フレッシュレモンならぬフレッシュブラッドな美少女たちの『放課後戦記』!

思えば深作欣二監督の『バトル・ロワイアル』(2000)あたりがきっかけでしょうか、21世紀の青春群像映画の中に、非情なる殺戮を通して閉塞的な日常を生きる若者たちの叫びを描いたデス・ゲームものというジャンルが定着して久しい感があります。

そこに思想的もしくは哲学的な理由などをあれこれ模索していく向きもありますが、映画を見る側からすると、登場する10代から20代にかけての若手俳優たちの競演を通して、次代の日本映画界への希望を見出していくことも大いに可能ではあるでしょう。

今回ご紹介する『放課後戦記』もまた、学園という閉ざされた空間の中で繰り広げられていく、ある種のデス・ゲームものではありますが……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.300》

劇中に登場するのは全員女子というのがお愉しみで、また異彩を放ってもいるのです!

閉じ込められた学内で繰り広げられる
少女たちのシュールな殺戮劇

ある日の放課後、高校生の門脇瀬名(市川美織)は、日頃イジメを受けているクラスメイトの憑対弓立(りりか)から借りたハンカチを返そうと屋上へ赴き、そこで彼女を待っているうちに、うっかり居眠りをしてしまいました。

やがてあたりは暗くなり、ようやく目覚めた瀬名でしたが、まもなくして目の当たりにしたのは、何と手首を切られて苦しんでいる少女の姿!?

さらに遭遇したのは、殺し合いを強いられている少女たち!?

学校から出ることはできません(無理に出ようとする者は殺されます)。

ケータイの電波も届かず、完全に外界からシャットアウトされた少女たちは、「殺さなければ殺される」という単純かつ不条理に満ちたルールの下、殺戮の試練を強いられていきます。

一体なぜこのようなことが起きたのか?

答えの出ない悪夢の迷宮の中、いつしか記憶をなくしてしまっていた瀬名は、いつも彼女を助けていたという護華養子(秋月成美)らとともに決死のサバイバルを試みますが、ひとり、またひとり、少女たちは殺されていき……。

本作は2016年10月に初演し、人気を博した舞台劇『放課後戦記』の映画化です。

舞台ではヒロイン瀬名をNMB48の市川美織(先ごろ卒業公演を行ったばかりですね)と、『花に嵐』(16)のりりかがダブルキャストで務めており、今回の映画作品では市川美織が瀬名を演じています。

現代社会の歪みに対峙しきれない
思春期少女たちのもろさや悲しみ

閉ざされた学内における少女たちの理不尽な殺戮劇という設定そのものは、デスゲームものとして特に目新しいものでもありません。

ただし、要はその中で何を観客に訴えていくかがこの手の作品のキモであり、その意味ではなかなか答えの出ない悪夢の迷宮に閉じ込められた少女たちの姿から、さまざまな問題を抱えた現在社会の歪みに対峙しきれない思春期のもろさや弱さ、悲しみといったものが巧みに醸し出されていきます。

バトル・シーンそのものはバイオレンス・タッチではあれ、スプラッタ残虐ショー的不快感よりも、どこかしらシュールな情感を呼び起こす映像美を構築すべく腐心しているのが見て取れます。

また登場する少女たちは単にセーラー服姿ではなく、ゴスロリ系もいればジャージ姿、アーミールックなどさまざまで、そうしたコスプレ的感覚も本作の風情を一種異様な魅惑的なものへと導いていくれています。

一体なぜこのようなことが起きたのか、その真相などはネタバレになるので記すことはできませんが、やはり“今”という時代を反映させた思春期のはかなさなどを痛感させられるものに成り得ているかと思われます。

いつもは「フレッシュレモンになりたいの~!」などと、テレビのバラエティ番組で明るく陽気な姿を披露している市川美織の、それまでとは真逆ともいえる静謐なまでに倒錯した“フレッシュブラッド”とでもいった負の存在感を醸し出しているあたりも特筆すべきで、おそらくは舞台&映画のこの作品が彼女にとっての新境地と化していることも間違いないでしょう。

彼女以外にも、りりかをはじめ、TV『獄門島』(16)も印象深かった秋月成美、『特命戦隊ゴーバスターズ』から最近は『ラブライブ!サンシャイン!!』の声優としても人気の小宮有紗、本作と同日公開の傑作青春映画『大和(カリフォルニア)』にも出演の遠藤新菜など、次代を期待させる若手美少女俳優らの競演も大いにお愉しみです。

監督はドキュメンタリー出身で、『便利屋エレジー』(17)などの劇映画を発表している土田準平。

個人的に若手スタッフ&キャストが集結した作品は、妙にまとまりがあってお行儀のよいものよりも、多少粗削りでもいいから、何かを訴えようともがいているもののほうが圧倒的に好みではあります。

その伝で申すと、『放課後戦記』に関わったスタッフ&キャストの次回作も、ぜひ見てみたいと思っている次第です。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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