不倫ネタは世界共通で盛り上がる!?『彼女がその名を知らない鳥たち』白石和彌インタビュー

10月28日(土)公開の映画『彼女がその名を知らない鳥たち』は、沼田まほかるが2006年に出版した同名小説の実写化。蒼井優を主演に、阿部サダヲ、松坂桃李、竹野内豊らが“最低”な人間を演じる。

メガホンをとったのは、『凶悪』や『日本で一番悪い奴ら』などの白石和彌監督。今回、初のラブストーリーを手がけた白石監督に話を伺いました。

──今作は、“共感度0%の最低の登場人物しか出てこない”と紹介文にありますが、蒼井優さんが演じる十和子は、意外と共感できる女性もいるんじゃないかなと感じました。

白石和彌監督(以下、白石):どうしてですか?

──自分のことを最低な女だと思ってる人って、少なくないと思うんです。そこで共感する部分だったり、十和子よりはマシかも、と救われるところもあったり、嫌いになりきれない不思議な存在だな、と。蒼井さんは十和子像を落とし込むのに苦労された、と伺ったんですが、どのようにビジョンを決められていったんですか?

白石:映画って、本当は主人公に感情移入して観ることが多いと思うんです。でも、十和子に関しては、クレーマーだし、同居人にひどい態度をとったりとか、なんて嫌なやつなんだろう、っていう絶対感情移入できないであろうところから始まる。

そこで、どこまでお客さんに嫌われる勇気を持てるかな、という話はしていて。蒼井さんもそこは不安だったと思う。でも、観ていくうちに、だんだんと十和子がかわいそうになり、かわいく思えてくる。その感じは絶対作れると思っていたので、そこは心配していなかったですね。

共感はできないけど、理解できるところはある、という感じで十和子像ができていきました。だから、ビジョンとしての違いはなかったと思うけれど、役者として肉体化をしていくのは難しいだろうな、と思いました。

──そんな十和子を演じられるのは蒼井優さんしかいない、とオファーされたそうですが。

白石:芝居がうまいし、ブサイクな自分になれる、それを厭わないのが彼女のすごいところ。どう見せたら効果的かというのを、ちゃんとわかっているところが素晴らしいです。

──スクリーンのなかでは、いい意味で、本当にその辺にいそうな女の人っていう感じがしました。

白石:十和子として、作品に溶け込んでくれましたね。

──ちなみに監督は、阿部サダヲさん演じる陣治に感情移入して撮影されていたということですが、特にどういうところに共感したんでしょうか。また、一般の男性から見たときに、陣治はどのように映ると思いますか?

白石:例えば、だらしなさとか所作とか、陣治がもっている要素って、すべての男が持ってるものだと思うんです。そこがすごく理解できるんですよね。じゃあ、陣治のような愛も持っているか、というと、そうではないんだけど…。

あと、誰でも、夫婦だったりパートナー同士で喧嘩したりするでしょう? 僕自身、ときどき陣治のように怒られたりするから、そのときの気持ちはすごくよくわかる。原作を読んでいるときからそうだったかな。

──では、監督自身は夫婦喧嘩をしたとき、陣治ほど下手に出ないにしても、「もう出て行ってやる!」みたいに、奥様に対して強く出ることはないタイプですか(笑)?

白石:「ハウス!」って感じです。怒られたら自分の部屋にこもっちゃったりします。さすがに十和子ほどひどいことは言われないですけど、陣治に近い感じで、負け犬のようになっていますね。

──そういったところは、世間の男性が見ても共感できるところなんですかね。

白石:絶対わかると思います。竹野内豊さんとかはいい男だから、そんなことないかもしれないけど…(笑)。でも、よっぽどのDV男でもない限り、みんな一緒だと思いますよ。

だからなのか、「よかったですよ!」といちばん言ってくれて、ハグまで求めてくるのはおじさんたちが多い(笑)。おっさんホイホイな映画です。

──そういう人たちの表に出せない愛みたいなものを、極端な形ではあるけれど、陣治が示してくれているように感じて自分を投影するんでしょうか。

白石:うん。それに、薄汚れて、どこかに病気も抱えてて、腰も痛くて、そんなおっさんだけど、実は…という面も出てくる。そこへの憧れもあると思います。

──薄汚れた、といえば、陣治の不潔さは、現場で盛り上がりながらできたものだと聞いたのですが、特に男性スタッフがノリノリだったそうですね。それを見る、女性スタッフの反応はどうでしたか?

白石:阿部さんが演じていることもあって、陣治がかわいく見えちゃうんですよ。だから、シーンが終わったあととか、衣装を着替えたあととかに、女性スタッフに「どう? お前だったら陣治と住みたい?」って聞きました。それで、「いや〜、ちょっと無理です」って返ってきたら、「よしよし!」って思いながら。

「陣治に対してそばにいてほしくない、って思っていなきゃいけないんだけど、ついついかわいく思えてしまう」って蒼井優ちゃんも言ってましたね。それを出さないように演じるのが大変だったって。

僕らも、陣治が本当にかわいくなりすぎちゃって。でも、話が進展していくほどに陣治はストーカーっぽくなっていく。その感じがちゃんと出てるかな、っていうのは不安でしたね。でも、さすが阿部さん。うまいこと演じてくださいました。


    ライタープロフィール

    大谷和美

    大谷和美

    高校2年の時に観た「バトルロワイアルⅡ」に衝撃を受け、映画の道を志すも、縁あって雑誌編集者に。特撮誌、若手俳優グラビア誌等の編集・ライター、WEB編集者を経て、現在はフリーランスで活動中。人間の感情や社会の闇を描いた邦画が好きで、気づけばR指定のDVDばかり借りていることも。一方、元々好きだったライダー・戦隊などの特撮作品やコメディ映画も好んで観ます。他、元上司のバカタール加藤が主催するニコ生番組「崖の上の生放送」に準レギュラーで出演中。

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