大傑作『ひかりの歌』、全4章に渡る男女の関係性の物語は恋愛力UPに最適!

(C)光の短歌映画プロジェクト

短歌コンテストで全国から集められた1200首の中から、珠玉の4首を選んで脚本化し、さらにそこから長編映画として製作された『ひかりの歌』。

1月12日より公開されたこの話題作を、今回は初日の舞台挨拶付きの回で鑑賞してきた。

短歌という限られた文字数で表現される独自の世界感を、果たしてどの様に脚本化し映像化しているのか?

個人的にも非常に興味深かった本作だが、果たしてその内容と出来はどうだったのか?

ストーリー

都内近郊に住む4人の女性、詩織(北村美岬)、雪子(笠島智)、今日子(伊東茄那)、幸子(並木愛枝)は、それぞれ誰かを思う気持ちを抱えながら、それを伝えられずに日々の生活をつづけている。
旅に出てしまう同僚、他界した父親、閉店が近いアルバイト先の仲間、長い年月行方知れずの夫のことを思いながら、彼女たちは次の一歩を踏みだしていく。 (公式サイトより)

予告編

多数の応募作品から選ばれた珠玉の4首が、見事な長編映画に!

映画化を前提に開催された、「光」をテーマにした短歌コンテストに寄せられた1200首の中から、歌人の枡野浩一と映画監督の杉田協士が選出した4首の短歌を原作に製作された長編映画、それがこの『ひかりの歌』だ。

今回原作として選ばれた短歌は、以下の4首。

第1章
「反対になった電池が光らない理由だなんて思えなかった」
(原作短歌:加賀田優子)

第2章
「自販機の光にふらふら歩み寄り ごめんなさいってつぶやいていた」
(原作短歌:宇津つよし)

第3章
「始発待つ光のなかでピーナツは未来の車みたいなかたち」
(原作短歌:後藤グミ)

第4章
「100円の傘を通してこの街の看板すべてぼんやり光る」
(原作短歌:沖川泰平)

一見してお分かりの様に、今回選出された4首は、どれも読む者の想像力を刺激する作品ばかり!

この4首をもとに、最終的に全4章からなる長編映画として完成した本作。

果たして、これらの短歌から、どの様な映像作品が誕生したのだろうか?

読み手の想像力に訴える短歌の世界を、見事に映像化!

短歌に登場する言葉や物を、そのまま映像に登場させるのではなく、全4章とも観客の意表を突く展開や描写で映像化している本作。

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第1章と2章では、自分の居場所が無くなっていく閉塞感と孤独が描かれ、一転して第3章では、自分の居場所から一歩足を踏み出した主人公が、再び元の場所に戻るまでの心境の変化が描かれる。

そして、最後の第4章に待っているのは、そうしたつらい経験や旅を経て自身が内面から成長することで、元の居場所が輝きを取り戻し、豊かな人間関係が再びスタートするというメッセージに他ならない。

更に、直接の接点が無かった第1章と第2章が、第3章の冒頭で見事に交差する展開と、北海道の冬の情景の中で展開する出会いの物語を経て、ついに第4章で迎える温かい感動には、きっと多くの観客が「観て良かった!」と思えるはずだ。

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加えて、今回全4章を通して描かれるのが、男女や友達の間の距離感という、今のネット社会において重要なテーマとなっている点も、実に見事なのだ。

第1章から第2章で描かれる、男女の距離感の絶対的なすれ違いが、見事に第3章で希望へと繋がり、最終的に第4章で感動の着地を見せる!

紆余曲折を経て再び出会う男と女の幸福な関係性と、理想的な距離感を象徴する物として登場する”100円の傘”の見事な使い方は、是非劇場で!

最後に

いつまでも続くと思われた、穏やかで気心の知れた仲間と過ごす日常。その大切な居場所と人間関係を失っていく女性の心情を見事に描いた、第1章と第2章。

続く第3章では、自分の日常と居場所から遂に一歩足を踏み出した女性の姿と、旅先で出会う人々との距離感の近さ、そして本来の居場所へ戻るに至る、彼女の心の動きが描かれることになる。

そして、ラストを飾る第4章では、それまで丹念に積み重ねてきた全ての出来事や感情が、新たな関係性と幸せな日々への糧になるという、素晴らしすぎる着地を見せる本作!

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実は、全4章から構成される長編映画だけあって、本作の上映時間は『アベンジャーズ』並みの153分という長さ。

そのためか、ネットのレビューや感想には、どうしても上映時間が長かったとの内容が散見されるが、同時に全く長さは感じなかったとのレビューが多いのも事実。

実際自分も、鑑賞前はトイレの問題や、「同じような地味な内容のエピソードばかりで、この長さだったらどうしよう?」そんな不安を持って鑑賞に臨んだ次第。

でも大丈夫! 本作に関してそんな心配は一切無用だった。

登場人物たちの行動や心の動きを読み解きながら鑑賞していたので、冗談抜きで体感的に60分程度にしか感じなかったからだ。

いや、むしろ登場人物の内面を理解しながら鑑賞するには、絶対にこれだけの描写や、ゆっくりとした時間の流れが必要! そう思わずにはいられなかった。

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各エピソードのテイストは全く違うが、全4章が絶妙に絡み合って、最終的に結実することで得られる感動や満足感は、やはりこの153分という上映時間があればこそ。

特に、153分をかけて丹念に描かれてきた悩み・悲しみの全てが、幸福と希望に昇華される第4章の多幸感は、劇場で多くの観客と分かち合ってこそ価値がある、と言えるだろう。

本作に興味があるが、その上映時間の長さを理由に鑑賞を躊躇されている方は、是非何の心配もしないで劇場に足を運んで頂ければと思う。

鑑賞後、必ずあなたの心に光が射す珠玉の4編からなる『ひかりの歌』、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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