映画コラム

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2016年10月06日

意外と暗い過去を背負っている国―イタリアの過去と現在を描く映画5選

意外と暗い過去を背負っている国―イタリアの過去と現在を描く映画5選

毎年「イタリア映画祭」が開催されるほど日本ではイタリア映画が愛されています。イタリアに憧れて、その明るい雰囲気を楽しみたい人やイタリア語を勉強するために映画を見たい人など、イタリア映画世界への入り口がたくさんあると思います。その中で「イタリアの現代史を知りたい」という人も少なくないでしょう。

というわけで今回はイタリアの過去と現在を理解できるための映画5選ご紹介します。

1:『ペッピーノの百歩』(2000年)


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世界中で根強いイタリア=マフィアというステレオタイプ。マフィアの存在を否定できませんが、偏見的なイメージに留まらずマフィアを戦っている人物も知りたい人にマルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督の『ペッピーノの百歩』をおすすめします。

タイトルの「ペッピーノ」は1978年に暗殺されたジュゼッペ・"ペッピーノ"・インパスタートのことです。シチリアの小さな村チーニジに住むペッピーノの家族はマフィアの一族で、家はボス・ターノの家から100歩しか離れていません。ペッピーノもターノのように権力を握る運命をもっていますが、彼がそれを拒否する。

『ペッピーノの百歩』がペッピーノと彼の仲間たちによる新聞・ラジオ放送での活動を描き、彼らのマフィアへの糾弾を語ります。

2:『フォンターナ広場 イタリアの陰謀』(2012年)


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こちらもマルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督の映画です。

1969年12月12日にミラノにあるフォンターナ広場で、全国農業銀行が何者かによって爆破された。「フォンターナ広場爆破事件」と呼ばれているこの事件はイタリア最大の未解決事件であり、「鉛の時代(anni di piombo)」(武装組織によるテロの相次いだイタリアの1970年代)の出発点としても知られています。『フォンターナ広場—イタリアの陰謀』は、パオロ・クッキアレッリの小説『フォンターナ広場の秘密』を基に今でも真犯人は明らかにされていないこの事件にまつわる謎を語ってくれます。

1960年代からのイタリアにおける学生運動や「鉛の時代」に興味ある人は併せて『輝ける青春』(2003年)も見てみてください。

3:『夜よ、こんにちは』(2003年)


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マルコ・ベロッキオ監督の傑作作品『夜よ、こんにちは』では、1978年に起きた極左武装集団「赤い旅団」によるアルド・モロ元首相誘拐暗殺事件が描かれています。

「フォンターナ広場爆破事件」や「ボローニャ駅爆破テロ事件」とともに、アルド・モロ元首相誘拐暗殺事件も「鉛の時代」の代表的な事件で、今でもイタリア人の脳裏に焼きついています。

同じ事件を描いた映画は何本かありますが、それらの映画と違ってベロッキオ監督がCIA や KGB による陰謀説を取りあげるのではなく、赤い旅団のメンバーの視点から事件を語ってくれます。

4:『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』(2008年)


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パオロ・ソレンティーノ監督『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』は、長期間にわたってイタリアの首相を務めたジュリオ・アンドレオッティの実像を描く映画です。

戦後イタリアの最強政治家としても知られているアンドレオッティは、自分の権力を利用して犯罪に手を染め、マフィアとの関係や汚職の疑惑で首相の座を追われました。2013年に他界したアンドレオッティが今でもイタリア政治に影を落としている人物だけあって、『イル・ディーヴォ』を通じてイタリアの過去と現在を知ることができるのではないかと思います。

ちなみに、パオロ・ソレンティーノ監督が今度かの有名イタリア元首相シルヴィオ・ベルルスコーニについても映画をつくりたいと発表しました。こちらもイタリアを知るための貴重な教材になるはず!

5:『海と大陸』(2011年)


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エマヌエーレ・クリアレーゼ監督『海と大陸』は、地中海に浮かぶリノーサ島で設定されています。そこに暮らす主人公フィリッポは、漁師の家族の一員で、70歳の祖父エルネストと共に海に出ていたある日アフリカからボートに乗ってやってきた数人の難民を助ける。

いわゆる「難民危機」が2015年から世界中に注目を浴びていますが、90年代から移民や難民がアフリカから113キロしか離れていないシチリアを目指して危険な旅に立っているのです。難民の現実を知りたい人はぜひ『海と大陸』を見てみてください。

ちなみに、同じく地中海を渡ってシチリアを目指す難民の現実を語る映画『Fuocoammare : Fire at sea (海の火)』(ジャンフランコ・ロージ監督)は2016年ベルリン映画祭の金熊賞を受賞し、アカデミー賞のイタリア映画代表としても選ばれました。日本でも上映されるかもしれないのでお見逃しなく!

まとめ


イタリアは「明るい」というイメージを持たれやすい国ですが、実は非常に暗い過去を背負っているのです。今度映画を通じて、その歴史に触れて偏見的なイメージを乗り越えてみてはいかがでしょうか。

(文:グアリーニ・ レティツィア)

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