映画コラム

REGULAR

2017年07月22日

笑えた?笑えなかった?賛否両論の映画『銀魂』その要因はどこに?

笑えた?笑えなかった?賛否両論の映画『銀魂』その要因はどこに?



(C)空知英秋/集英社 (C)2017「銀魂」製作委員会


少年ジャンプ連載の人気漫画待望の実写化にして、『勇者ヨシヒコ』シリーズや『HK変態仮面』の福田雄一監督が、小栗旬や菅田将暉、橋本環奈などの人気俳優陣を迎えて撮った話題作!それがこの映画『銀魂』だ。

今回は個人的にも期待していた本作を、公開初日の最終回で鑑賞して来た。初日だけあって、平日の夜9時代の上映にも関わらず、場内はほぼ満員の盛況振り。

後述するが、実は『銀魂』弱者の自分。劇場で度々目にした予告編の印象からは、「これはかなりテンション高くて危険そう・・・」と、多少の不安を抱えて鑑賞に臨んだのだが、果たしてその出来と内容はどうだったのか?

予告編

ストーリー


宇宙から襲来した天人(あまんと)に支配され、侍が衰退した江戸時代末期の日本。いまだに侍魂を堅持する男・坂田銀時(小栗旬)は、廃れた剣術道場の息子・志村新八(菅田将暉)や、戦闘種族である夜兎(やと)族の少女・神楽(橋本環奈)と共に万事屋を営んでいた。江戸では、謎の妖刀を使った辻斬りが横行し、銀時の旧友である攘夷志士・桂小太郎(岡田将生)がその凶刀に倒れ、行方不明になり……。

笑えた人と笑えなかった人。賛否が分かれる理由とは?


興業成績や観客動員数ではヒットを記録している本作だが、実はネットの感想・レビューでは、見事に絶賛派と否定派の二つに分かれている。意外に原作ファンの間でも賛否は五分五分、むしろ福田雄一監督作品のファンの方に、否定的意見を持つ方が多かった様だ。

実は本作公開初日の深夜に、たまたまテレビ放送されていた映画『銀魂』の特別番組を見た。その中に、本作のスタッフキャストが4人で観覧車に乗って、その中でトークをするというコーナーがあった。乗り合わせたのは、福田監督、小栗旬、佐藤二郎、ムロツヨシの4人。

その結果がどうなったかと言うと、小栗旬を除いた3人で話が盛り上がり、小栗旬は殆どトークに参加出来ない結果に・・・。

実は個人的に、映画『銀魂』が賛否両論な理由は、ここにあるのではないかと思った。

自分の目の前で面白いことが行われていて、何か非常に盛り上がっているけれど、ちょっと自分には入り込めない雰囲気・・・。つまり、この番組での小栗旬の反応・距離感こそが、映画『銀魂』に乗れなかった観客の反応だということだ。

銀魂 実写 WEB版ポスター


(C)空知英秋/集英社 (C)2017「銀魂」製作委員会


例えば真面目なシーンと笑いの起こるシーン、小栗旬の個性が生きて輝くのはやはり前者であり、周囲の悪乗りやギャグに延々ツッコミを入れるシーンになると、どうしても自然な感じが出ず、「はい、今自分、面白い役を演じてます!」感が観客に伝わってしまうのだ。これは残念ながら橋本環奈にも言えることなのだが、さすがに『帝一の國』の主演を見事に勤めた菅田将揮は、コメディとシリアスの切り替えが瞬時に出来ているので、この独特の濃い世界観の中においても、実に自然に存在している。

その点小栗旬と橋本環奈は、どうしてもコメディ部分でのセリフ回しが、外見のインパクトに負けてしまい、まるで狂人の国に迷い込んで、何とか周囲に合わせようと「頑張っている」常識人の様に見えてしまう。

もちろん二人とも本当に真面目に熱演していて、外見的には完全に原作のままなのだが、長澤まさみが見せる「完璧な狂人振り」に比べると、やはりどこかで普通の人間としての「不自然さ」が、顔を出してしまうのだ。

そうした違和感や不自然さが観客に伝わってしまうと、今度は観客の方が恥ずかしくなってしまい、その結果、いまいち乗れない、笑えない映画ということになってしまうのではないか?

例えば山田孝之の様に、外見からはとても変なことをしそうに無い男がやるからこそ、ギャグや笑いの破壊力が倍増するのであって、小栗旬の様に軽い雰囲気のまま演じてしまうと、たとえ本人にその気が無くても、「ふざけて演じてる」様に見えてしまうのは、非常に損だし気の毒だと言える。

その点、元からの福田組である佐藤二郎とムロツヨシの出演シーンなどは、実に自然で無理せず肩の力を抜いて演じているので、観客側も安心してその場面で笑うことが出来る。実際自分が劇場で鑑賞した時は、佐藤二郎とムロツヨシが登場する場面で、場内に大きな笑いが起きていた。

もちろんガンダムやジブリなど、観客の想像を超えた危険過ぎるネタでは、間違いなく劇場でも爆笑をさらっていたのだが、結果的に本作を100%楽しむためには、主演の小栗旬と橋本環奈がコスプレに見えるか見えないか?問題など、余りに越えるべきハードルが多く、「勇者ヨシヒコ」の様に誰もが知っているドラクエの世界観とは違って、やはり観客にある程度の予備知識を要求する映画になっている、そう思えてならなかった。

これからご覧になる方は、出来れば原作を1冊でも読んで、福田監督の映像作品を1本でも見てから、鑑賞に臨むことをオススメします!



(C)空知英秋/集英社 (C)2017「銀魂」製作委員会



最後に


個人的な意見だが、今回の映画『銀魂』は原作と福田監督作品のファンの両方に向き合おうとした結果、却ってバランスの悪い作品になってしまったのでは無いだろうか?確かに、原作やアニメには断片的に触れた程度の自分にも、本作は1本の映画として楽しめたし、ストーリーや登場人物の関係性も、ある程度は理解出来た。

ただ、笑いという部分になると、正直前半の「カブト狩り」部分は全く笑えず、逆にシリアスなシーンと素晴らしいアクションシーンの方が印象に残った程だ。

特に今回、敵役として全編シリアスな演技で通した堂本剛の演技と存在感は素晴らしく、ラストの小栗旬との対決シーンは、本当に迫力満点で印象に残る。
本作の劇場でのヒットを受けて、今後製作・公開されるであろう続編への期待と予習も含め、まずはこの映画『銀魂』に足を運んで頂ければと思う。

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(文:滝口アキラ)

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