『シティーハンター』実写版が観客の絶賛を呼ぶ「3つ」の見どころ!



© AXEL FILMS PRODUCTION - BAF PROD - M6 FILMS © Axel Films Production



週刊少年ジャンプに長期連載された北条司による人気漫画を、なんとフランスで実写化した話題の映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』が、ついに11月29日から日本でも劇場公開された。

そのビジュアルの再現度の高さに、公開前から多くのファンがザワついていたのも印象的だったが、過去にジャッキー・チェン主演で作られた香港実写版の印象が強いだけに、期待と同時にやはりどこか不安を感じさせる本作。

気になるその内容と出来は、果たしてどうだったのか?



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ストーリー


ボディーガードや探偵を請け負う凄腕のスイーパー“シティハンター”ことリョウ(フィリップ・ラショー)は、相棒のカオリ(エロディ・フォンタン)とコンビを組んで、日々裏の仕事を受けている。ある日、伝言板に書き込まれた“XYZ”宛の新しい依頼。
依頼人の男ドミニク・ルテリエ(ディディエ・ブルドン)の話では、彼の父親が開発した“キューピッドの香水”を悪の手から守って欲しいとのことだった。
嗅いだ者を虜にする香水の効果を疑うリョウに、ルテリエが香水を匂わせると、リョウは一瞬でルテリエの虜になってしまう!
しかも、一瞬の隙を突いて香水はバイクに乗った男に奪われてしまった。タイムリミットは48時間!果たしてリョウとカオリは時間内に香水を取り戻すことができるのか?


予告編


見どころ1:期待を裏切らない再現度の高さ!



今回のフランス実写版に、日本の観客からも多くの絶賛が寄せられている大きな理由。それは一重に、フランス版キャストたちの再現度の高さにある!

日本公開前の段階でネットに流れてきたオリジナルポスターや予告編で、コミックから抜け出してきたような、その姿を目にした方も多いと思うが、こうしたビジュアル面における再現度の高さに、多くのファンが「凄い!」とネット上で話題にしていたのも記憶に新しいところ。

ただ、外国人スタッフ&キャストによるフランスでの実写化ということで、実際に本編を観るまではかなりの不安があったのも事実。

きっと公開日が来るまで、期待と不安を抱えていたファンの方も多かったのではないだろうか?

でも大丈夫! なぜなら多くの方が既にネットの感想やレビューで書いている通り、これこそまさに日本のファンが観たかった『シティーハンター』そのものだからだ。



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むしろ鑑賞前に不安があっただけに、実際に観て分かった完成度と再現度の高さとのギャップも、観客の高評価に繋がる大きな理由と言えるだろう。

実際、主役のリョウを演じるフィリップ・ラショーは、当初はあまり似ていないように感じるのだが、ジャケットの袖をまくった姿を含め、彼の"シティーハンター愛"が観客に伝わるのにつれて、次第にリョウにしか見えなくなってくるのは、見事としか言いようがない。

その他にも、外見だけでなくリョウを密かに想うその心の動きまで見事に再現してくれる、カオリ役のエロディ・フォンタンの演技力と思わぬサービスシーンや、海坊主(ファルコン)を演じるカメル・ゴンフーの、完璧ななりきりっぷりは必見!



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もちろん、こうしたビジュアル面だけでなく、華麗なガンアクションに秘めた恋心、そしてお約束のお色気シーンまで、まさにこれが『シティーハンター』だ!そう思わずにはいられない本作。

もしも劇場での鑑賞を躊躇されているのであれば、迷わず劇場に足を運んで頂ければと思う。

見どころ2:実は原作以上の下ネタが満載!



前の項でも触れた通り、ビジュアルだけでなく、女に目が無いリョウには欠かせないお色気シーンも再現してくれる本作。

しかも、原作コミックやアニメ以上に、実は今回の実写版では下ネタの部分が、かなりパワーアップしているのだ。

さすがに実写で再現すると作品世界を壊しかねない、リョウの“もっこり描写”は登場しないものの、全裸の患者を挟んで激しい戦いを繰り広げるリョウと海坊主のアクションシーンから始まる本作には、大人向けのセクシーなシーンがふんだんに盛り込まれている。

もちろん、究極の惚れ薬である香水の争奪戦がストーリーの中心となるだけに、女性の下着姿やセクシーな美女の登場、ラブシーンは必要不可欠なのだが、これらの描き方が非常に上品で、ギリギリのところで抑制が効いていることもあり、不思議と観ていて恥ずかしさや居心地の悪さを感じないのは見事!



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実は、今回フランスで実写化されたメリットを強く感じたのがこうした部分であり、日本で実写化したらかなり生々しい印象を与えてしまい、観客に気恥ずかしい思いをさせた危険性が高いかも? そう感じたのも事実。

ある意味『HK 変態仮面』並みの突き抜けた下ネタギャグを、外国人キャストが真剣に演じることで更に見やすく笑えるものに変えている、この『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』。

女性の方が観ても、きっと違和感無く楽しめるその笑いの数々は、是非劇場で!

見どころ3:全編にあふれる原作コミックへの愛が凄い!



今回のフランス実写版は、あの女好きのリョウが世界最高の惚れ薬によって中年のおっさんを好きになってしまうという、まさに"おっさんずラブ"要素を盛り込んだ意外なストーリーとなっている。

これだけ聞くと不安に思われるかもしれないが、原作者の北条司をして「この手があったか!」と言わせた秀逸なこのアイディアこそ、過去のエピソードの焼き直しではなく、『シティーハンター』の新作を現代に送り出そうとする、制作スタッフの情熱の証明に他ならない。



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なぜなら、本作の監督・主演を務めたフィリップ・ラショーが18ヶ月かけて書き上げた脚本には、子供の頃からの憧れの存在だった『シティーハンター』実写化実現への情熱や、原作コミックとアニメ版に対する愛情とリスペクトが、全編にわたって盛り込まれているからだ。

かといって、原作コミックやアニメの表現通りの表情やリアクションを、そのまま忠実に再現するのではなく、生身の俳優が演じても不自然ではないレベルに抑えている点も、彼の原作コミックへの深い愛情を感じさせてくれるものとなっている。

CITY HUNTER (1) (ゼノンセレクション)



思えば、過去にはタイトルやキャラクターだけを活かして、設定やストーリーに大幅な変更を加えた作品や、その逆に原作コミックのビジュアルを忠実に再現するあまり、生身の役者のコスプレ感が強すぎて違和感ばかりが目立ってしまったものなど、残念ながら失敗に終わった人気コミックの実写化作品も数多く存在した。

だが、そうした表面的な要素ばかりにとらわれず、『シティーハンター』の根底にある冴羽獠と槇村香のラブストーリーを見事に押さえた本作の脚本には、仮に日本で実写化した場合、果たしてこれほど再現度の高い作品が出来るかどうか? 鑑賞後にそう思わされたのも事実。

実際、すでにリョウとカオリがパートナーとして仕事をしている前提で映画がスタートし、観客を冒頭のアクションシーンで作品世界に引き込むスピーディーな導入部に加えて、カオリの兄が死んでリョウと行動を共にするきっかけの事件までちゃんと描いた上に、これが後に事件の黒幕への伏線として活きてくるという、素晴らしすぎる展開が待っているのだ。



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もちろん、これ以外にも仕事上のパートナーを超えた二人の微妙な関係や恋の駆け引き、更に絶体絶命の危機の中で見せる、リョウのカオリに対する特別な想いなど、キャラクターの内面を掘り下げようとするその姿勢には、観客も「この制作陣は分かってるな!」と思わずにはいられないはず!

すでに続編を期待する声も多い、この『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』。

原作コミックやアニメ版を知らない若い世代にこそ、全力でオススメします!

最後に



今回は主役のリョウの声に山寺宏一、カオリの声に沢城みゆきを迎えた"デラックス吹替版"での上映となる、この『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』。

それだけでなく、アニメ版で獠と香の吹替を担当した神谷明と伊倉一恵が、思わぬ役で声の出演をしているのも、昔からのファンにとっては非常に嬉しいプレゼントとなっている。

今回のこの選択は、外国人俳優が話すフランス語のセリフへの違和感を消す上で、まさに大正解! なのだが、元々の映画が本当に日テレで夜の9時から放送されても全く違和感のない作品に仕上がっている点も、まさに予想外の収穫だったと言えるだろう。

安易に原作の知名度を利用したり、メディアミックスによる多額の収入を当て込んだ実写化ではなく、監督・脚本に加えて今回自ら主役を演じたフィリップ・ラショーの、『シティーハンター』に対する子供の頃からの夢と憧れを具現化したような本作は、多くの観客が観たかった映像をちゃんと届けてくれる点で、最良の実写化作品に他ならない。



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そう、過去に残念な結果となった『DRAGONBALL EVOLUTION』とは違い、とにかく余計なアレンジを加えずに『シティーハンター』の世界を再現することと、キャラクターや作品への愛とリスペクトを最優先して作られた本作は、海外で作られたにも関わらず紛れもない『シティーハンター』の新作! そう呼ぶに相応しい内容となっているのだ!

中でも『シティーハンター』への愛を感じずにはいられなかったのが、エンディングでかかる曲が、ちゃんとTM NETWORKの「Get Wild」な上に、曲の入り方もテレビアニメを踏襲している点だった。

こうした最後の最後まで観客の期待を裏切らない姿勢こそが、鑑賞中の多幸感と観客の絶賛を呼ぶ大きな理由となっているのだろう。

今回、海外での実写化作品という不安要素を見事に覆し、日本の観客にも高評価を以って迎えられる結果となった『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』。

思えば、生身の俳優がコミックのキャラクターに寄せすぎることで発生する違和感やコスプレ感が観客に与える気恥ずかしさなど、日本での人気コミック実写化には多くの問題点が存在していたのも事実。

その呪縛から見事に脱却し、高い再現度と原作コミックへの深い敬意と愛情を見せてくれた本作が、今後の日本でのコミック実写化への大きなヒントとなってくれることを、願わずにはいられなかった。

(文:滝口アキラ)

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