ドイツからハリウッド、そしてカンヌ受賞女優となったダイアン・クルーガーの軌跡

<〜映画は女優で作られる〜vol.6:ドイツからハリウッド、そしてカンヌ受賞女優となったダイアン・クルーガーの軌跡>

日本時間の5月28日深夜に受賞結果が発表された、第70回カンヌ国際映画祭。この記念すべき節目の年に、女優賞を受賞したのがダイアン・クルーガーだ。彼女の出演作『In The Fade(原題)』は、爆弾テロによって家族を奪われた女性が、犯人への復讐を目論むドラマである。

これまで『そして、私たちは愛に帰る』や『愛より強く』などで高い評価を得ているドイツの名匠ファティ・アキンの監督作で彼女は、意外なことに初めて母国語であるドイツ語演技に挑み、華々しい賞を受賞したのだ。

1976年に生まれたクルーガーは現在40歳。ドイツでモデルとして活躍したのち、フランスに渡り演技を学ぶ。2002年に映画デビューを果たすと、翌年にはリュック・ベッソンがプロデューサーを務めた『ミシェル・ヴァイヨン』でヒロインを演じて注目を浴び、その翌年にはウォルフガング・ペーターゼン監督の超大作『トロイ』でハリウッドデビューを果たした。

その後もフランスとハリウッドを主な拠点に、着実にキャリアを重ねてきた。『イングロリアス・バスターズ』や『マリー・アントワネットに別れをつげて』など、多くのヒット作・話題作に出演する一方で、アカデミー賞をはじめとする賞レースにはなかなか恵まれずにいたのである。

今回彼女が受賞したカンヌ国際映画祭の女優賞からは過去に5人がアカデミー賞を受賞。14人がノミネートされているという実績がある。もちろん、外国語演技というハンデはあるものの、ハリウッドでも知名度の高い彼女だけに、可能性はゼロではないだろう。

せっかくなので、彼女の出演作ですっかり埋もれてしまっている傑作を紹介したい。彼女がハリウッドに渡った2004年に出演した『ホワイト・ライズ』という作品だ。

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モニカ・ベルッチが出演した96年のフランス映画『アパートメント』を、舞台をシカゴ移してリメイクした本作。オリジナル版はヒッチコック調のサスペンスであったが、このリメイク版はラブストーリー要素がより強まった印象だ。主演を務めたのは、当時人気絶頂期にあったジョシュ・ハートネット(キャスティング段階ではポール・ウォーカーやフレディ・プリンゼ・Jr.ら、当時の若手人気スターが候補に挙がっていたらしい)。

彼が演じるマシューは、ニューヨークで成功し、シカゴに帰ってきた青年。そこで2年前に突然いなくなった恋人・リサに似た女性を偶然見つけ、その姿を追い始める。少ない手がかりを頼りに、リサのアパートメントを見つけ出した彼だったが、そこには別の女性が暮らしていた。見た目も雰囲気も探していたリサとはまったく異なっていた彼女だが、不思議なことに彼女の名前も〝リサ〟だったのだ。

成功を遂げた男が、忘れられない女性のためにすべてを投げ出して求めるという、なかなかアメリカ映画らしからぬ展開が、冬のシカゴの町並みにマッチすることで、オリジナル版よりもヨーロッパ映画のようなスマートさを見せているのだ。主人公が追い求める〝リサ〟を演じるダイアン・クルーガーは、陰陽の〝陽〟のポジションだろう。ローズ・バーンの鬼気迫る演技がミステリアスを増長させる〝陰〟であれば、クルーガーの存在があってラブストーリーが確立されている。

ヨーロッパからハリウッドに進出する女優といえば、かつてはイングリッド・バーグマンやソフィア・ローレン。最近ではマリオン・コティヤールやアリシア・ヴィキャンデルなど、大勢だ。ほとんどが母国で知名度をあげ、大作に抜擢されるというのが基本的な流れではあるが、そんな彼女たちの本当の実力は、大作の特別感に負けない、優れた脚本と高度な演出力を持ったインディペンデント映画によって発揮されるのではないだろうか。

(文:久保田和馬)

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