『宇宙戦隊キュウレンジャー THE MOVIE』が予想以上に『スター・ウォーズ』だった件



劇場版「エグゼイド・キュウレンジャー」製作委員会 ©石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映 ©2017 テレビ朝日・東映AG・東映


『スター・ウォーズ』ファンは、他の映画を見ていても『スター・ウォーズ』との類似点をつい見出してしまいがちなところがあります。

それは、『スター・ウォーズ』がさまざまな作品に影響を与えているだけではなく、そもそも『スター・ウォーズ』自体が多くの映画やコミック、SF小説、神話などのエッセンスを凝縮して作り上げられたものなので、随所でその片鱗を見つけやすいということもあるのでしょう。

…という点があったとしても、スーパー戦隊シリーズ最新作の劇場版『宇宙戦隊キュウレンジャー THE MOVIE ゲース・インダベーの逆襲』(『劇場版 仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』と同時上映)は、そのまんまなサブタイトルから連想された以上に『スター・ウォーズ』要素が濃厚でした!

あの暗黒卿と徹底比較! ゲース・インダベー


STAR WARS スタチュー ダース・ベイダー



まずはこれに触れずにはいられない、田村亮(ロンドンブーツ1号2号)が演じる本作の悪役ゲース・インダベー!

「ゲスいんだべぇ」と、宇宙の悪役の代名詞であるダース・ベイダーをもじったんですね、と説明するのも無粋なキャラクター名です!

このゲース・インダベーはその名だけではなく、随所に『スター・ウォーズ』感のあるキャラクター性を持っています。

その正体は、暗黒面に堕ちた戦士


ゲース・インダベーは、キュウレンジャーの司令官であるショウ・ロンポー(声:神谷浩史)のかつての相棒、ホイ・コウローが悪に堕ちた姿。ホイ・コウローはもともと、悪の宇宙幕府ジャークマターから宇宙を守るリベリオンの一員でしたが、力に魅せられてしまいショウ・ロンポーと決別してしまったのです。

ここから連想されるのは、ジェダイの騎士のアナキン・スカイウォーカーがダークサイドに堕ち、師匠であり親友でもあったオビ=ワン・ケノービと決闘の末、ダース・ベイダーとなってしまうという『スター・ウォーズ』のストーリー!

ショウ・ロンポー、オビ=ワンともに、主人公たちを導く存在である点も相似していますね。そもそも、リベリオンは『スター・ウォーズ』の「反乱軍(Rebellion)」と同じ名称でもあります。

右目の傷跡


ゲース・インダベーがダース・ベイダーの影響を受けていると思われる点は、これだけではありません。ゲース・インダベーの素顔には、右目の付近に大きな傷がありますが、アナキン・スカイウォーカーも右目の近くに同様の傷跡が残っています。

カイロ・レン風のボイスエフェクト


ダース・ベイダーのような呼吸音はないのですが、ゲース・インダベーはくぐもったような響きのある声をしています。これは、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に登場するダース・ベイダーを信奉する悪役、カイロ・レンがマスクをしている時の声を彷彿とさせます!

ゲース・インダベーの場合、なぜかマスクを外している時もくぐもった声なので、一体どういう原理でこういう声になっているのかは不明ですが…

あの究極兵器にそっくり!巨大彗星兵器ゲース・スター


ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー (吹替版)



本作でキュウレンジャーは、ゲース・インダベーの手による巨大彗星兵器ゲース・スターから、地球を守るために戦いを繰り広げます。

この名称、そして惑星を破壊する巨大人工天体…これはもう『スター・ウォーズ』シリーズのデス・スターのまんま! 昨年2016年に公開された『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』でフィーチャーされたのも記憶に新しい、帝国軍の巨大兵器です。

刻一刻と迫って来る、ゲース・スター地球衝突までのカウントダウンは、『スター・ウォーズ』でデス・スターの射程内に反乱軍基地が入るまでのアナウンスが思い起こされます。

『スター・ウォーズ』の反乱軍は、小型の宇宙戦闘機で圧倒的に巨大なデス・スターを打ち破っていましたが、キュウレンジャーはこの強大なゲース・スターに対して、彼ららしい、まさに破天荒な戦いで立ち向かいます!

『スター・ウォーズ』っぽいワイプ!


こうしたキャラクターやメカのモチーフだけではなく、演出面でも『スター・ウォーズ』を意識していると思われる点が。

本作では、ゲース・スターを止めるために3つの惑星に散らばったケルベロスストーンというアイテムを手に入れるべく、キュウレンジャーのメンバーが各惑星へと向かいます。

その各惑星の場面転換の際に、画面を拭き取るように次のシーンへと移るワイプが用いられています。

このワイプは、『スター・ウォーズ』を印象付ける要素のひとつとなっている手法。『スター・ウォーズ』が公開された1970年代の時点ですでにあまり使われていない技法でしたが、古き良き娯楽映画を意識した演出として『スター・ウォーズ』に用いられました。

TVシリーズの「宇宙戦隊キュウレンジャー」では特にワイプを用いていないので、劇場版ならではの演出かと思いますが、これだけ『スター・ウォーズ』を連想させる要素が揃っているとなると、このワイプもその一環と見た方が自然でしょう。

『スター・ウォーズ』便乗映画『宇宙からのメッセージ』からの影響も


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そもそも、「宇宙戦隊キュウレンジャー」のイメージの源泉のひとつに、スーパー戦隊シリーズと同じ東映が製作した『宇宙からのメッセージ』(1978年)があります。

この『宇宙からのメッセージ』は、1977年にアメリカで公開された『スター・ウォーズ』の記録的ヒットを見て、日本公開されるまでの1年の間に宇宙を舞台にしたSF映画を作ってブームにあやかろうとした作品!

こうした出自から、『宇宙からのメッセージ』は『スター・ウォーズ』に対抗するかのような特撮ショットが多く、『スター・ウォーズ』のオープニングシーンのように、巨大な宇宙船を底部から撮影したカットなどもあるほか、『エピソード6/ジェダイの帰還』(1983年)よりも早く、敵の宇宙要塞内を宇宙船で飛ぶシーンまでもあるなど、まさに監督の深作欣二(『仁義なき戦い』)らしくアメリカの大ヒット作に挑戦すべく、竹槍でライトセーバーに立ち向かったような映画でした。

『宇宙からのメッセージ』では、「リアベの実」が届くことで宇宙を救う勇者となる設定なのですが、これは「キュウレンジャー」に選ばれた者の前に現れる変身アイテム「キュータマ」を彷彿とさせます。

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たとえロボットであっても「キュータマ」が現れればヒーローになれる点も、『宇宙からのメッセージ』の「リアベの実」と同様です。

さらに、『宇宙からのメッセージ』では宇宙を帆船が飛ぶというビジュアルが印象的なのですが、TVシリーズの「キュウレンジャー」ではアルゴ船という宇宙も飛べる帆船が登場しています。

こうした源流を考えると、『宇宙戦隊キュウレンジャー THE MOVIE』の『スター・ウォーズ』濃度が高かったことも必然的と思えます。このように、「宇宙戦隊キュウレンジャー」のインスピレーションの元になった作品を巡ることで、また新たな視点でシリーズを楽しめる「よっしゃ! ラッキー!!」な体験が出来るのも、楽しみ方のひとつですね。

(文:藤井隆史)

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