『蜘蛛の巣を払う女』の「5つ」の魅力!前作から変わった特徴はコレだ!

本日1月11日より、『蜘蛛の巣を払う女』が公開されます。本作は同名の小説を原作としており、2011年に公開されたアメリカ映画『ドラゴン・タトゥーの女』の事実上の続編となっています。

原作小説である「ミレニアム」シリーズは過去にもスウェーデンで3部作の映画が製作されており、観たことがなくても“パンクな服装のうえに顔にいくつものピアスを開けた女性”のビジュアルが印象に残っている方も多いでしょう。

先に結論を申し上げておけば、『蜘蛛の巣を払う女』は娯楽に徹したアクションサスペンス映画として存分に楽しめる、新年の一発目に観るのにもぴったりの面白い作品でした。その魅力と楽しみ方を、以下に記しておきます。

1:『ドント・ブリーズ』の監督にバトンタッチ!
エンタメに特化した作品になった!

本作『蜘蛛の巣を払う女』については、前作『ドラゴン・タトゥーの女』からスタッフ(監督)とキャストが変更されていることに触れなければいけないでしょう。まず、前作の監督は『ファイト・クラブ』や『ゴーン・ガール』のデヴィッド・フィンチャーでしたが、本作では日本でもスマッシュヒットしたホラー映画『ドント・ブリーズ』のフェデ・アルバレスへとバトンタッチしているのです。(デヴィッド・フィンチャーは今回では製作総指揮を務めています)

『ドント・ブリーズ』の最大の魅力と言えば、“盲目だが肉体的には最強のおじいさんとの極限バトル”が全編に渡って展開するということ。今回の『蜘蛛の巣を払う女』でもその作家性が存分に生かされており、狭い空間での格闘アクションが見やすいカメラワークで撮られている他、(具体的にはネタバレになるので書けませんが)とある“ギミック”を利用した逃亡劇が展開するなど、追われる者と追いかける者との“攻防戦”が際立っているのです。

そのフェデ・アルバレスは無名だったもののYoutubeに投稿された短編SF映画が話題となり、2013年のリメイク版『死霊のはらわた』の監督に、オリジナル版の監督のサム・ライミから直々に指名を受けて抜擢されたという経歴の持ち主です。

単純に言ってアルバレス監督は、“(短い時間で)エンタメ性に特化した作品を作る”という才覚がある方なのでしょう。そのリメイク版『死霊のはらわた』は大ヒットしたものの度を超えた残虐描写も相まって賛否両論を巻き起こしましたが、『ドント・ブリーズ』と同じく“敵味方の攻守”がわかりやすく描かれており、観る人をハラハラさせるホラー作品という意味で、やはり申し分のない内容になっていました。

繰り返しになりますが、本作『蜘蛛の巣を払う女』は、アルバレス監督らしい “攻防戦”が展開し、ハラハラドキドキが続くというエンタメに徹したアクションサスペンスです。物語構造そのものも、前作『ドラゴン・タトゥーの女』やスウェーデン版3部作よりもかなりシンプルになっていますし、そちらを観ていないという方でも(予備知識がなくても)存分に楽しめるはず。監督が交代したことで、むしろ取っ付きやすい作風になったと言っていいでしょう。

なお、前作『ドラゴン・タトゥーの女』で超カッコよかった、レッド・ツェッペリンの楽曲のカバー「移民の歌」に乗せて展開していた映像のオマージュと思しきオープニングもあります。(今回は名曲のカバーのボーカル曲でないことがやや残念ではありますが)前作への敬意も存分に感じさせるところも、本作の美点です。

※『ドント・ブリーズ』の紹介記事はこちら↓
□『ドント・ブリーズ』が『ローグ・ワン』と並ぶ必見作である5つの理由

2:前作から代わったキャストも文句なし!
クレア・フォイならではの表情にも注目!

前作『ドラゴン・タトゥーの女』では、主人公である天才ハッカーの女性のリスベットを『PAN -ネバーランド、夢のはじまり-』や『キャロル』ルーニー・マーラ、もう1人の主人公であるミカエルを『007』シリーズでジェームズ・ボンドを演じたことでもおなじみのダニエル・クレイグが演じていました。この2人の演技と存在感が絶賛された理由の1つでもあるので、続投とならなかったことを残念に思っている方も決して少なくはないでしょう。

結論から申し上げれば、「今回の主人公を演じた2人(クレア・フォイとスヴェリル・グドナソン)も最高だった!不安に思う必要は一切ないですよ!」と断言します。世界的な名優の“後任”としては、もう文句のつけようがないレベルなのではないでしょうか。

クレア・フォイは、Netflixのドラマシリーズ『ザ・クラウン』でゴールデングローブ賞女優賞(ドラマ部門)を受賞し、『ブレス しあわせの呼吸』でも芯のある女性を演じて賞賛を浴びていました。今回は前述した通りパンクな服装のうえに顔にいくつものピアスを開けているという、それらとは正反対の“攻撃的な役”であり、その“壮絶な過去”をも匂わせなければならない難役なのですが、これ以上なく見事に体現しています。若干の“弱々しさ”を感じさせる表情も、今回の複雑な心境を抱えている役には最大級にマッチしていました。特異なキャラクターを際立たせるヘア&メーキャップにも並並ならぬこだわりがあったようで、ビジュアル面も含めて説得力を持たせることに大成功していました。

スヴェリル・グドナソンは『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』という実話もののテニス映画において、伝説のプレイヤーのビョルン・ボルグの“生き写し”とも言っていい熱演を見せていました。それもそのはず、彼はこの映画のために1日2時間のテニスおよび4回のパーソナルトレーナーとの練習などを週に15時間、トレーニングを6か月間続けたほどなのですから。今回の『蜘蛛の巣を払う女』でも、もう1人の主人公のリスベットを慮る、心根は優しい“大人”な記者の役にぴったりでした。

なお、フェデ・アルバレス監督はリスベットというキャラクターについて、「彼女の最大の特徴はファイターとしてのセンスであり、今回はそれを徹底的に追求することにした」と答えています。おかげでクレア・フォイは(今までの映画シリーズと同様かそれ以上に)屈強な男に対して肉体的なバトルをすることも余儀なくされているのですが、その要望にもバッチリ応えています。「ガリガリな身体に見えた女性がクズな男たちを処刑!ざまぁ!」な痛快さは健在、前述した通りアルバレス監督らしい攻防戦が展開するばかりか、今回は最強にカッコいい“バイクアクション”もあるので、とにかく「強い女性が見たい!」という方も満足できることでしょう。

また、原作の主人公のリスベットそのものが特異かつ強烈なキャラクターであるので、(あくまで個人的にですが)「この役者じゃなければ絶対にダメ」というよりも、「他の役者でこのキャラクターをもっと見たい!」と思わせます。スウェーデン3部作でリスベットを演じたノオミ・ラパスももちろん独自の魅力があるので、ぜひ合わせて観てみることをオススメします。

ちなみに、クレア・フォイは日本では2月8日公開の『ファーストマン』でもヒロインとして出演しています。『セッション』『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督とどういう化学反応を起こしているのか、公開を楽しみにしています。

『ブレス しあわせの呼吸』の紹介記事はこちら↓
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3:原作者が抱えていた苦悩とは?
女性を虐げるクズ男は処刑だ!

原作小説「ミレニアム」は大ベストセラーで、全世界で累計8000万部以上を売り上げています。作者のスティーグ・ラーソンは3部作を書き上げたものの1作目が出版される前に亡くなりましたが、続編は別の作家に引き継がれて2015年に出版されました。その続編であるシリーズ第4部が、本作の原作となる『蜘蛛の巣を払う女』なのです。(スティーグ・ラーソンはその第4部の原稿を200ページほどだけ書き残していたそうです)

知っておいてほしいのは、作者であるスティーグ・ラーソンの経験が、この『ミレニアム』シリーズに如実に表れているということです。具体的には、彼は15歳のころ女性がレイプされているところを目撃していながら、何もせずその場を逃げ去ってしまい、翌日にその女性に許しを乞おうとしたものの拒絶されてしまうという、痛ましいという言葉では足りない、凄惨な出来事に遭遇していたのです。

原作小説の第1部の英題は「The Girl with the Dragon Tattoo」で、邦題もそれに沿ったものですが、スウェーデン語の原題を直訳すると“女を憎む男”になっています。しかも、そのレイプされた女性の名前は、まさに本作の主人公と同じ「リスベット」でもあるのです。

そして、「ミレニアム」シリーズにおいて主人公のリスベットは、女性をレイプしたり暴行したりする男たちに思いっきり“制裁”を加えるキャラクターになっています。単純に言えば、作中で「女性を虐げるクズ男は処刑だ!そうであるべきだ!」という、作者の後悔の念と怒りがはっきりと表れていると言っていいでしょう。

さらに、作者はウェーデンの通信社で20年働いた後に、イギリスの反ファシズム雑誌のサーチライトの編集に携わり、政治雑誌のエキスポを創刊した上に編集長も務めていた経験もあります。本シリーズでのもう1人の主人公である記者のミカエルのキャラクター造形にも、作者自身の経験が生かされているのも間違いありません。

言うまでもなく、今回の映画版『蜘蛛の巣を払う女』でも、思い切り「女性を虐げるクズ男は処刑だ!」なシーンがあります。嬉しいことにオープニングの後にすぐに処刑のためにスカッと爽やかな気分になれました。やはりフィクションの中でくらい、セクハラ男やレイプ魔はすぐに処刑されてしかるべき。各所で熱狂を生んだインド映画『バーフバリ 王の凱旋』の“あのシーン”が好きな人も必見ですよ。

4:双子の妹との因縁が描かれる!
スウェーデン版と合わせて観ると…?

今回の『蜘蛛の巣を払う女』では、予告編などでわかる通り主人公のリスベットの双子の妹が登場します。この過去の因縁にどう決着を付けるかが、物語の焦点になっていました。

この双子の妹は、この『蜘蛛の巣を払う女』までは亡くなったスティーグ・ラーソンの書いた小説の中で一度だけ言及されただけの、シリーズではまだ誰も演じていなかったキャラクターです。その彼女を演じたのは『ブレードランナー 2049』でブレイクしたオランダ人女優のシルヴィア・フークス。クレア・フォイ演じる主人公のリスベットと“似ている”ことを思わせることも含めて、彼女も類まれな名演を見せています。

ちなみに、リスベットの出生の秘密については、スウェーデン版の第2部『火と戯れる女』でも、今回の『蜘蛛の巣を払う女』とは異なる衝撃的な事実が明らかになります。続く第3部『眠れる女と狂卓の騎士』はこの第2部の直後から始まるという“後編”のような内容でもあるので、一気に観てしまうのも良いでしょう。合わせて観ると、男を憎むリスベットというキャラクターの源流と、「ミレニアム」というシリーズで訴えられていることがさらに明白になりますよ。

5:良くも悪くも単純化されている?
しかしシリーズ未見の方にもオススメできる内容だった!

ここまで本作『蜘蛛の巣を払う女』を賞賛しましたが、正直に言って“良くも悪くも単純になっている”というところもあり、その特徴は前作『ドラゴン・タトゥーの女』やスウェーデン版の3部作が好きだった人、または原作小説を読んだ方にとっては、やや期待外れの内容になってしまっているかもしれません。

というのも、『蜘蛛の巣を払う女』の原作小説では序盤から今回の依頼者である男の素性や内面、その息子が自閉症であったこと、また記者のミカエルにとあるタレコミがあるなど、人物描写や相関関係が細やかに描かれています。(前作でもスウェーデン版3部作でも)複雑に絡み合うキャラクターたちの心理描写や謎解きのような要素が魅力的であったのですが、それらは映画ではほとんど描かれておらず、前述したようにフェデ・アルバレス監督が目指した“ファイターとしてのセンスのあるリスベットのアクション”に特化している内容になっていると言っていいでしょう。(依頼者の息子が自閉症であることは映画でもそれとなく示されてはいるのですが)

また、今回の映画ではロジックのある攻防戦が展開する一方で、偶然に頼っているような、「それで逃げられるの?」と悪い意味でツッコミたくなるところも多く、主人公のリスベットが捕まる(気絶する)シーンも数回あり、やや説得力や緊張感に欠けてしまうところもある、というのは否定できません。やや “大味”に感じてしまう展開が多いというのは、無視できない欠点です。

映画情報サービスのIMDbでは10点満点で6.1点およびRotten Tomatoesでは41%、全米では初登場6位と、興行面と批評面の両者で苦戦を強いられていたのは、監督とキャストが変更になったことによるネガティブなイメージが先行していまい、実際の作風もガラリと変わっていることが原因なのかもしれません。

しかしながら、複雑な人間関係や心理描写が省略されているというのは、言い換えればアクションサスペンスのほうが前面に押し出されており、娯楽性が高まっているということ。2時間半を超える長編だった前作に比べ上映時間は1時間55分とタイトになり、性描写も残酷描写も前作やスウェーデン版3部作に比べて控えめでPG12指定に止まっています。やや複雑で敷居の高さを感じていたここまでのシリーズの中では、やはり取っ付きやすさはNo.1。今回から観る人にもオススメしやすい理由も、そこにあるのです。

フェデ・アルバレスは、前述したようにリメイク版『死霊のはらわた』の“小屋で悪霊と戦うホラー”や『ドント・ブリーズ』の“盲目のおじいさんとの鬼ごっこ”という良い意味でシンプルなジャンル映画を得意とする監督であり、今回の『蜘蛛の巣を払う女』もその作風に寄っています。これを肯定的に捉えれば、「あー面白かったー!」と劇場を後にできる、新年一発目に観る映画としてぴったりなのです。

また、映画を観た後は(観る前でも)原作小説を読んでみると良いでしょう。依頼者が抱えていた苦悩など、映画だけでは知り得なかった事を知り、物語にも十分な奥深さを感じることができるはず。とにかく、十分すぎるほどのエンタメなアクションサスペンスとして『蜘蛛の巣を払う女』を万人にオススメします。

(文:ヒナタカ)

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