GWは007シリーズを再チェックしよう!

現在も世界中を震撼させ続ける新型コロナ・ウイルスの影響で、さまざまな新作映画の公開が延期されています。

『007 ノータイム・トゥ・ダイ』(20/キャリー・ジョージ・フクナガ監督)もその1本で、本来ならば4月に全世界で一斉に公開される予定だったのが、2020年11月に延期となりました(日本では20日公開予定)。

ご存じ英国諜報部員007ことジェームズ・ボンドの活躍を描いたスパイアクション映画シリーズの最新第25作。4月になれば見られると新年早々ワクワクしていたファンからすると、もう残念で無念でたまらないものがあります。

が、それならば11月までの間にこれまでのシリーズ24本を見直すというのも一つのストレス解消ではあるでしょう。

国内の自粛要請解除も延期となってしまったGWの今から始めても、十分に間に合います!

というわけで、こちらもそのガイド的な役割を少しでも果たせたらと思いつつ……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街462》

このシリーズ、あまりにも魅力が多彩で、どこから切っていけばいいのかわけがわからなくなるほど!

個々の作品はもとより、監督、キャラクター、ボンドガール、悪役、主題歌、音楽、タイトルバック、秘密兵器、アクションなどなど、どこから切っても1冊の本が作れるほど!

そこで今回は基本中の基本として主人公ジェームズ・ボンドを演じた俳優たちに焦点を絞って、私的意見を述べてみることにしました!(……が、それでも結構な分量にはなってしまう!?)

野性味たっぷりの初代ボンド
ショーン・コネリー

007シリーズ第1作『007 ドクターノオ』(テレンスヤング監督)がイギリス本国で公開されたのは1962年で、日本は翌63年公開。初公開時の邦題は『007(ゼロ・ゼロ・セブン)は殺しの番号』でした(このため、かつてはゼロ・ゼロ・セブン、もしくはゼロ・ゼロ・ナナと呼ぶ人が大半でしたが、今は原語に即してダブル・オー・セブンと呼ぶのが常となっています)。

当時、世界は米ソの冷戦構造真っただ中で諜報合戦も盛んに行われていたことから、スパイを主人公にした映画が作られていく流れも常道ではありましたが、その中でイギリスの秘密諜報部MI6の工作員007ことジェームズ・ボンドは粋でダンディ、女を口説く術に長け、危機また危機を華麗なるアクションとともに乗り越えながら任務を遂行していきます。

そのジェームズ・ボンドを映画で最初に演じたのがショーン・コネリー。

初登場の際に彼が自己紹介発したシンプルな名台詞(アメリカ映画の名セリフベスト100の22位!)。

“The name is Bond,James Bond.”

これとともに、それまで若手助演俳優として活動していた彼は、ボンド役のオーディションに受かったことで一気に大スターとして世界的名声を得ることになりました。

ショーン・コネリーのボンドは野性味あふれるダンディズムが特徴で、女性に対しても英国紳士的雰囲気の中にどこか強引な趣きがあります(1964年のガイ・ハミルトン監督による第3作『007 ゴールドフィンガー』では、ヒロインを納屋の中で押し倒すといった一幕も)。

またシリーズ初期は世界的悪の秘密結社スペクターを敵に据えることで、彼らの陰謀に翻弄される米ソの対立的危機をボンドが阻止するパターンの作品が多く見受けられます。

シリーズ屈指の傑作と讃えられている第2作『007ロシアより愛をこめて』(63/テレンス・ヤング監督/初公開時の邦題は『007危機一発』)からは秘密兵器が登場しますが、『ゴールドフィンガー』以降はどんどんそれが派手になっていくことで娯楽アクション色がより強まっていきます(もっともこの時期の秘密兵器の大半は現在普通に作られており、今見直すと時代の流れを痛感させられたりもします)。

第4作『007 サンダーボール作戦』(65/ガイ・ハミルトン監督)からは、それまでビスタ・サイズだった画面がさらに横長のスコープ・サイズになり、超大作感も際立っていくのでした。

第2作以降、毎度秘密兵器をボンドに渡すMI6研究開発Q課の課長Q(第2~19作までデスモント・リュウェリン)の皮肉混じりのブリティッシュ・ジョークを反映させたユニークな言動の数々も、MI6上司M(第1~11作までバーナード・リー)とその秘書マネーペニー(第1~14作までロイス・マクスウェル)の存在感とともに、シリーズの魅力の根幹となっていきました。

また007といえばモンティ・ノーマン作曲《ジェームズ・ボンドのテーマ》が有名ですが、第2作からは主題歌も大きな魅力となっていき、毎回世界のヒットチャートをにぎわすようになっていくのでした。

日本人として注目すべきは、日本ロケを敢行した第5作『007は二度死ぬ』(67/ルイス・ギルバート監督)で、ここでは外国人の目で見据えた日本ならぬNIPPONとでもいった異国情緒がたまらない魅力(?)をもたらしてくれています。

サムライ、キモノ、スモウ、ニンジャなど当たり前、さらには瀬戸内海の小島の中に阿蘇山があるといった現実無視の敵基地のロケーションも加えて、映画とはここまで自由になれるのか! と初めてこの作品を見たときは驚かされたものでした。

ちなみにショーン・コネリーは4作目あたりからボンド役の降板を考えていたようですが、この第5作の日本ロケの際、プライバシー侵害などお構いなしの日本のマスコミの執拗を通り越した非道な攻勢に激怒&うんざりしたことも、本作を最後に降板(第7作&1983年に全く別の製作体制で作られたアーヴィン・カーシュナー監督の『ネバーセイ・ネバーアゲイン』で復活しますが)する理由の大きなひとつとなったようで、同じ日本人として誠に申し訳ない限りであります。

1作だけで消えた2代目
シリーズを改革した3代目

第6作『女王陛下の007』(69/ピーター・ハント監督)では二代目ジェームズ・ボンドとしてオーストラリア出身のジョージ・レーゼンビーが抜擢されますが、それまでのショーン・コネリー人気があまりにもすごすぎたことで比較され、これ1作で降板。

もっとも作品自体は原作にかなり忠実で原作ファンの評価が高く(ちなみにクリストファー・ノーラン監督は007シリーズの中で本作が一番好きとのことで、2010年の『インセプション』ではオマージュを捧げたスキー・アクション・シーンも披露しています)、またボンドの恋と結婚、そして……といったエピソードがロマンティックに綴られ、これは後々の作品群でも設定としてさりげなく活かされていきます。

続く第7作『007 ダイヤモンドは永遠に』(71/ガイ・ハミルトン監督)ではショーン・コネリーが再びボンドを演じ、作品としても荒唐無稽色がより際立っていきますが、それに伴うコミカルな要素は従来のシリーズの雰囲気とそぐわない感もありました。

またこの作品でボンドVSスペクターの構図もひとまずピリオドとなり、以降は単体として悪事をやらかす大物たちとの闘いが主軸となっていきます。

第8作『007 死ぬのは奴らだ』(73/ガイ・ハミルトン監督)ではついに三代目ボンド、ロジャー・ムーアが登場します。

ムーアはもともと初代オーディションで最終候補の一人として残っており、本来は第6作(このときの題材は『女王陛下の007』ではなく、1974年に第9作として実現することになるガイ・ハミルトン監督作『007 黄金銃を持つ男』でした)で二代目就任する予定でしたが、企画の遅延でスケジュールが合わなくなり、降板。本作にてようやくのお披露目となったのでした。

ロジャー・ムーアの起用によって、ジェームズ・ボンドおよびシリーズのイメージ・チェンジも図られていきます。

ショーン・コネリーのボンドがマッチョ型で女性を強引に押し倒すタイプだったのに対し、ムーアのボンドは誰に対しても(たとえそれが敵でも!)ニコリと笑顔で返し、女性に対しても徹頭徹尾優しく接します(例えそれが敵でも!!)。

そうした姿勢を確立させて好評を博したのが第10作『007 私を愛したスパイ』(77/ルイス・ギルバート監督)で、第7作ではそぐわなかった笑いの要素も荒唐無稽な描写なども違和感のないものとなり、第11作『007ムーンレイカー』(79/ルイス・ギルバート監督)ではついに宇宙まで行ってしまい、ヒロインと無重力Hまで実現させてしまうのでした!

第12作『007 ユア・アイズ・オンリー』(81/ジョン・グレン監督)では原点回帰でアクション重視の嗜好が図られますが、ただしこの時期からロジャー・ムーアの年齢的な限界が垣間見られるようになり(ムーア自身も第12作の後で降板の意思を表明しています)、第13作『007 オクトパシー』(83/ジョン・グレン監督)では老骨に鞭打っているかのような痛々しい風情を隠し切れなくなり、ついに第14作『007 美しき獲物たち』(85/ジョン・グレン監督)を最後に降板(でも本当に頑張ってくれました!)。

私見としては第6作から9作まではシリーズの混乱期だったように思えますが、長寿シリーズとは概してこの時期を乗り越えられるか否かでその後の継続が決まっていく傾向があるようで、それに倣うと007シリーズはロジャー・ムーアの抜擢こそが今に至るシリーズ継続の決定打になったように思えてなりません。

ちなみにロジャー・ムーアはショーン・コネリーともジョージ・レーゼンビーとも仲の良い友人であったとのことです。

製作の滞りが仇となった4代目
シリーズ人気を蘇らせた5代目

第15作『007 リビング・デイ・ライツ』(87/ジョン・グレン監督)からはティモシー・ダルトンが4代目ジェームズ・ボンドに抜擢。

彼はイアン・フレミング原作のボンドに一番雰囲気が近いと評判でしたが(実は第6作と第13作でもオファーを受けていました)、結局続く第16作『007 消されたライセンス』(89/ジョン・グレン監督)の2作のみで惜しくも降板。

これは製作元VS配給サイドの法廷闘争でその後の新作製作が滞ってしまい、ようやくシリーズ再開に伴ってのオファーをダルトンは素直に喜んだものの、製作サイドから「あと4、5本はやってほしい」と言われ、「さすがにそれでは一生が007だけになってしまう」といった理由で丁重に辞退したとのこと。

代わって抜擢され、5代目ジェームズ・ボンドとして6年ぶりのシリーズ新作となった第17作『007 ゴールデンアイ』(95/マーティン・キャンベル)に登板したのが、ピアース・ブロスナンです。

彼もまた第13作でボンド役のオファーを受けていましたが、スケジュールの関係で実現とならず、ようやくの登板。

結果として彼は、ショーン・コネリーのダンディズム、ロジャー・ムーアの優しさを併せ持つ中立的なボンドとしての新味を発揮し、興行的にもシリーズ人気を復活させています。

また第17作の監督はマーティン・キャンベルですが、ブロスナンのボンド映画は第18作『007 トウモロー・ネバー・ダイ』(97)でロジャー・スポティスウッド、第19作『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』(99)でマイケル・アプテッド、第20作『007 ダイ・アナザー・デイ』(02)でリー・タマホリとそれぞれ監督を変えているのも大きな特徴で、これによってシリーズのマンネリ化を阻止することにもなりました。

ちなみに、これまでシリーズを演出してきた監督は以下の通りです。

テレンス・ヤング(1・2・4)
ガイ・ハミルトン(3・7・8・9)
ルイス・ギルバート(5・10・11)
ピーター・ハント(6)
ジョン・グレン(12・13・14・15・16)

従来のシリーズをリセットしての
新たなイメージの6代目

さて、第21作『007 カジノ・ロワイヤル』(06/マーティン・キャンベル監督)からは従来のものからリセットされた新たなジェームズ・ボンドのドラマが始まることになります。
(第17作からジュディ・デンチが演じてきたMも、別キャラクターとしての設定になります)

そもそも原作からしてシリーズ第1作目であり(ちなみに1967年には、別製作体制によるスパイ・パロディ映画『007カジノロワイアル』が作られています)、映画化に際してもまだ諜報部員007としては新米のボンドが描かれていることもあって、それに伴って6代目ボンドも歴代ボンドのイメージと真逆の個性を持つダニエル・クレイグが抜擢されました。

これには製作段階で多くのファンから賛否の声が上がり、中には彼の起用を反対するサイトまで立ち上げられたとのことですが、そうしたバッシングもいざ作品がお披露目されると即解消。映画ファンは21世紀に見合った新しいクールなジェームズ・ボンドに魅せられ、続く第22作『007 慰めの報酬』(08/マーク・フォースター監督)、第23作『スカイフォール』(12/サム・メンデス監督)と大いに新作を期待するようになり、そのつど彼も期待に応えていきます。(2012年のロンドンオリンピック開会式でダニエル・クレイグはボンドに扮し、エリザベス2世をエスコート!)

第24作『007 スペクター』(15/サム・メンデス監督)ではタイトルからお察しがつくように、ついに初期シリーズの敵組織スペクターが登場! 首領のブロフェルド(クリストフ・ヴァルツ)とボンドは因縁の“再会”を果たすのでありました……。
(ちなみにダニエル・クレイグ版シリーズはそれぞれの作品が密接にリンクしながらストーリー展開されていくので、ご鑑賞の際は続けて一気にご覧になると面白さも倍増でしょう)

そして待望の第25作『007 ノータイム・トゥ・ダイ』(20/キャリー・ジョージ・フクナガ監督)は2020年11月20日公開予定となります。

今度こそはちゃんと公開されるよう今のコロナ禍が収束するように強く願うと同時に、それまでの間にシリーズを振り返り(もしくは初見の人も!)、このシリーズ最新作に備えておいてください!

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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