『ロープ 戦場の生命線』は2018年早々ベスト・テン級の傑作だ!

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見出しに偽りなし、2018年、早くも今年のベスト・テン入り必至の傑作を見てしまいました。

いや、実は見たのは昨年の秋だったのですが、もう早く紹介したくてしたくてたまらなかった!

もう待ちきれないから、とっとといきましょう!

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.288》

ベニチオ・デル・トロ、ティム・ロビンスら出演の『ロープ 戦場の生命線』です!

たった1本のロープを探すため
危険地帯を潜り抜けていく者たち

『ロープ 戦場の生命線』の舞台は、1995年停戦直後のバルカン半島です。

ある村の井戸に死体が投げ込まれ、生活用水が汚染されてしまいました。

国際援助活動家グループ“国境なき水と衛生管理団”のメンバーが死体を引き上げようとしますが、運悪くロープが切れてしまいます。

替えのロープは近くにありません。

やむなくメンバーらは1本のロープを求めて、武装集団が徘徊し、地雷が埋まる危険地帯を潜り抜けていくことになるのです!

たった1本のロープを探すという、これだけのモチーフでスリリングかつデンジャラス、そして冒険心に満ち溢れたサスペンス&ヒューマン反戦映画が作れてしまうという、映画の奇蹟を目の当たりにしたかのような傑作です。

“国境なき水と衛生管理団”のメンバーに扮するのは『トラフィック』(00)『ボーダーライン』(15)のベネチオ・デル・トロをはじめ、『ショーシャンクの空に』(94)『ミスティック・リバー』(03)のティム・ロビンス、『007慰めの報酬』(08)『オブリビオン』(13)のオルガ・キュリレンコ、『海の上のピアニスト』(98)『ゼロの未来』(13)のメラニー・ティエリー。

加えて『チャイルド44 森に消えた子供たち』(15)のフェジャ・ストゥカンや『パンズ・ラビリンス』(06)のセルジ・ロペスなど国際級演技派名優が勢揃い。

監督はデビュー作『カット!』(96)でスペイン・アカデミー賞=ゴヤ賞最優秀監督賞を、『月曜日のひなたぼっこ』(02)でゴヤ賞作品&監督賞など5部門を制覇したスペイン映画界の俊英フェルナンド・レオン・デ・アラノアが務めています。

これから戦争を描く映画の
道しるべになるべき傑作

本作は第30回ゴヤ賞で最優秀脚色賞を受賞。

また第68回カンヌ国際映画祭では監督週間正式出品作品として披露され、上映終了後は10数分におよぶスタンディング・オベーションが起きたとのこと。

本作の素晴らしいところは、武器を持つことなく戦場を駆けずり回る国際援助活動家たちの奮闘を通して、戦争の愚かさはもとより、どこか滑稽な人間の業そのものまで活写しているところにあるでしょう。

シンプルに研ぎ澄まされた脚本と、快調なテンポがもたらす緊迫感、それでいてどこかしら映画全体に漂う大らかなゆとりは、見る者をグイグイと戦場の狂気へいざなってくれます。

ロープを求めてメンバーが通過していくひとつひとつのエピソードも淡々としつつ衝撃的なものばかりで、またサッカーボールなどのアイテムも上手く劇中に活かされています。

本作にはいわゆる戦闘シーンはありませんが、それゆえに戦争の狂気を見事に醸し出すことに成功している事実も見逃すことはできません。

思えば戦争を扱った映画の中には、戦闘シーンを苛酷に、壮絶に、残酷に描くことで反戦性を打ち出すものも多く見受けられますが、逆にそれがアクション・スペクタクルとしてカタルシスを与えてしまう一面もあり、どこかでショーと化してしまっている懸念を感じないでもありません。

いわゆるアクションものと割り切って楽しむ類の戦争映画は、それはそれでよしとして、やはり反戦色を明確に打ち出すためには戦闘シーンを描かないほうが効果的だと、本作を見ながら改めて痛感させられた次第です。

その意味も『ロープ 戦場の生命線』は、これからの戦争を描く映画の大きな道しるべともなるべき作品でしょう。

論より証拠で、まずはご覧になってみてください。

今年、これを越える作品が現れるかどうか!?

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(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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