映画史に残る「優しく悲しい嘘」映画、『光をくれた人』

光をくれた人 ポスタービジュアル2

(C)2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC

「嘘つきは泥棒の始まり」という言葉がありますが、この世の中には「優しい嘘」なんて言葉もあります。

優しい嘘とは、誰かを守るためにつく嘘です。たとえば、大切な人を傷つけないためにつく嘘、なぐさめるための嘘、元気づけるための嘘。どれも相手のことを思ってつく嘘です。

自分のためにつく嘘と、大切な誰かのためにつく嘘。同じ嘘でもそこには大きな違いがあります。ただし、どちらの嘘も結果としては誰かを傷つけることになるのかもしれません。

本日ご紹介する『光をくれた人』は、まさに嘘が招く悲しい物語です。しかし、見終わった後は優しい気持ちになれる作品です。

あらすじ

戦争の傷跡で心を閉ざし孤独だけを求め、オーストラリアの孤島で灯台守となったトム(マイケル・ファスベンダー)。しかし、美しく快活なイザベル(アリシア・ヴィキャンデル)が彼に再び生きる力を与えてくれた。

彼らは結ばれ、孤島で幸福に暮らすが、度重なる流産はイザベルの心を傷つける。ある日、島にボートが流れ着く。乗っていたのは見知らぬ男の死体と泣き叫ぶ女の子の赤ん坊。その赤ん坊を娘として育てたいと願うイザベル。

妻の願いが過ちと知りつつ受け入れ、嘘の出生報告をしてしまうトム。4年後、愛らしく育った娘と幸せの絶頂にいた2人は、偶然にも娘の生みの母親ハナ(レイチェル・ワイズ)と出遭ってしまう――

誰かを守るためにつく優しい嘘が生む悲劇

光をくれた人 サブ6

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優しい嘘をつくことで、目の前の妻が救われる。だから、嘘をつくことは悪いことだと自覚しながらも、もしかして正しいことかもしれないと錯覚してしまったりも……。

優しい嘘をついて、幸せになることができたら結果的には良いことかもしれません。しかし、そこまでの効力のある優しい嘘の場合、別の誰かを傷つけたり、不幸にすることがあると本作は教えてくれます。

妻を救うためについた嘘によって深く傷つく人がいたこと。

嘘をついたことで自分たち夫婦は幸せを手に入れた。しかしそれと同時に不幸のどん底に落ちてしまった人がいる。その存在を知らなければどんなに良かったか。何も知らずに日々を幸せに過ごすことができたかもしれません。

他人の気持ちがわかりすぎてしまうから優しい嘘がつける

光をくれた人 サブ4

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本作に限らず、優しい嘘をつける人は、優しすぎるのです。優しすぎるがゆえに、相手の気持ちがわかってしまう。だからこそ優しい嘘をついてしまう。

しかし善意のつもりで、誰かを救うつもりでついた嘘で日々悲しみに暮れている人の存在を知った時、今度はその嘘の罪が自分にのしかかってくるのです。その人の気持ちが痛いほどわかってしまうから……。

一度ついてしまった嘘を通すためには、また嘘をつくしかなく、次々と優しい嘘が生み出され、その分また自分を苦しめることになるわけです。

そして、その優しい嘘を抱えきれなくなる時、白状してしまう時が来てしまうのです。

それは、優しい嘘をついた自分を許せなくなる時です。

本作で言えば、自分さえ黙っていれば家族の幸せは維持できる。周りの誰もが嘘だと気がつかないし、赤子を失った女性もその不幸に向き合っているのだから。

でも本当はそうじゃない。

その女性の不幸は、妻を幸せにするために自分がつくってしまったことなのだと。

もし同じ状況になったとしたら、どんな行動をするだろうかと考えさせられます。鑑賞後の帰り道、「俺だったら?」「私だったら?」と答えの出ない自問自答を繰り返すことになるかもしれませんが、見ておいて損はしない作品です。

ぜひハンカチ片手にご覧ください。
それではまた。ご存じ、ゆうせいでした。

(文:ゆうせい)

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