『アントマン』は日本人好みのマーベル・ヒーロー!

■「キネマニア共和国」

スパイダーマンにアイアンマン、ハルク、キャプテン・アメリカなどなど、マーベル・コミックから生み出されたヒーローたちは、今や日本でも大人気。そんな中、また新たなマーベル・ヒーローが登場します……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街 vol.28》

史上最少のヒーロー『アントマン』、ついに日本上陸!

小さなヒーローの正体は、ダメダメな父親⁉

アントマン

『アントマン』とは、その名のごとく蟻のように小さなヒーロー。今から50年ほど前にマーベル・コミックに描かれた1.5センチメートルのヒーローを原作としています。

主人公は仕事も何もうまくいかず、妻子に去られてしまった運のない男スコット。
養育費も払えない彼は、ワルな仲間たちの誘いに乗って、とある豪邸のセキュリティを解除する悪い仕事に手を染めてしまうのですが、そこで何と小さな体に縮んでしまうスーツを盗んでしまったことから、運命が大きく変わり始めていきます。
スーツの持ち主はハンク・ビル博士。40年前に身体を縮小させ、超人的パワーを得ることができるビム粒子を開発した博士は、悪用を恐れて発明の事実を隠ぺいしていたのですが、元助手ダレンがこの発明をわが物にしようと企んでいることを知り、スコットにスーツを委ねるのでした。
アントマン
このアントマン、従来のマーベル・ヒーローに比べて、キャラ設定が日本人向きのような気もします。

日本では仮面ライダーなどのように悲しみを背負った正義の味方をヒーローとして讃えがちですが、これがアメリカになると、アイアンマンは軍需産業の社長だし、ハルクは制御不能の緑色の怪物、キャプテンアメリカは国家の威信を背負いすぎて息苦しそうな感も否めず……。

それに比べると、今回のスコットは転落人生にあえぎながらも、自分のことをずっと好いていてくれる愛娘キャシーのために立ち直りたいと願い続けている一般庶民であり、無職でバツイチといった悲哀も含めてどこかシンパシーを抱き、応援したくなるような要素が多分にあります。

また、日本にもかつてミクロマンなるヒーローがいましたので、本作の設定もどこか馴染みやすい部分があるのではないでしょうか。

アントマンとアリたちの驚異的タッグ!

アントマンはアリを仲間にし、彼らを用いて移動しますが、羽根アリに乗って空を飛んだり、膨大なアリたちが大波となって、まるでサーフィンに乗るかのようにアントマンが縦横無尽に移動するCGショットは圧巻の一言。
このシーンを見るだけで、入場料金のもとが取れるといっても過言ではないほどに、海の向こうの驚異的映像技術に圧倒されることでしょう。

さらにはアントマンと敵との対決もスリリングかつユーモラスな情緒がどことなく漂っており、なかでも娘キャシーの部屋でのバトルで、レールを走るオモチャのきかんしゃトーマスに轢かれかけたりする趣向など、小さいヒーローならではの微笑ましいピンチ・ショットで、またキャシー役の女の子の可愛らしいこと! こりゃお父さん張り切るのも当然! といえるキャステイングです。

キャスティングということでは、今回やはり特筆すべきはアントマン・スーツを発明したピム博士役をマイケル・ダグラスが好演していることで、これまでファンタスティック・ジャンルにはあまり縁のなかった大スターが、こういったものに喜々として出演してくれているのは、ジャンル・ファンとしても非常に嬉しい限りです。

もちろん主人公に扮したポール・ラッドも、どこかコミカルなたたずまいとヒロイックな情緒を巧みに両立させています。またマイケル・ペーニャなど彼の仲間たちもなかなかのコンビネーションで魅せてくれています。
Ant-Man-Trailer-001
監督は『チアーズ』(00)『恋は邪魔者』(03)などコメディに定評あるペイトン・リード。本作の微笑ましい笑いとダイナミックなバトル描写の融合は、この才人ならではのものともいえるでしょう。

最近、監督の顔が見えないハリウッド大作が多い中で、これは確かに個性が大いにうかがえる作品ちおなっています。

いずれは“アベンジャーズ”の仲間入りもしてくれるであろう小さなヒーロー、アントマン。

早めにチェックして、なじんでおいてください。

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(文・増當竜也)

映画『アントマン』は20145年9月19日(土)全国ロードショー
公式サイト http://marvel.disney.co.jp/movie/antman.html

(C)Marvel 2015


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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