実写『君の名は』は、愛とすれ違いの映画

2016年の驚異的大ヒット作となった新海誠監督のアニメーション映画『君の名は。』。2018年の正月に地上波で初放送されるや、またまた高視聴率を弾き出すとともに話題も再燃。本当に息の長い人気作品です。

しかし今回ご紹介するのは『君の名は。』ではなく『君の名は』です。

タイトルをよく見比べますと、「。」があるかないかの違いがあります。アニメではなく実写、しかも今から半世紀以上も前のモノクロ作品3部作です。

でも、どちらもすれ違いのラブ・ストーリーであることと、驚異的大ヒット作であることは共通しています。では、『君の名は。』ファンも必見! 20世紀半ばの大ヒット作品『君の名は』の世界へ!

銭湯の女湯をカラにした伝説のラジオドラマの映画化

まず、映画『君の名は』の前に、その原作となった菊田一夫・作のNHKラジオドラマ『君の名は』から説明しておくべきでしょう。

1952年4月10日から54年4月8日まで放送された(毎週木曜20時半~21時)この作品、「番組が始まる時間になると、銭湯の女湯がカラになる」と言われるほど当時の女性たちの人気を博しました。

そうした風潮の中、松竹が53年にこれを映画化し、9月15日に『第1部』を公開するや、2億5047万円の配給収入をあげる大ヒット。続いて12月1日に『第2部』を公開し、配収3億2000万円と前作以上のヒットとなったのです。
(即ち、53年度の邦画配収1&2位を『君の名は』が占めたことになります)

シリーズ最終作『第三部』は1954年4月27日に公開されて配収3億3015万円を計上し、やはりその年の邦画配収第1位となりました。

今も形を変えて描かれ続けるメロドラマの原点かつ古典

『君の名は』のストーリーは、第二次世界大戦末期の東京大空襲の夜、降り注ぐ焼夷弾の雨から逃れながら、見知らぬ男女・氏家真知子(岸惠子)と後宮春樹(佐田啓二)が命からがら銀座の数寄屋橋までたどり着き、そこでお互いが生きていたら半年後の11月24日、それが駄目ならまた半年後、この数寄屋橋で会おうと、お互いの名前も知らぬままに約束し、別れました。

まもなくして終戦を迎え、ふたりはお互い約束の日に数寄屋橋へ赴こうとするものの、運命のいたずらでなかなか会えません。

そしてようやく会えたのは1年半後。
しかしそのとき、真知子は翌日に結婚することになっていました……。

ドラマはこの後もさらに続き、真知子と春樹のすれ違いの恋をしっくり、そしてじっとりと描いていきます。

このパターンはいわゆるメロドラマの典型で、今も品を変え形を変えお目見えし続けるすれ違いラブ・ストーリーの原点であり、今となっては古典といっても差し支えありません。
(ちなみに戦火を逃れた男女が橋で再会を誓うという設定はヴィヴィアン・リー&ロバート・テイラー主演の1940年度作品『哀愁』が元ネタになっていますので、見比べてみるのも一興でしょう)

当時新人だった主演の岸惠子と佐田啓二はこの3部作で大ブレイクし、また劇中での岸惠子の独特なストールの巻き方が、「真知子巻き」として日本中で大流行しました。

岸惠子はこのあと56年に日仏合作映画『忘れえぬ慕情』に主演し、以後は国際スターとして君臨し続けることになります。

佐田啓二は、今の若い世代には中井貴一のお父さんといったほうがわかりやすいかもしれません。
が、やはり当時、希代のイケメン俳優として一斉を風靡し、50年代から60年代前半の松竹を代表する大スターとして活躍し続けた名優です。

60年代には映画プロデュースにも進出するなど旺盛に活躍し続け、日本映画界になくてはならない存在となっていましたが、64年に37歳の若さで惜しくも自動車事故で死去しています。

監督の大庭秀雄は39年に監督デビューし、松竹大船メロドラマを中心に活動。『君の名は』以外にも『帰郷』(50)や『女舞』(61)、『残菊物語』(63)など代表作が多々ある名匠です。

なお『君の名は』はその後も幾度か再映画化されたり、テレビドラマ化もされていますが、やはり決定版はこの3部作でしょう。

さて、ここまでくるとアニメ映画『君の名は。』のファンの方も、実写映画『君の名は』を見てみたくなってきませんか?

いや、これを見てこそ本当の『君の名は。』ファンともいえるでしょう!?

実際、この2作、最初に記したようにすれ違いのラブストーリーということ以外に特に関連性はありません。

しかし、どこか共通しているところがあるのです。
だからこそ、いわゆる映画的運命でお互いが大ヒットを記録したのだと、そう確信しています。

この正月の『君の名は。』人気がさめやらぬうちに、ぜひ『君の名は』をご覧になってみてください!

[この映画を見れる動画配信サイトはこちら!](2018年1月19日現在配信中)
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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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