川原礫×東紗友美対談『劇場版 ソードアート・オンライン』隠れた魅力
映画『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』の興行収入24億円、観客動員数160万人突破を記念して、原作・脚本の川原礫と、シネマズでも執筆する東紗友美の対談が実現した。
川原礫×東紗友美『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』の隠れた魅力、対談
映画『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』は、川原礫による原作小説第1巻発売以来高い人気を誇り、日本国内での累計発行部数が1,250万部を突破する大ヒットシリーズ「ソードアート・オンライン」の劇場版。謎の次世代オンラインゲーム、ソードアート・オンラインを舞台に繰り広げられる主人公・キリトの活躍を川原礫が完全書き下ろしで描く。メガホンを取るのは「ソードアート・オンライン」「僕だけがいない街」の伊藤智彦監督。
このたび、本作の興行収入24億円、観客動員数160万人突破記念として、原作・脚本の川原礫と、映画ソムリエとして活躍するタレント、東紗友美の対談が実現した。
川原礫は「深夜アニメ発にしてはすごい結果」と語り、大ヒットの理由を分析。また、アニメ映画を国際的に成功させる条件や、昨年の”彗星が落ちてくる大ヒット映画”について言及する一幕も見られた。
一緒に観た人と聖地巡礼したくなるデートムービー!?「恵比寿ガーデンプレイスはゲームステージっぽい」
東紗友美(以下、東):私、「ソードアート・オンライン」(以下、SAO)は映画から入ったんですが、ここまでゲームが舞台であることを明確にしたアニメを初めて見ました。
川原礫(以下、川原):そうですね。ゲームっぽい設定っていう映画ならいっぱいありますけど、ここまでゲーム感を前面に押し出しているものは、なかなかないかもしれませんね。
東:アニメや原作をよく知らなくても、とても楽しめる作品でした。
川原:ありがとうございます。既存のファンをケアしつつ新規の方も楽しめる内容にするにはどうしたらいいか、何度も話し合いがありまして。そういっていただけるのは何よりです。
東:映画を見終わった後、一緒に映画館へ行った相手とデートしたくなるんですよ。劇中舞台の秋葉原UDX前や恵比寿ガーデンプレイスを聖地巡礼したくなっちゃいました。カップルでも楽しめる内容ですよね。どうしてここまで現実の風景描写にこだわったのですか?
川原:個人的に、ゲームなどで再現される実際の風景にすごく憧れがあって。今回、劇場版の話をもらったときにぜひ東京の町並みを正確に再現したいと思ったんです。
東:個人的にお気に入りの場所は?
川原:最初の戦いが繰り広げられる恵比寿ガーデンプレイスは、見た目が既ににゲームステージっぽくて好きです。一段下がった空間があったり。そういう場所って都内に意外とないんですよね。
東:実はちょうど昨日、恵比寿付近で仕事がありまして。ガーデンプレイスを通ったんですけど、なんだかモンスターが出てきそうな気がしました(笑)
川原:そう思っていただけると嬉しいです。でも、その舞台のなかでもキリトとアスナが天体観測で登る埼玉の堂平山はハードルが高い(笑)。カップルで行こうとしたら相当大変です。
東:私、いろいろな映画の聖地巡礼が好きで、今度の休みに堂平山に行こうと思っていたんですけど……。
川原:あのですね、あそこ、バス停から歩いて行こうと思ったら2時間くらいかかるんです。あの山は車で山頂まで行けるので、そちらをおすすめします。実際に映画を見てくださった皆さんが結構訪れているみたいですね。
東:ネットで堂平山を検索すると「SAO」って出てきますから。
川原:でも、デートムービー的な要素をうまく取り入れることができたのは伊藤(智彦)監督のおかげです。あの人、最近結婚して“リア充オーラ”がすごいから。独身時代の監督ならここまでラブラブ感を出せなかったと思います(笑)完全にやっかみですけどね!
東:ひどい……(笑)
ハーレム系主人公は海外ではウケない?世界水準のアニメになるためには
東:ヒロインであるアスナのモデルっているんでしょうか?
川原:「SAO」を書き始めたのは、まだ僕が20代の頃で。当時の僕が思いつける限りの“いい女”感を一生懸命書いたんですけど、とにかくいっぱいいっぱいでモデルさんを考える余裕がなかったですね。うーん……誰かと言われれば栗山千明さんの要素は少し入っていると思います。昔からすごく好きで。
東:ちなみに、私がアスナをいいなって思うのは、守ってもらうヒロインじゃなくて強くて自分を持っているからです。
川原:なるほど。そういえば、アメリカでは“守られるだけのヒロイン”って許されないんです。TVアニメシリーズ第1期の途中では、アスナが悪いやつに囚われの身になってキリトが助けに行く流れになりますが、アメリカの記者さんから「これは男性優位主義的だ」って指摘されました。なるほど、ポリティカリィ・コレクト(政治的に正しい)じゃなかったなって。
東:そんなことが!
川原:それに、そういった意味ではキリトくんの“ハーレム感”が欧米ではキツいらしいです。
東:キツい?モテモテ主人公はダメってことですか?
川原:日本のラノベやアニメは、女性たちの気持ちが主人公ばかりに向いているケースが多いですよね。それは国際的に通用しない感覚なんです。世界に売り込むにあたって、その辺りは最大のハードルになっていくんじゃないかって。
東:はっきりと言われたことも?
川原:はい。Twitterとかで「キリトは早くその問題を解決すべきだ」と言われました(笑)
東:ふふふ。問題、って扱いなんですね。
俳優が声優を演じるということ「最初は違和感を感じていたんですけど……」「神田さんの歌声には心底震えました」
東:この劇場作品をどんな人に見てもらいたいですか?
川原:コンセプトとして、客層をしぼることはやめようって。なるべく多くの方に見ていただけるものが作りたかった。どうやら、お客さんのなかには、ご年配の方もいるらしくて。とても嬉しいですね。
東:今回声優として神田沙也加さんや井上芳雄さん、鹿賀丈史さんが参加されていますよね。最近では女優や俳優が声優を務めることも多いですが、どのように感じますか?
川原:確かにこれまでのアニメ声優さんの演技とは違うところがありますよね。僕も最初はそれを違和感と捉えていたんですけど、実際にアフレコを拝見して考えをあらためました。とにかく存在感がすごい。声優さんは自分の存在を消してキャラになりきる感じですが、俳優さんの場合は逆に存在感が増していくんです。
東:なるほど!
川原:そうか、これは違和感じゃなくて、「生きている人間らしさ」なんだって。終盤、井上芳雄さんが演じたゲストキャラのエイジが叫ぶシーンがあるんです。「SAOなんてクソゲーの記憶、もらったっていいじゃないか!!」って。その咆哮の生々しさは、普通にはなかなか出せないんじゃないかと思います。
東:エイジくんの叫びや鹿賀さん演じる重村の娘への思いなど、たくさん心を動かされました。
川原:それにキーとなるAIキャラのユナを演じた神田さんの歌声には心底震えました。人工知能の悲哀みたいなものがありありと伝わってくる演技もすごかった。
“彗星が落ちる大ヒット作”に言及「あれは特殊な現象」
東:興行収入が20億円を突破しているようですが、これってものすごいことですよね
川原:「SAO」って、一般に受け入れられない作品だと僕は思っていたんです。深夜アニメ発にしてはすごい結果ですよね。でも、こんなことを言うと怒られるかもしれないけど、無理に「一般への壁」を超えなくてもいいのかなって気もするんです。そこにこだわりすぎると本当のコアなファンを切り捨てる危険性が出てくる。僕はそれだけは絶対にしたくないんですよ。
東:原点を大事にしたいと。
川原:まだ本格的にデビューする前のウェブ時代から僕のホームページで「SAO」を読んでくださっている人もいるわけで。その人たちは絶対に裏切りたくないんです。
東:そんな制約がありつつも多くの人に受け入れられたんですね。
川原:本当に監督や役者さん、スタッフさんの力です。感謝しかないです。
東:最近アニメが一般層に浸透してきたことも関係があるのでしょうか?
川原:昨年はとんでもないヒット作品がひとつありましたよね。でもあれは、それこそ“彗星が落ちてくるような”確率の特殊な現象なので……。
東:(笑)
映画大ヒットの理由を分析「並みの努力じゃない」「あんなに動く戦闘シーン見たことない」
川原:話が逸れましたが、「劇場版SAO」のヒット理由として作画と音の力はとても大きいと思います。もの作りって終わりがないんですよ。やればやるだけ先がある。制作側がギリギリまで諦めなかったことが心から伝わってきます。僕、あんなに動く戦闘シーン見たことないですよ。
東:まさに、瞬きができないほどの密度でした!
川原:音も凄い。ユナが歌うなかで戦闘するシーンはぜひ劇場で見直してほしいです。歌をBGMに使うっていうのはすごく難しいと思うんです。普通に使うと歌とキャラのセリフが混じってしまいますから。ゆったりとした曲調から勇ましい感じに変わる瞬間なんか、秒単位でピタッとハメなきゃいけない。実際にやろうと思ったらとんでもなく大変な作業です。
東:確かに、言われてみればかなり大変ですよね……。
川原:クライマックスに駐車場でキリトとエイジが対峙する一方で、ステージではユナのライブが始まります。ユナの歌をバックに交互に物語が展開する疾走感がものすごい。あそこまで1カット1カットを曲にぴったりはめ込んでいくのは並みの努力じゃないですよ。あのこだわりや粘りがあったからここまでヒットもしたし、よい作品になったんだと思います。
東:なんだか、もう一度見たくなってきました(笑)
東紗友美は、恵比寿ガーデンプレイス、秋葉原UDX、代々木公園など東京の有名スポットが本編中で描かれていることについて「映画を観ると知っている場所でも改めて足を運んでみたくなるので、鑑賞後に“この映画に出てた恵比寿ガーデンプレイス、今度行ってみない?”なんて自然にデートに誘えちゃうかも。」と語る。
さらに「“ゲームの世界が舞台の映画”という前提で鑑賞したのに、“恋人の絆”や“親子の愛”が描かれていたのにびっくり。“人間関係”の描写がしっかりしているので、初見でも感情移入できます」と見どころについてコメントを寄せている。
なお、本作の来場者特典として、2017年4月15日からは「キャラクターデザイン足立慎吾描き下ろし色紙」が、4月22日からは「TVシリーズ名シーンフィルムコマ」が、数量限定でもらえるほか、5月6日からは、上映劇場追加記念特典として「キャラクターデザイン足立慎吾描き下ろしイラストA4クリアファイル&川原礫書き下ろし特典小説“ソードアート・オンライン ホープフル・チャント”電子書籍プレゼントカード」がプレゼントされる。
映画『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』は、大ヒット上映中。
(C)2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。