつも、それを上回るオリジナル・ストーリーとそれに即した映像構築、何よりも浅川梨奈と北香耶の純と邪の双方を引き出した手腕も高く評価したいところです。

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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