『アクアマン』大成功の「3つ」の理由とは?時代遅れのヒーロー復活の要因を全力で語る!

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映画『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』、『ジャスティス・リーグ』への出演を経て、遂に単独主演作品として登場したDCコミックスの海のヒーロー、アクアマン!

バットマンやスーパーマンなどのDCコミックスのメインキャラクターに比べて、日本では決して知名度が高いとは言えないヒーローだけに、その内容と興行成績が注目されていた本作。

先に公開された本国アメリカでの大ヒットを受けて、いよいよ2月8日から日本でも公開が始まったのだが、果たしてその出来と内容は、どうだったのか?

ストーリー

海底王国アトランティスの末裔であるアクアマン(ジェイソン・モモア)は、人間として育てられた。ある日、彼はアトランティスが人類の支配を目的とした侵略を始めたことを知る。人類の想像をはるかに超える文明を持つアトランティスの強大さを知る彼は、海を守るべきか地上を守るべきかの選択を迫られることになるのだが…。

予告編

アクアマンとは何者か?そのヒットの理由とは?

公開前の予想や不安を吹き飛ばすかの様に、先日公開されたアメリカで大ヒットを記録した、映画『アクアマン』。

最高に面白い映画に仕上がった本作の魅力、それは何と言っても、豪快で細かいことに悩まないアクアマンのキャラクターにある。例えるなら、WWEのアメリカンプロレスを大スクリーンで鑑賞する喜びと興奮! といったところだろうか。

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原作コミックスでの初登場が実に1941年と、DCコミックスの中でもスーパーマンやバットマンと並ぶ古参のヒーローだったアクアマン。

他のスーパーヒーローとは違う“海のヒーロー”としての独自の世界観で人気を集めたアクアマンだったが、60年代終盤以降の社会情勢の変化には対応できず、その現実離れした設定やコスチュームにより、次第に読者やコミックファン離れを引き起こすことになってしまう。

人気低迷と販売部数低下へのテコ入れとして、何度かその誕生秘話や設定が変更されているアクアマンだが、今回の映画版で基になっているのは、2011年の大イベントである「THE NEW 52!」以降のリニューアルされた設定。しかし、その外見やキャラクター設定は映画とコミックスで大きく異なっている。

後述する様に、実はアメリカ本国においても時代遅れの存在としてジョークや笑いの対象にされたり、他のメジャーなヒーローに比べて軽く見られていた、このアクアマンというスーパーヒーロー。それでは、何故この映画版が今回の様な爆発的ヒットとなったのだろうか?

理由1:微妙なキャラクター問題を見事に解決!

アクアマンの最大の問題点は、やはりそのビジュアルと設定の特異さにある。

なにしろ海中が舞台なので、地上で他のヒーローたちと共闘する際には意外に活躍が難しく、脇役として微妙な立ち位置になってしまうからだ。

しかも原作コミックにおいては、地上で活動する時は1時間毎に水に触れないと死んでしまう!という弱点が設定されていたため、地上や宇宙で活動する他のヒーローに比べて、どうしても“弱い・地味”といったイメージが強かったのも事実。

こうして、子供たちに夢を与えるスーパーヒーローたちの中にあって、50~60年代には違和感の無かったアクアマンの設定やコスチュームも、70年代に入り現実的な問題を扱う様になったコミックス界では、もはや時代遅れの存在として急速に笑いやパロディの対象になってしまうことになる。

これを打開するため、アクアマンのキャラクターを時代に合わせて現実的でハードな内容に変更する方針が取られ、メラとの間に生まれた子供がブラックマンタに殺されたり、ブラックマンタによって左手を失ったアクアマンがその手に銛を装着したり、長髪・ひげ面のワイルドなキャラクターへとイメージチェンジするなど、様々なリニューアルが図られることに!

更に、2006年には全く別人の二代目アクアマンが登場し、二人のアクアマンが共演することになるのだが、結局初代のアクアマンが死亡する!という、文字通り怒涛の展開を見せることになる。

ところが、こうした原作コミックス内での急激な方針転換は、かえって読者の混乱を生むことになってしまい、もはやこの時点では完全にアクアマンというキャラクターがその方向性を見失ってしまい、非常に微妙なキャラクターになってしまった、そう言わざるをえない状況に陥っていたことがよく分かる。

こうした厳しい状況を受けて、2011年の「THE NEW 52!」で見事にアクアマンをリニューアルさせたのが、今回の映画版でもストーリーと製作総指揮を担当しているライターのジョフ・ジョンズであり、彼の存在が本作の成功に及ぼした影響は、極めて大きいと言える。

アクアマン:アトランティスの王(THE NEW 52!) (ShoPro Books THE NEW52!)

実はこうした世間のアクアマンに対する微妙なイメージを証明する描写が、2011年に「THE NEW 52!」シリーズとして発行された、リニューアル版の「アクアマン」第1号にも登場している。

車で逃走中の銀行強盗の前に、例のコスチューム姿で現れたアクアマン。だが、警察官たちには「アクアマンが、何してるんだ?ここは海でもなきゃ、辺りに魚もいないってのに…」と言われるし、銀行強盗たちにも「ツナマン?轢いちまえ!」とバカにされてナメられる始末。

もちろん、そのスーパーパワーで銀行強盗を撃退し警察に引き渡すのだが、ここでも警察官たちに、「こんなとこに何の用だね?アクアマン」とか、「水が要るだろ?コップ一杯で足りるかね?」などと言われてしまうのだ。

これに対して「結構だ」と冷静に答え、超人的なジャンプ力でビルの彼方へ姿を消したアクアマンに向かって、更に追い打ちをかけるように警察官たちが言うセリフ、「おいおい、無視されちまったよ、アクアマンに」「署の連中に話して聞かせたら、笑い死にしかねないな」が残酷に響く。

更にこの号では、事件の後に立ち寄ったカフェで物思いにふけるアクアマンに対して、一般市民からの容赦ない偏見に満ちた質問が、彼にぶつけられる描写が続くことになる。

2011年時点ですら、これほどの低い認識でしかなかったアクアマンのキャラクター。

実は今回の映画版で基本となっているのは、DCユニバース再編の大イベント「THE NEW 52!」シリーズ以降の設定なのだが、アクアマンの外見はそれ以前のものを踏襲しており(「THE NEW 52!」のコミックスでは長髪・ひげ面では無く、コミックス初期の金髪イケメンに描かれているのだが、映画版では初期の優等生的イメージから大きく方向転換した際の、長髪・ひげ面のワイルドなイメージを踏襲している)、更に誕生秘話も映画オリジナルのものに変更されているなど(原作ではアトランティスの王女と魔術師との間に生まれ、その後追放されたために燈台守の地上人アーサー・カリーに育てられ、彼の名前を名乗っている)、ジョフ・ジョンズにより映画版に合わせたベストのアレンジが施されている点は、本作成功の大きな要因と言えるだろう。

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片手に銛を付けたアクアマンと、「THE NEW 52!」以降のアクアマンとの外見のギャップは想像以上に凄いので、映画を見てアクアマンに興味を持たれた方は、是非原作コミックスで一度見比べて頂ければと思う。

理由2:微妙なコスチューム問題を見事にクリア!

前述した通り陸上では自由に活動できない上に、魚と会話が出来たり、巨大な“タツノオトシゴ”に乗る!という設定から、70年代以降は半ば笑いのネタにされていたアクアマン。

中でもそうしたイメージの要因となったのが、彼のコスチュームデザインだった。

同じDCのヒーローたち、例えばバットマンの様に威圧感やクールさを感じさせる物でもなく、スーパーマンの様に人々のシンボルとなるマークも無いそのコスチュームは、コメディアンやテレビ番組で笑いのネタにされることが多く、時代の流れの中で次第に時代遅れでカッコ悪いものとなってしまった感が強い。

更に、海中では常にあのコスチュームでいるため、バットマンやスーパーマンなどのメインキャラクターの様に、ヒーローとその正体という二面性が不足していた点も、不利に働いたのではないだろうか。

もちろん今回の映画化において、『X-メン』や、リブート版の『ファンタスティック・フォー』のように、ヒーローの顔とも言えるコスチュームを、よりリアルで機能的なデザインに変更するという選択肢もあったはず。

ところが、あえて本作では原作コミックスのコスチュームに非常に近いデザインで登場するにも関わらず、これが実にカッコいいのだ!

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もちろんこれは、ストーリーと製作総指揮を担当したジョフ・ジョンズと、後述するジェームズ・ワン監督の演出によるところが非常に大きいのだが、それでは、原作では時代遅れに感じられたあのコスチュームが、何故映画ではあれほどカッコよく見えたのだろうか?

その理由は、自身のアイデンティティを確立するために努力と苦労の末に獲得した物、そして王の証として、アクアマンのコスチュームを終盤に登場させた点!これに尽きる。

前述した様に一般的にマイナスイメージの強かったコスチュームを、今回の映画版ではあえて終盤まで登場させず、その間はアクアマンが私服で暴れまわるため、まるで『ワイルド・スピード』の様な筋肉アクション映画として楽しむことが出来るのが、まず上手い!

更に映画の終盤で、遂に歴代の王の遺産である武器“トライデント”を手に入れたアクアマンが、王になった証として原作通りのコスチュームで現れるという演出が、この時代遅れのヒーローを豪快でカッコいい存在としてスクリーンに甦らせている点は、実に見事としか言いようがない。

アーサー・カリーが、遂にアクアマンとして観客の前に姿を現すシーンの興奮は、是非劇場でご確認を!

理由3:ジェームズ・ワン監督の気配り演出が凄かった!

思えば過去のアメコミ映画で不満だったのが、ラストの戦いがCG全開で派手な見せ場となるのはいいが、誰が何をやっているのか、誰と誰がどこで戦っているのか?その辺の位置関係が観客に判り難いという点だった。

その点、今回のジェームズ・ワン監督の演出は、離れた二人がそれぞれ闘っている位置関係を一目で観客に分からせ、しかも彼らを追う敵の位置も同時に分からせるという、正に観客に対する気配りに満ちた、親切設計の演出になっているのが凄い!

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思えばこうした演出の冴えは、あの名作『狼の死刑宣告』での駐車場シーンでも披露されていたのだが、今回の様な超大作映画でも観客のことを決して忘れない、彼の“気配り演出”のお蔭で、最後まで安心して観ていられるのだ。

特に映画の中盤、アクアマンとメラ、それにアトランティス兵士が三つ巴の戦闘を繰り広げながら、建物の屋根の上を延々移動していくアクションシーンでのカメラワークは、正に必見の名シーンとなっているので、お見逃しなく!

最後に

公開前の予想や不安要素を覆し、本国アメリカでも大ヒットを記録した映画『アクアマン』。

個人的に今回の映画版大ヒットの要因として挙げておきたいのが、原作コミックスにも登場する名悪役、ブラックマンタのコスチュームの見せ方だった。

原作でもアクアマンと非常に深い因縁を持つブラックマンタだが、その異様に大きなヘルメットというコスチュームデザインだけに、いきなり登場すると観客の失笑や違和感を買いかねない不安を含んでいるのだが、ここでもジェームズ・ワン監督の名演出が、この問題を見事に解決してくれることになる。

映画の中では、アトランティス兵の戦闘用スーツを改造・パワーアップした結果、目の部分から出るビームの出力にヘルメットが耐え切れない、という描写と、「もっと大きなヘルメットが必要だ」とのセリフを挿入することで、コミックスに登場するあの独特なデザインのコスチュームに対する違和感を消すという効果を生んでいるからだ。

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前述の通り原作コミックでは、アクアマンとメラの間に生まれた子供が、ブラックマンタによって殺されてしまう!という衝撃の展開を見せるのだが、果たして続編ではその辺りがどう展開するのか?

更には、残る『ジャスティス・リーグ』メンバーのフラッシュやサイボーグの単独主演作品が、果たして『アクアマン』に匹敵するヒットとなるのか?

いや、それ以前に4月公開の『シャザム!』の明るい世界観が、観客にどう受け入れられるのか?

まだまだ興味や期待は尽きないところだが、これらのDCコミックス映画化作品の成績によっては、現在のマーベル映画優位の状況が一気に逆転する可能性もあるだけに、まずはこの『アクアマン』大ヒットの意味は非常に大きいものがあると言えるだろう。

アメコミファンでなくとも、『バーフバリ』並みの筋肉アクション映画として十分に楽しめる本作、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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