『At the terrace/テラスにて』、宴のテラスで展開される欲望の会話劇!

(C)2016 GEEK PICTURES 

10月25日(木)から11月3日(土)まで、第31回(2018年度)東京国際映画祭が開催されます。

毎年、古今東西の名作を多数披露し続けるこの映画祭、日本映画ファンとしては今勢いに乗るインディペンデント映画の新作をいち早く見ることができる“日本映画スプラッシュ”もお楽しみの一つ。

今回ご紹介する『At the terrace/テラスにて』も、2016年度の日本映画スプラッシュで上映されて喝采を浴び、その後東京・新宿武蔵野館で先行公開されるや、7日間連続満席完売記録を達成したヒット作でもあります!

富裕層のパーティーの終わりに集った
7人の男女の不可思議な確執

本作はCMディレクター&劇作・演出家&映画監督など多彩な顔を持つ山内ケンジが2015年に岸田國士戯曲賞を受賞した舞台劇『トロワグロ』を自らのメガホンで劇映画化したものです。

山内監督にとってこれが3本目の長編映画(ちなみにその前の作品『友だちのパパが好き』も2015年度の日本映画スプラッシュで上映されています)ですが、戯曲の映画化ということでも察しがつくように、本作はおよそ90分の上映時間の間、ずっと緑に囲まれた豪邸のテラスで物語がリアルタイムで淡々と進行していくのです。

裕福な専務夫妻(岩谷健司&石橋けい)の豪邸で開かれたホームパーティーも終わりに近づき、夫妻を含む数人の男女がテラスに集まり、とりとめのない会話を始めていきます。

そのうちデザイナー斎藤(古屋隆太)の妻・はる子(平岩紙)の“腕の白さ”が褒め讃えられていきます。

しかし、なぜかそのことからそれぞれ胸に秘めていた欲望や嫉妬などがどんどん露になっていき、やがて事態は思わぬ方向へなだれ込んでいくのでした……!

本来なら他愛のない艶笑的な会話が、いつしか奇妙ないがみ合いへとエスカレートしていく、会話劇としての面白さ。

また舞台劇としてのテイストを大事にした引き目の長回しを交えながらの、さりげなくも効果的なカッティングの妙が映画的に施されています。

出演者は石橋けい、平岩紙など舞台版のキャストが再結集していることもあって、一つ一つの台詞もそれぞれの俳優陣の血肉となった上で、リアクションも実に自然なものとして大いに映えています。
(実際、舞台劇の段階で、まずキャストを決めてから台本を執筆したとのこと。つまりはアテ書きなのでした)

富裕層ならずとも必見?
カーテンコールまで見逃せない!

正直、日本ではこういった富裕層のパーティーなんて、一般的な感覚ではどこか他人事とでもいいますか、そもそも日本人にはまだまだ不似合いな感もないわけではありません。

しかし、そんな不似合いさやぎこちなさが逆に効を奏し、全編を通して不可思議な魅力が醸し出されているのです。

設定によると、ここに出てくる男女はみな選挙の際は100%毎回与党に投票し、昼間は礼儀正しく勤勉に仕事をしている人たちばかりとのことで、それゆえに不慣れなパーティーの場で酒の勢いも手伝って、だんだんおかしくなっていくわけです。

また山内作品には「攻める女、逃げる男」という魅力的側面がちょくちょく見受けられるのですが、今回もエキセントリックな専務夫人とはる子の居心地の悪い会話のぶつかりあいに、男たちがたじたじとなっていく面白さがあります。

その意味でも石橋けいと平岩紙、山内作品の常連ふたりの女優の火花散る名演も大いに見ものでしょう。

さて、二人の女を主体とする混乱のテラスの場は、いったいどのように収まっていくのか?(そもそも収まるのか、この地味で緩慢な修羅場?)

富裕層ならずとも(いや富裕層でない人ほど!?)必見の面白さ、ぜひとも虚飾の仮面を剥いでお楽しみください。

監督自身の声によるエンドタイトルのカーテンコールも、実にユニークなのでした。

[2018年10月19日現在、配信中のサービス]
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(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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