2018年の大作映画のキーワードは“想像力”と“作家性”か?注目大作をピックアップ

■「〜幻影は映画に乗って旅をする〜」

続編、リメイク、リブート、ユニバースと、数年前まではネガティブに捉えられることが多かった大作の傾向は、3DやIMAXなど時代の流れに沿ったフォーマットで新たに生み出されるという強みを得て、すっかり印象が変わってきたように思える。

2017年には名作アニメの実写化『美女と野獣』が大ヒットを記録し、人気シリーズ『ワイルド・スピード』の最新作をはじめ、マーベルとDCのアメコミ二大看板が相次いで話題作を発表。秋には『エイリアン』や『猿の惑星』のシリーズの最新作、そして『ブレードランナー』の続編が公開され、そして年末には、すっかり定番となった『スター・ウォーズ』の最新作。一体自分が何年代を生きているのかわからなくなりそうなラインナップだが、そのいずれもが高評価を獲得したことは言うまでもない。

2018年にも多くの注目作の公開が決定しており、例によってシリーズ物が多くある中で、本稿では驚異的なオリジナリティに溢れた(溢れるであろう)大作を厳選して紹介したい。

<〜幻影は映画に乗って旅をする〜特別篇:2018年の大作映画のキーワードは“想像力”と“作家性”か?注目大作をピックアップ>

『レディ・プレイヤー1』

クリストファー・ノーランやロバート・ゼメキスら、名だたる監督たちが映画化を考えたというアーネスト・クラインの人気小説を、スティーブン・スピルバーグが映画化したSF作品。仮想世界“オアシス”の管理権をかけた熾烈なゲームに参加する主人公が体験する、驚くべき世界が展開する本作は、まさに最先端の上映設備での鑑賞がマスト。

その全貌が徐々に明らかになっていく中で、原作同様にさまざまな人気作品のキャラクターが相次いで登場することが明らかに。ちょうどVR専用シアターが登場し始めた昨今、映画の枠を超えた展開が始まることを予感せずにはいられない。

スピルバーグは、本作の直後に撮った『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』も3月に日本公開。今年の春は対照的ながらハイクオリティな2作を同時期に堪能できるとなれば、映画の魅力を再認識できることは間違いなしだ。

『シェイプ・オブ・ウォーター』

(C)2017 Twentieth Century Fox

ヴェネツィア国際映画祭で最高賞に当たる金獅子賞を獲得した本作。幼い頃のトラウマで言葉が喋られなくなった主人公と、政府の研究施設に運ばれてきた魚人との不思議な愛の交流を描き出した、映画愛と想像力が溢れまくるファンタジー。

異色なテイストながら、アカデミー賞での大健闘も噂されているほどに、驚くべき完成度を誇るギレルモ・デル・トロの新たな代表作。サリー・ホーキンスの表情と動きのみで作り出された圧巻の演技に、マイケル・シャノンやオクタヴィア・スペンサー、リチャード・ジェンキンスらの安定したサポート。そして、魚人を演じるダグ・ジョーンズ(『パンズ・ラビリンス』のペイルマンです)の計り知れない怪演によって、見事な演技合戦が作り出されているのも魅力的。

『15時17分、パリ行き』

UPI/アフロ

2015年にアムステルダムとパリを結ぶ列車内で起きた“タリス銃乱射事件”を、クリント・イーストウッドが映画化した本作。『アメリカン・スナイパー』、『ハドソン川の奇跡』と、実話の映画化が続くイーストウッドだが、ますます彼のドキュメンタリー的志向が強まっていると思わせるのは、異例中の異例とも話題のキャスティングだ。

大スターを起用せずに、実際に事件を制圧した3人のアメリカ人男性を、彼ら自身の役柄で起用するという、誰も考えもしなかった英断に乗り出したのだ。アカデミー賞で大きな話題になるかと思われていたものの、全米公開も2018年でそのチャンスは来年へ持ち越し。とはいえ、その出来栄えによってはイーストウッドの今後の作風を左右する大きな一本となることは間違いないだろう。

ヴァレリアン 千の惑星の救世主』

© 2017 VALERIAN S.A.S. – TF1 FILMS PRODUCTION

映画史に誇る金字塔『スター・ウォーズ』シリーズの起源とも言われている、フランスの人気漫画シリーズ「ヴァレリアンとローレリーヌ」を、これまで何度も引退宣言と撤回を繰り返しているリュック・ベッソンが映画化。

原作者ジャン=クロード・メジエールといえば、ベッソンの代表的なSF映画『フィフス・エレメント』にも参加している縁もあり、そこにフランス映画史上最高額の制作費で、まさにベッソンの情熱がすべて注ぎ込まれていることは間違いない。

彼が代表を務める製作会社ヨーロッパ・コープが、本作によって窮地に追い込まれていることが言われているが、90年代のベッソン作品に魅了されてきた世代としては、そう簡単に見限ってしまってはもったいない。

『ジュラシック・ワールド/炎の王国』

(C)Universal Pictures

2015年に待望のオープンを果たしたあのテーマパーク。記録的な大ヒットを叩き出し、その年のユニバーサル映画に過去最高の収益をもたらしたことも記憶に新しい。

本作ではキャストをそのままに、メガホンは前作のコリン・トレヴォロウから、スペインの俊英フアン・アントニオ・バヨナにバトンタッチ。『永遠の子供たち』『怪物はささやく』でのダークな世界観、『インポッシブル』での芳醇なドラマ性が、この世界的エンターテインメント巨編にどう生かされるのか楽しみである。とりわけ、鬱蒼とした森の描写は彼の作風が強く生かされるのではないかという予感がする。続編作品でありながらも、また新たな驚きが味わえるに違いない。

取り上げた作品以外にも、アカデミー賞女優アリシア・ヴィキャンデルを主演に、ノルウェー出身の若手監督を起用しリブートされた『トゥームレイダー ファーストミッション』。そして、『ハンガー・ゲーム』のゲイリー・ロス監督が豪華女優陣でフランク・シナトラ主演のあの名作のリメイク版をさらにリブートさせた『Ocean’s 8(原題)』も下半期に公開予定。

もちろん、名優ダニエル・デイ=ルイスが引退宣言をした『The Phantom Thread(原題)』、ウェス・アンダーソンが再びストップモーションアニメに挑戦した『犬ヶ島』や、確実に良作を生み出すアレクサンダー・ペインの『ダウンサイズ』、カンヌ国際映画祭で話題を集めたトッド・ヘインズの『ワンダーストラック』といった中規模作品も見逃せない。

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(文:久保田和馬)

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