『ブリグズビー・ベア』が大傑作である5つの理由!『スター・ウォーズ』のあの人が誘拐犯にキャスティングされた理由とは?

(C)2017 Sony Pictures Classics. All Rights Reserved.

6月23日より、映画『ブリグズビー・ベア』が公開されます。クマの着ぐるみのビジュアルは正直に言ってかなり怪しく、パッと見ではイロモノっぽい映画に思えるかもしれませんが……そのイメージだけで判断するのはあまりに勿体無い! 2018年の映画の中でベスト10入りすることは確実、“まさか”の感動のドラマが繰り広げられる、大傑作と言っても良い、素晴らしい映画だったのですから!

本作はサンダンス映画祭やカンヌ国際映画祭に正式に出品され大きな話題を呼び、ナショナル・ボード・オブ・レビューではインディペンデント映画TOP10を受賞、プロヴィンスタウン国際映画祭では新人監督賞を受賞しました。評価そのものも高く、映画情報サイトIMDbでは7.4点、Rotten Tomatoesでも81%を記録しています。

何より、(詳しくは後述しますが)“1つでも大切にしている映画がある人”が観ると、もう号泣ものの感動が訪れる内容でもあるのです。普段あまり映画を観ないという方も“(映画を愛するという)大切な価値観”に気づくことができるでしょう。

そんな『ブリグズビー・ベア』の魅力がどういったところにあるのか、またどういった内容であるのか? 大きなネタバレのない範囲で、以下よりたっぷりと紹介します!

1:主人公は25年に渡り監禁され、謎の教育番組を観せられ続けていた!

まず、プロットそのものが特異なものになっています。主人公の青年は小さなシェルターで両親と3人で暮らしており、毎週ポストに届く教育ビデオ「ブリグズビー・ベア」を観て育っていたのですが……突如としてその暮らしは終わりを迎えます。実はその両親というのが、赤ん坊の頃に主人公を誘拐した上に、25年間に渡り彼を監禁していたニセモノの両親だったのです。

それだけでも十分に変わった映画なのですが、本番はここから。主人公は外界から遮断された場所でずっと暮らしていたので、当然“世界”のことをほとんど知りません。彼が本物の両親と出会い、どのように世界を知っていくか、そしてどのように生きていくか、それが見どころになっているのです。

ここまでで、映画『ルーム』を思い出す方も多いでしょう。ある一定の価値観しか教えられず、それ以外のことを知らなかった者が、世界(あるいは私たちが普段から親しんでいて新鮮味がなくなっていること)の喜びを知り、驚き、感動していく……それだけでも面白いのですが、『ブリグズビー・ベア』ではそれだけでは終わらない、多層的な要素を持っていました。

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2:『ニュー・シネマ・パラダイス』のような映画愛が炸裂! “映画作りをする映画”だった!

本作のもう1つの大きな見どころは、主人公たちが“映画制作”に乗り出すということでしょう。

主人公は外界に出てきてから初めて映画館で映画を鑑賞し、その面白さに大興奮します。世界にはさらにたくさんの映画があるのですが、彼が最も観たいのは長年に渡り愛し続けていた教育番組「ブリグズビー・ベア」であることは変わりません。しかしながら、その新作はとある事情によりもう観られなくなっています。じゃあどうするか、と考えた結果「映画版を自分たちの手で作ろう!」という流れになるのです。

主人公は初めての友人をつくり、大人の助けも借りて、脚本を練り上げて、実際に撮影を始めます。その映画制作の過程そのものが微笑ましく、彼らの姿が羨ましくなってくるでしょう。もちろん技術は素人なので見た目は安っぽいのですが、その“情熱”は本物です。これは、『ニュー・シネマ・パラダイス』や『SUPER8/スーパーエイト』のような、映画への愛に溢れた“映画作りをする映画”でもあるのです。

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3:“好きな映画を肯定できる”物語だった

描くのは映画作りの“喜び”だけではない、ということも本作の重要なポイントになっています。

本当の父親は25年間も会えなかった息子との時間を取り戻そうとしているのですが、主人公は父からの提案を退け、映画作りに没頭していきます。それだけならまだしも、作ろうとしているのがよりによって“息子との時間を奪った元凶(誘拐犯)が観させ続けていた教育番組”の映画版なのです。父親がそのことに嫌悪感を覚えるのも無理はありません。

それでも、本作では“映画を作ること”を究極的には否定しません。過程や事情はどうあれ、その人にとっては“大切な作品である”という揺るぎない価値観を提示しているとも良いでしょう。(ここにこそ“1つでも大切にしている映画がある人”が感動できる理由があります)

また、劇中で作られる映画版「ブリグズビー・ベア」は、世の中にある“不祥事や犯罪行為が関わった映画”のメタファーになっているとも言えます。例えば、ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラおよび性的暴行、『ゲティ家の身代金』に出演したケヴィン・スペイシーが性犯罪を告発され急遽降板したことなど……残念ながら、現実ではそうした事例が数多くあります。“作品と不祥事は関係がない”と思おうとしても、なかなかそうは割り切れないですよね。

本作はそうした“劇中の内容と関係ないところで問題を抱えてしまった映画”への向き合い方について、とある“答え”を用意していました。ネタバレになるので詳しくは書けないのですが、終盤に主人公が誘拐犯(ニセモノの父親)に会いに行く“理由”、そしてその時の“会話”が、まさにその答えになっているのです。

何かの不祥事のせいで、好きな映画についてモヤモヤした気持ちを抱えてしまったという方は多いでしょう。この『ブリグズビー・ベア』を観れば、「映画そのものは好きなままで良いんだ」と、気持ちを楽にできるはずですよ。

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4:誘拐犯役は『スター・ウォーズ』のあの人! そのキャスティングの理由とは?

本作は極めて低予算のインディペンデント映画ですが、とあるスター俳優がキャスティングされています。それはなんとマーク・ハミル。ご存知『スター・ウォーズ』シリーズのルーク・スカイウォーカーだった彼が、なんと誘拐犯(ニセモノの父親)を演じているのです。

主演及び共同脚本を務めたカイル・ムーニーによると、マーク・ハミルをキャスティングしたのは「ナレーションの高い声ができる」「自分の世界を持っている変人で普通では思いつかないことをやれる」というのが理由だったのだとか。デイヴ・マッカリー監督も、マーク・ハミルについて「彼を知っている人は、優しくて愛に満ちた人だけど、風変わりで奇抜な人ということもわかっている」と語っています。

つまり、『スター・ウォーズ』シリーズの劇中でとんでもないことをやり遂げていたルーク・スカイウォーカーのヒーローとしてのイメージが、その真逆とも言える今回の誘拐犯役にも生かされているということです。許されざる犯罪者であることは間違いないのですが、誘拐してきた主人公にある種の愛情を注いでいるようにも、確固たる信念を持っているようにも見えるのですから。マーク・ハミルが演じることによって、“悪人であるけれど、それだけではない”キャラクターの奥行きが与えられていると言っても良いでしょう。

公開中の『万引き家族』もそうですが、誘拐犯(子供を連れて帰ってしまった人)を記号的な悪人にせず、その心理や価値観が丹念に描かれているということも賞賛に値します。もちろん犯罪者の心理など知りたくない、誘拐犯に同情の余地などないという方もいるでしょうが、本作での犯罪行為そのものは決して肯定されることはないので、溜飲は下げることができるでしょう。

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5:『スター・トレック』のファンは苦笑い? 映画ネタも見逃さないで!

劇中では『スター・トレック』ファンの青年が、主人公の初めての親友として登場します。面白いのは、劇中の教育番組「ブリグズビー・ベア」が(25年も続いたために)凄まじい本数が作られたことを知ったその親友が、苦虫を噛み潰したような、もしくは困惑したかのような表情を浮かべたことです。

なぜかと言えば、『スター・トレック』シリーズもまた、とんでもないボリュームがあるからでしょう。何しろ、そのテレビシリーズは5シリーズに及び、劇場用映画は13本も作られ、トータルでは720作品を超えているのですから。このシーンは『スター・トレック』のファンであればあるほど、(劇中の親友と同様の)苦笑いを浮かべてしまうでしょうね。

また、巨大で不気味な顔が描かれている月は、おそらく世界初のSF映画とされる『月世界旅行』のオマージュでしょう。この月が劇中でどんな役割をするのかは、ネタバレになるので秘密にしておきます。探してみると、他にも有名な映画ネタがあるかもしれませんよ。

おまけ:この“映画作りをする映画”も観て欲しい!

ここでは、『ブリグズビー・ベア』と同じく映画愛に溢れた、5つの“映画作りをする映画”を紹介します。『ブリグズビー・ベア』と合わせて観てみるのもおすすめですよ。

1:僕らのミライへ逆回転

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レンタル店のVHSテープの中身が消えてしまったため、急ごしらえで代わりの自主制作映画を作ってしまい、それがかえって評判になってしまうというコメディです。“リメイク”されるのは『ゴースト・バスターズ』や『ラッシュアワー2』や『ライオンキング』などなど。その出来栄えはもちろんチープなのですが、「これはこれで楽しいな」と思えるアイデアが詰め込まれているので、ほっこりと笑顔になれるでしょう。

この映画が感動的なのは、元々は“誤魔化すため”だった映画作りが、やがて情熱に変わり、映画そのものはもちろん、住んでいる街への愛情に変わっていくということ。“身近なものを愛する”ということは、普段はなかなか気づきにくい豊かな価値観であるのかもしれませんね。

2:地獄でなぜ悪い

地獄でなぜ悪い

気弱な青年と、映画バカたちが、なぜかヤクザと手を組んで映画作りをすると言う破天荒な物語です。PG12指定止まりであることが信じられない、血しぶきや残酷描写の“サービス”が満載で、そのハチャメチャさも含めて極めて好き嫌いが分かれる内容になっていました。

登場人物それぞれが怒号を飛ばしまくり、“二度と忘れられない映画”の制作を目指すと言う、映画好きの、映画好きによる、映画好きのための映画です。我こそは映画ファン、と言う方はとんでもないクライマックスを観て涙が止まらなくなるかもしれませんよ。

3:エド・ウッド

エド・ウッド (字幕版)

“史上最低の映画監督”として名高い、エド・ウッドを主人公とした映画です。彼が作っている映画は確かに最低のクオリティなのですが、その情熱は反比例するかのように最高です。全編に渡り主人公の「映画が大好きなんだ!」という気持ちが伝わってくることでしょう。

その情熱があるのに、なぜ史上最低の映画監督と呼ばれるのか……それは“妥協しすぎ”という1点ですぐに納得できます。誰がどう観ても重大な問題があるのにも関わらず、「観客はそんなこと気にしないよ」と正当化しまくっているのですから。観た後は、反面教師的に世の中の映画監督がどれだけ厳格であるかが理解できるでしょうね。“友情の物語”としても、なかなか泣けるものがありますよ。

4:リトル・ランボーズ

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娯楽を禁じられた家庭に育った主人公の少年が、素行の悪い少年の家で観た『ランボー』に感動し、彼が“ランボーの息子役”になった自主制作映画を撮り始めるという物語です。『スタンド・バイ・ミー』のようなジュブナイルものの面白さ、『ニュー・シネマ・パラダイス』のような映画愛を一度に感じられる贅沢な内容になっていました。

ちなみに、監督本人も11歳の頃に友人と『ランボー』のような映画を作り始めていたことがあったそうです。作り手の実体験が、そのまま映画に現れているというのも素敵ですよね。

5:カメラを止めるな!

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こちらは『ブリグズビー・ベア』と同日、6月23日より公開される映画です。その特徴を詳しく書くとネタバレになってしまうのですが、とにかく“映画愛に満ち満ちていて”、“ものづくりの楽しさがいっぱいで”、“笑って泣ける最高のエンターテインメント”であるということだけはお伝えしておきます! 『カメラを止めるな!』と『ブリグズビー・ベア』を合わせて観ると、「映画って本当に素晴らしい!」という認識を新たにできるはずですよ。

※『カメラを止めるな!』を詳しく解説した記事はこちら↓
□『カメラを止めるな!』を絶対に観るべき8つの理由!ゾンビ映画最高傑作にして大感動ファミリー映画だ!

まとめ:誠実さ”を訴えている映画だった

デイヴ・マッカリー監督は『ブリグズビー・ベア』について「親切になる方法、親身になる方法、誠実になる方法、そして人々をその人の過去で判断してはいけないということを描いたつもりです」と語っています。

まさにその通り、本作は“誠実さ”を訴えている一方、その人の過去だけで判断してしまう“偏見”の危険性をも描いています。同時に、“家族との向き合い方”をも学ぶこともでき、暗い過去から脱却して未来への希望を手にするという前向きなメッセージも込められているのです。

特異とも言える物語の発端から、ここまで普遍的に、心に響く、誰もが感動できる映画になるとは、いったい誰が予想したでしょうか? もうこれ以上は言うことはありません。ぜひ映画館で、号泣必至のドラマを見届けてください!

※『ブリグズビー・ベア』と同様の監禁・失踪を描いた映画はこちらの記事も参考にしてみてください↓
□独断と偏見!監禁・失踪映画ベスト10!

(文:ヒナタカ)

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