災害の多い日本人は『バーニング・オーシャン』のようなパニック映画は見ておくべきだ!

■「キネマニア共和国」

バーニング・オーシャン ポスター

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天災や人災による未曽有の事態に人々の運命が翻弄されていくパニック映画。かつて1970年代や90年代に大流行したこのジャンル、そのほとんどはフィクションとして作られてきましたが……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.226》

海底油田掘削施設の大火災を扱った『バーニング・オーシャン』は、何と実話の映画化なのでした!

1970年代と90年代の火災パニック映画の流れ

まずは火災を扱ったパニック映画の流れをざっとおさらいしておくと、やはりその筆頭は『ポセイドン・アドベンチャー』(72)で世界中にパニック映画ブームを巻き起こした大プロデューサー、アーウィン・アレンが製作した『タワーリング・インフェルノ』(74)でしょう。
超高層ビル大火災を扱ったこの超大作、ジョン・ギラーミン監督の空間を活かしたダイナミックな演出と、スティーヴ・マックイーン、ポール・ニューマンをはじめとするオールスター・キャストの魅力によって、今なおパニック映画の金字塔と謳われて久しいものがあります。

そう、70年代パニック映画の特徴には、往年の大スターをフルに登場させた豪華グランドホテル形式のドラマ構成がなされていることが挙げられます。

『タワーリング・インフェルノ』の後、火災パニックものは『燃える超高層ビル/ファイヤー・インフェルノ』(74)など主にテレビ・ムービーで量産されていきますが、このジャンルの中でも「火」というものはよほど人を引き付ける何かがあるのか、火災を扱うものは常に視聴率も良かったようで、その中でも山火事を扱った『大火災』(77)のように日本では劇場公開されたものもあります。街中の下水に石油が流れ込んで都市そのものが炎に包まれる『シティ・オン・ファイア』(79)も、もともとはTVムービーとして企画されたものが、結果としては劇場公開されたものだと聞いています。

そして、これらの多くの作品はオールスター・キャストでした(私ら70年代パニック映画の世代は、こうした作品群を通してハリウッド・スターの名前を覚えたものです)。

これが消防士兄弟の絆を軸にした『バックドラフト』(91)の大ヒットあたりが導火線となったか、90年代に入ってパニック映画は再びブームとなりますが、竜巻観測チームの行動を描いた『ツイスター』(96)や地下トンネルに閉じ込められる『デイライト』(96)、大火山噴火『ダンテズ・ピーク』(97)、街中をマグマが覆いつくす『ボルケーノ』(97)など、オールスター・キャストよりも特撮技術の進化に伴うダイナミックな画の描出に力が注がれていった感があります。

「オールスター・キャストの70年代のパニック映画よりも、まだそんなに有名ではない俳優ばかり出ている90年代パニック映画のほうがリアリティがある」と、90年代に映画の洗礼を受けた当時の若い映画ファンと、「いや、オールスターの豪華絢爛さと大災害の未曽有の恐怖がミックスしてこその“映画”のダイナミズムなのだ」と説く70年代の映画ファン。かつては双方で飲みながらよく議論になったものですが、今の若い映画ファンにはどちらも「過去の映画」として良くも悪くも一緒に観られているのかもしれませんね。

バーニング・オーシャン メイン

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実話を基にしたパニック映画ファン必見の『バーニング・オーシャン』

さて、パニック映画ファンとしては久々のお楽しみとなる『バーニング・オーシャン』ですが、これは2010年4月20日、メキシコ湾沖の石油掘削施設“ディープウォーター・ホライゾン”で起きた原油流出及びそれに伴う大火災事件を再現したものです。

(余談ですが、ケン・ノートン、トニー・バートン、ビリーディ・ウィリアムスなど黒人スターが多く登場する海底油田火災を描いた86年のパニックTVムービー『爆発!海底大油田(テレビ放映時のタイトルは『ザ・ダイバー 炎の脱出)』もあります。監督はマニアならご承知、超高層ビル建築に命を懸ける男たちの心意気を描いた名作『超高層プロフェッショナル』のスティーヴ・カーヴァー。こちらもダイバーたちの心意気や危機に力を注いだものでしたが、TV映画ゆえか、火災シーンは控えめでした)

掘削作業が遅々として進まない中、石油会社から派遣されている管理職の独断で安全確認テストを省略したまま強制稼働が命令されます。

そしてその夜、大量の原油が逆流して施設全体に噴出、引火して大爆発が……!

バーニング・オーシャン サブ

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今回のキャスティングは、マーク・ウォールバーグやカート・ラッセル、ジョン・マルコヴィッチ、ディラン・オブライエン、ケイト・ハドソンといったスター勢と実力派の脇役陣とのバランスを保った70年代と90年代の良いところどりといった布陣。

実際、この事件は石油会社側の人災といってもよいものですが(どこか『JAWS』パターンの流れでもありますが、結局資本側は虚構も事実もさほど考えることに変わりなしといったところでしょうか?)、その管理職ヴィドリン役に個性派名優ジョン・マルコヴィッチを配し、また彼も一切悪びれず会社の命令を忠実に守ろうとする人間として演じ切っています(しかし、だからこそ見ている側からすると憎々しさも倍増するのも事実で、そこに彼のしたたかな計算が合ったのかもしれません)。

監督は『バトルシップ』(12)のような虚構の洋上アクションから『ローン・サバイバー』(13)のような実話の戦闘ミッションまで縦横無尽に扱うことに長けたピーター・バーグ。

今回は事故に至るまでの人々の確執を丁寧すぎるほどに描き、そしていよいよ後半は施設の大爆破とそれに伴う人々の多大な犠牲と最悪の危機を回避すべく奔放する人々の叡智と勇気が、本年度アカデミー賞に視覚効果賞&音響効果賞にノミネートされたのはダテではない迫力で描出されていきます。

その中で『ローン・サバイバー』でコンビを組んだマーク・ウォールバーグとピーター・バーグ監督との息の合ったコンビネーションは画から確実に醸し出されており、両者の絆を感じさせるところでもあります。
(このあと、ふたりはまもなく公開される、2013年ボストンマラソン爆撃事件を題材にした、またも実話の映画化『パトリオット・デイ』でもコンビを組んでいます)

震災国・日本ではこういったパニック映画はどこか他人事ではなく、現実の災害が起きるとそういった類の映画やドラマが上映&放送中止や延期になるなどの措置も繰り返されてきていますが、逆にこういった作品こそ、いざ何か未曽有の事態が起きたときのシミュレーションとして接しておくべきではないかと、私などは考えてしまう時もあります。

この映画にしても、果たして自分はどのキャラクターの立場に近いところにいるのか? そして自分だったらどうするのか?(会社勤めをしている人なら、ジョン・マルコヴィッチを一概に否定しきれないところもあることでしょう)

いずれにしましても、映画ならではの大迫力の中から人間そのものを描出していくパニック映画こそ、それが上手く完成した暁には真のエンタテインメントとなり得る。

『バーニング・オーシャン』は、そのひとつの証左であると思います。

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(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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