本広克行監督の映画デビュー作「7月7日、晴れ」 立川シネマシティで、1回限りの上映が実現。

■「役に立たない映画の話」

「マルサの女」上映+トークに大満足。

先輩 いやあ、面白かったですよ、「マルサの女」。

爺 30年前の映画だぞ。今頃見たのかいな?

先輩 もちろん見てはいましたが、公開時に映画館でじゃなくて、ちょっと遅れてビデオで見たんですよ。30年前の僕は、色々と人生に悩んでまして。

爺 今だって悩みっぱなしじゃないか(笑)。それより、「マルサの女」を今になって上映する映画館があるのか?

先輩 このところ映画館が独自の音響方式で映画を上映するケースが増えましたが、そのきっかけを作ったと言われているのが、立川シネマシティの存在です。

爺 「極上音響上映」とか「極上爆音上映」とかを、派手にスピーカーを鳴らしているシネコンじゃろ。知ってるよ。

先輩 今回の「マルサの女」も、この「極上音響上映」のイベント「極音ナイト」として開催されたもので、映画の上映に加えて立川直樹音楽プロデューサーと、音楽を手がけた本多俊之さんのトークもあり、この内容も面白かった!!

爺 ほお。どんなことを喋ったんだい?

先輩 「マルサの女」のテーマ曲は、あのお馴染みの軽快な曲ですが、当初伊丹十三監督はバラードをメインテーマに使おうとしていたそうです。ところが「悪のテーマみたいな曲が必要だ」と本多さんに新曲をオファー。それであの曲が出来上がったそうです。

爺 それは面白い。結局バラードじゃなくて、そっちがテーマ曲になってしまったんだな。「マルサの女2」のテーマ曲もまた、忘れがたいな。

先輩 「マルサの女2」をやる時、夜中に伊丹監督から本多さんに電話がかかってきて、「本多くん、サンバが必要なんだ!! 『未来世紀ブラジル』だよ!!」と(笑)、またまたオファーがあり、本多さんはサンバの曲を作って持っていったら、「マルサの女2」の冒頭、唐突に流れたという(笑)。

爺 よっぽどサンバを鳴らしたかったんだろうな。

先輩 帰宅して「マルサの女2」を見たくなったので、BDを再生したんですが、東宝マークが終わると同時にサンバが鳴り、「ああ、ここかあ・・」と、テレビの前で爆笑しちゃいました(笑)。

爺 (笑)。

先輩 それと面白かったのが、「あげまん」の時も突然本多さんが呼ばれて、「主演のふたりがエロくないので、エロく見えるような曲を書いてくれ!!」と(笑)。それであの曲が出来上がった。

爺 映画と一緒にそれだけ楽しめれば、1800円の料金も安いもんじゃないか。

先輩 交通費もかかってますけどね(笑)。

未DVD化!! 21年前のラブ・ストーリーの傑作。

先輩 その「極音ナイト」は、音楽を中心にして上映作品を選んでいるのですが、7月の上映作品を聞いて驚きました。

爺 なんだい? 何かとんでもない作品をやるのか?

先輩 「7月7日、晴れ」をやると言うんですよ。残念ながら7月7日ではなく、7月13日に上映するそうですが。

©1996 FUJI TELEVISION NETWORK,INC. ALL RIGHTS RESERVED.

爺 ・・・どんな映画だったかな?

先輩 1996年製作・公開と言いますから、もう21年も前の映画です。フジテレビジョン製作で、観月ありさと萩原聖人のラブ・ストーリー。監督が本広克行で、これは彼の劇場用映画デビュー作ですね。

爺 ほお。「踊る大捜査線THE MOVIE」は、その翌年だったか?

先輩 1996年に「7月7日、晴れ」に続いて8月公開の「ぼくたちの映画シリーズ/友子の場合」を撮り、翌々年の98年に「踊る大捜査線THE MOVIE」です。

爺 で、音楽が重要な役割を果たす映画なのかい?

先輩 もちろんです。ドリームズ・カム・トゥルーが手がけていて、同名の主題歌は切なくて良いですよ。こんな歌なんですよ・・。

爺 歌うなよ、今。

先輩 いけませんか?

爺 しばくど。だんだん思い出してきたけれど、ピュアなラブ・ストーリーだったよな。ただ、それほど大ヒットしたという記憶がない。

先輩 おっしゃる通り、フジテレビ製作作品としては小粒な印象ですが、それでも配給収入6億円上げていて、同じ年にフジと角川書店が手を組んだ「八つ墓村」と、ほぼ同レベルなんですよ。

爺 で、君の評価はどうなんだ? 公開時に見ているだろ、もちろん。

先輩 地味ではありますが、良い映画だと思います。実にシンプルなラブ・ストーリーですが、何と言ってもクライマックスのナイトシーンと、そこに流れるドリカムの歌が涙を誘います。

爺 しかもこの映画、DVDになっていないんだってな。

先輩 そうなんですよ。今回もフィルム上映とのことですから、この機会を逃すと、もう見られないかもしれない。

ジョナサン・デミ追悼上映とウディ・アレンの名作も!!

爺 しかしこういう1回だけの上映って、最近多いよな。シネコンの空いている時間帯とスクリーンを有効活用しようというのだろうけど、ドリパスとかは面白い試みだと思うぞ。

先輩 立川シネマシティの場合はドリパスと違って、あくまで映画館のスタッフが作品を選んでいる。もちろんリクエストやアンケートの結果も参考にしますが、最終的には番組編成の人の趣味性や好みも大きく反映される(笑)。

爺 ドリパスは、リクエストに沿って観客が投票して、人気のある作品を上映する。どちらかと言えばお客さんイニシアティヴなんだが・・。

先輩 立川の場合、「わしが好きじゃから上映するとです!! 文句言うとらんで見なさい!!」という声が事務所から聞こえてくるような(笑)。でも、それで良いのだと思いますよ。

爺 映画館が作品を上映するということは、その作品を選んだわけだからな。「わしが面白いと思った」から上映する。それで良いではないか。映画館とお客さんが、そういう形でコミュニケートする。それがお客さんに伝わることもあれば、シカトされることだってある。それだけ映画館だってリスクを背負っているわけだ。

先輩 その立川スタッフの独断と偏見の反映(笑)として、6月の「極音ナイト」では、先頃亡くなったジョナサン・デミ監督を追悼して「ストップ・メイキング・センス」を上映するとのことです。これまた懐かしい。

©1984 TALKING HEADS FILMS. ALL RIGHTS RESERVED

爺 この映画もまた、なかなかスクリーンで見る機会がないから、ぜひ見たいものだなあ。いつやるの?

先輩 6月9日だそうです。それと、同じく6月に上映されるのが、ウディ・アレン監督のミュージカル映画「世界中がアイ・ラヴ・ユー」。これは名作。ボクはウディ・アレン監督作品の中でもベストの1本だと思います。

爺 ウディ・アレンは新作「カフェ・ソサエティ」も好評だし、その新作と関連しての上映かな?

先輩 そうした含みもあるでしょうけど、基本的に立川スタッフの誰かがこの映画を大好きなんでしょうね(笑)。こちらはこの春から新作と旧作を連続上映している極上音響上映「ミュージカル劇場宣言!」の枠で、6月24日から30日まで、これもフィルム上映だそうですよ。

爺 しかしここの映画館は、通常の新作ロードショーと、こうした企画上映、特集上映を実に積極的にやっているなあ。あきれる・・いや(笑)関心するよ。

先輩 その他にも「極音ナイト」で8月11日にはノルウェー初のビートルズ映画「イエスタデイ」を上映したり、「9月以降も新作映画に関連した作品、素晴らしいアーティストをトリビュートした作品、特定の音楽ジャンルを強烈にプッシュする作品、12月には音楽映画としてだけではなく、映画史上に残る名作を最大スクリーンで極音上映するべくプログラム作成中です」とのメールが来ました。面倒だからコピペしちゃお(笑)。とにかく追いかけきれないほどの作品が上映されていますから、詳しくはこのオフィシャルサイトのニュースページでチェックすると良いでしょう。
http://cinemacity.co.jp/wp/ccnews/

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(企画・文:斉藤守彦)


    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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