『50回目のファーストキス』は長澤まさみが「コンフィデンスマンJP」以上に可愛い日本版がオススメ!

©2018「50回目のファーストキス」製作委員会
 

2005年に日本で公開されたアメリカ映画、『50回目のファーストキス』。アダム・サンドラーとドリュー・バリモアの共演によるこのロマンティック・コメディを、何と『銀魂』や『HK変態仮面』の福田雄一監督が堂々リメイクしたのが、6月1日より全国公開中の同名映画、『50回目のファーストキス』だ。しかも主演が山田孝之と長澤まさみとくれば、これはもう期待するなという方が無理!そこで今回はこの話題作を、さっそく初日の最終回で鑑賞して来た。果たして見事なラブストーリーになっているのか、それともいつも通りコメディ全開の福田雄一ワールドが展開するのか?気になるその内容とは?

ストーリー

ハワイでコーディネイターをするプレイボーイ弓削大輔(山田)はある日、カフェで藤島瑠衣(長澤まさみ)という女性と出会い恋に落ちる。しかし、翌日同じカフェで会った彼女は大輔の事をまるで覚えていない。実は彼女は交通事故の後遺症により、新しい記憶は1日で消えてしまう短期記憶障害を負っていたのだ。
彼女を想う父と弟の手で、その事実を隠され、同じ日を繰り返す瑠衣。事情を知った大輔は、毎日、自分を覚えていない彼女に一途に愛を告白し続ける。瑠衣にとっては毎日が大輔との初対面。大輔の機転と努力により一度は結ばれた二人だが、大輔の本当の夢を知った時、瑠衣はある行動に出るー。(公式サイトより)

予告編

実はリメイク版ではなく、日本人向けに翻訳したローカライズ版だった!

既にネットでも多くの方が発言されている通り、実は細かい部分やセリフに至るまでオリジナル版を忠実に再現している本作。

もちろん男性側主人公の職業の変更や、意外に多かった下ネタや悪趣味なギャグを抑えるなど日本独自のアレンジも多いのだが、本作が単純なリメイク版と言うよりも、アメリカ人向けのラブコメ映画を日本人にも笑える様に翻訳した、言わば日本向けのローカライズ作品と呼ぶべき内容に仕上がっていたのは意外だった。

そう、実は本作に関してネット上で良く目にする「いつもの福田雄一監督作品だった」や「オリジナル版そのままじゃないか」という感想こそ、正に本作の目指したものであり、同時に最高の褒め言葉でもあるのだ!

しかもオリジナル版の展開やセリフを踏襲しながらも、実際笑わせることにかけては今回の福田監督版の方が断然上なのが凄い!

©2018「50回目のファーストキス」製作委員会
 

主演二人の見事な顔面演技と脇役たちの個性、そしてシリアスとコメディの両極を行ったり来たり、時には大きく振り切るその絶妙のバランス感覚は、本作がヒロインの重い病気を扱っていることを上手く忘れさせてくれて、観客を笑いの渦に巻き込んでくれるのだ。

例えば、ヒロインの名前である「ルーシー」を日本風に「瑠衣」に変更したり、オリジナル版ではかなり唐突に思えた主人公のヨット事故を車の故障にすることで、その後の二人の初対面シーンへ無理なく繋げるなど、あくまでもオリジナル版にリスペクトを捧げつつアレンジしているのが素晴らしい本作。

特に、オリジナル版を見た方なら思わず「そう来たか!」となることは確実なのが、誕生日に『シックスセンス』のビデオを繰り返し見せられるというギャグを、日本人向けの某有名な歌として見事に置き換えた点だろう。このシーンは演じる佐藤二郎の独壇場となっているので、その時代遅れの微妙な空気感とコスプレを、是非お楽しみ頂ければと思う。

その他にも瑠衣の弟のキャラクターに、オリジナル版に登場する水族館助手のLGBTネタを盛り込むことで、オリジナルで悲観的になりがちだったルーシーの家族のエピソードを多彩なギャグで盛り上げるなど、今回の福田雄一監督の演出と見事なアレンジは、オリジナル版を見たことが無い方にも自信を持ってオススメ出来る内容となっている。

実際、ルーシーの弟が筋トレにのめり込んでいる理由や目的が、オリジナル版では全く観客には分からないのだが、今回の日本版での見事なアレンジと瑠衣の弟を演じる太賀の名演技により、登場の瞬間から観客の爆笑を誘う名シーンが炸裂するのが見事!

更には、大輔の親友であるウーラ山崎を絶妙の脱力感で演じる、ムロツヨシの安定のコメディ演技!あまりに強烈過ぎる外見とキャラクターのおかげで、オリジナル版では主人公よりも目立ってしまっていたこの脇役を、外見はほぼそのままにしてより観客に愛されるキャラクターとして生まれ変わらせた彼の功績は、是非劇場でご確認を!

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長澤まさみのコメディを楽しむには、今が正にベストのタイミング!

思えば昨年の『銀魂』でも、既に長澤まさみのコメディ演技は披露されていたのだが、その反面、今までのイメージとの間に違和感を感じた方も多かったのでは?

しかし幸い本作では、すでにフジの月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」での、彼女の吹っ切れたコメディ演技が毎週披露されている中での公開となり、これこそ正に長澤まさみのコメディ演技を堪能するにはベストのタイミングでの劇場公開だと言える。

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オリジナル版のドリュー・バリモアも、事故による難病を感じさせない明るいルーシーを実に魅力的に演じているのだが、事故によって同じ一日を繰り返す悲しみや家族との絆の表現に関しては、やはり長澤まさみの方が数段上と言わざるを得ない。もちろんこれは女優の力量による部分だけではなく、アメリカと日本の観客の好みに合わせた部分も大きいと言える。

特に印象が異なるのは、ヒロインに毎日届けられるビデオ映像の中身だろう。ここもビデオ映像のBGMがオリジナル版とは真逆の曲調なため、日本版の方が彼女を見守る男からの愛情のこもったビデオレター、という雰囲気が色濃く出ている。

と、ここまで日本版の優れている点を紹介して来たが、実はオリジナル版にも日本版より優れている部分が数多く存在するのも事実なのだ。例えば、ルーシーに対する父親と弟の深い愛情が描かれる部分。実は映画序盤のルーシーのセリフでは、彼女の父親と弟は漁師をしており、漁に出ると長い間帰って来ないのでその間彼女は家に一人きりだということが語られる。

ところがその後、記憶が一日しか持たないルーシーに気付かせない様に同じ日曜日を繰り返すため、毎日彼らが準備する様子が描かれる。つまりルーシーの介護やこの準備をするために、彼らは自分達の仕事を諦めて陸にいるという選択をしたことが判るようになっているのだ。

セリフでの説明やこれ見よがしの描写では無いが、ここは自分達の人生を捨ててルーシーのそばにいることを選択した二人の思いやりと、家族への愛情を観客に示す素晴らしい描写と言えるだろう。

実は今回意外な収穫だったのが、TOHOシネマズで映画を観る機会が多い方には上映前の映像でもはやお馴染みの顔である、山崎紘菜の予想外に見事なコメディエンヌ振りだった。特に「はい、気絶します!」の絶妙の間は、思わず笑ってしまう名シーンなのでお見逃しなく!

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最後に

実は劇場で予告編を観た段階では、まさか福田雄一監督の作品とは全く知らずにいた本作。

実際、自分が観た予告編にはコメディ要素は全く入っておらず、オリジナル版の映画もラブストーリーの印象が強かったため、果たしてこの試みが成功するのか?正直かなりの不安を持って鑑賞に臨んだのだが・・・。

ところが、そんな心配は全く無用だった!

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前述した通り、オリジナル版では日本人に理解しにくかったり、文化習慣の違いから笑えない部分を日本人向けに改良し、更にはいつもの福田組常連俳優の爆笑演技と強烈な個性を投入することで、単なるリメイク版の域を超えて見事にいつも通りの福田雄一監督作品に仕上げてくれていたからだ。

実は本作鑑賞後に改めてオリジナル版を見返してみたのだが、本当に細かい設定やセリフ・小道具に至るまでオリジナル版を踏襲しながら、いかに福田監督版が優れているかを再確認する結果となった。

ただ一つだけ気になった点は、オリジナル版では何故ヘンリーが一晩だけの後腐れの無い関係を続けるのか?についての説明があり、またルーシーに出会ったことで他の女性との関係を止める、という描写もあるので、彼の心境と生き方の変化は観客にも十分理解出来るようになっている。しかし、実は今回の日本版にはそういう明確な説明が無いのだ。一応、旅行会社の同僚のセリフで間接的に説明はされるのだが、おそらく自分の研究が認められればこのハワイを旅立つことになるので、それに備えて深い関係を絶っている?程度に想像するしかない。

ただ、相手を騙すことになっても、相手の記憶に残らない様に自身の存在を消して、後腐れ無く別れを繰り返してきた大輔が、瑠衣との運命の出会いによって真の恋愛に目覚め、初めて相手の記憶の中に残ろうと奮闘努力するという展開は、実はこの日本版の方がより丁寧に描かれていて観客の共感を呼ぶ。

水族館と天文学の違いはあるが、日本版の主人公の大輔が自身の長年の夢を取るか瑠衣との愛を取るか?かなり悩んだ上で決断しようとするのに対して、オリジナル版の主人公ヘンリーは実にあっさりと、自分の夢よりもルーシーとの愛を選択する。そのためラストでルーシーが取る選択に至るまでの二人の苦労や紆余曲折の描写が足りないため、彼女にとっても苦渋の選択なのだという感じがどうも伝わりにくいのだ。その点日本版では長澤まさみの見事な演技により、大輔の将来を思っての彼女の選択の苦悩が観客にも共感出来て実に見事!

終始ドライな感じが強かったオリジナル版の雰囲気を、日本人向けにいい感じでウエットな物にすることで、安心して泣いて笑って感動出来る一級のエンタメ作品に仕上げている本作。オリジナル版を未見の方でも全く問題なく楽しめる作品なので、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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