“選ばれし子どもたち”のその後を描く『デジモンアドベンチャー tri. 第2章「決意」』全6章

■「キネマニア共和国」

かつて“選ばれし子どもたち”がいました。

彼らはデジタルモンスター=通称デジモンと出会ったことで現実世界から仮想世界へ誘われ、冒険の旅を繰り広げていきました……

キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~117

『デジモンアドベンチャー tri. 第2章「決意」』全6章は、その後の“選ばれし子どもたち”の物語です!

デジモン

(C)本郷あきよし・東映アニメーション

仮想世界と現実世界を行き交う
『デジモンアドベンチャー』シリーズ

そもそも『デジモンアドベンチャー』シリーズとは、97年に発売された同名モンスター育成ゲームを原作に作られた、細田守監督の映画デビュー作としても知られる短編アニメーション映画『デジモンアドベンチャー』(99/本作は後のTVシリーズでは光が丘爆弾テロ事件と称されています)を皮切りに、その4年後の世界を舞台に据えたTVアニメーション・シリーズ『デジモンアドベンチャー』(99~00/ファンの間では『無印』と呼ばれます)および映画『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム』(00)、それらの続編となるTVシリーズ第2作『デジモンアドベンチャー02』(00~01)と連なるものです。

この後もシリーズとしては世界観を一新した『デジモンテイマーズ』(01~02)、『デジモンフロンティア』(02~03)と続き、(ここまでをデジモン4部作と称する向きもあります)、さらには時を経て『デジモンセイバーズ』(06~07)、『デジモンクロスウォーズ』(10~12)といったTV作品などが製作されていますが、今回の『デジモンアドベンチャーtri.』は『無印』+『02』のラストから3年後の世界を全6章で描く構成となっています。

思春期を迎えた
かつての子どもたちの苦悩

子どもの頃、デジモンと一緒に冒険の旅を続けてきた太一やヤマトら“選ばれし子どもたち”は今では高校生となり、それぞれの道を歩んでいます。

そんなとき、突如東京お台場にデジモンが現れ、街が破壊されていく中、太一らはそれぞれ自分らのパートナーでもあったデジモンと再会し、事態の収束に向かおうとしますが、皆が皆かつての冒険心を維持しているわけではなく、むしろなぜ自分たちがかつて”選ばれた”のかを悩み、これからも戦わなければならないのかと苦悩していきます。

『デジモンアドベンチャーtri.』では、大人になる手前の少年少女たちの繊細な苦悩が大きなテーマとなっていきます。

これは劇場版第1作からどこか暗い要素を携え、両親の離婚など現実のシビアさを隠すことなく描き続けたシリーズの特色を継承したものでもあり、一見明るく派手な冒険バトルの影にひそむ一抹の寂しさや不安などが、ここでは思春期の心の揺れと同化しながら描出されていくのです。

『第1章「再会」』(15)では、かつて快活な冒険少年だった主人公の太一が戦いに悩む姿を包み隠さず描いたことで、かつてのファンたちの間で賛否を呼びましたが、今回の『第2章「決意」』(16)では受験を控えた高校3年生の丈と帰国子女のミミの悩みが描かれていきます。

それぞれがもう子どもではないという設定の下、彼らはいかにしてその悩みと対峙していくのかという、青春ドラマとしての色が非常に濃くなっている反面、デジモンたちの姿はかつてのままで日頃の風情はどこか幼く、否が応でも成長していく太一ら人間との対比にもなっています。

『第2章「決意」』単体で見ていくと、前半部で皆がスーパー銭湯に行くエピソードがあり(お台場の『大江戸温泉物語』とのタイアップですね)、嗚呼、デジモンも萌えに走るか⁉ と思いきや、そういったサービス・ショットは少な目で、しかしデジモンたちが風呂に入っている姿を見せられてもね……といった、どこか中途半端な印象をもたらすところもありますが(このあたり、もともとファミリー作品として製作されていたシリーズをヤング・アダルト版へ変換させることの難しさを露呈させているようにも思えます)、後半で舞台が文化祭に移されてからはテンポもテンションもグンと高くなり、また最後の最後にはあっと驚く仕掛けも用意されていて、少なくとも『第1章』よりも満足できるとともに、すぐさま続きを見たくなるものに仕上がっていました。

今ちょうど全体の3分の1が終わったところで、いわば序破急の「序」から次は「破」へと大きく転換していく流れの中、どういうサプライズが今後なされるか、大いに期待したいところです。

■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

    ピックアップ

    関連記事

    新着記事