30歳にもなって「家族」をテーマにした映画に弱い|映画で人生が動いた瞬間


Photo via Visual Hunt

30歳にもなって、「家族」をテーマにした映画に弱い。いや、30歳になったからこそ、「家族」をテーマにした映画に弱くなったのかもしれない。

異性としての愛から、家族としての愛に変わる瞬間

『アバウト·タイム~愛おしい時間について~』が最高に好きだという話は過去の記事でも散々したが、あの作品の素晴らしいところは主人公やヒロインの心のベクトルが「異性への愛」から「家族への愛」に変わっていくその変遷を、軽妙な言い回しで描いているところにあると思う。

(C)Universal Pictures

出会ったその日に付き合うことになった主人公とヒロインは、(実は出会うまでにもいろいろあるのだが)ちょっぴり官能的でひたすらお洒落な同棲時代を過ごした末に結婚し、三人の子どもを授かる。ふたりを取り巻く環境がどんどん変化していく中、徐々に父親·母親としての表情と責任を身に付けていくのが見所のひとつと言える作品だ。

中でも結婚式に向けた打ち合わせシーンや、二人目、三人目の子どもを作るか夫婦で話し合うシーンなどは、恋人たちには訪れない夫婦ならではのやりとり。そこに心を打たれる。

(C)Universal Pictures

夫婦になる。親になるということは、お互いの人生と子どもたちの運命を自分が半分背負うということ。そこに対するプレッシャーは時に喜びよりも大きく描かれ、僕らに「将来、不安だな」と思わせる要因のひとつとなることがあるが、「結婚して親になるって、すばらしいことだよ」と優しく背中を押してくれるのが、この作品の一番の魅力。

子育ての難しさや煩わしさ。そういったマイナス要素ばかりに目が向かなくなったのは、この作品に出会ってからだったし、結婚や出産にポジティブなイメージを持ちたい人にはお薦めしたい作品だ。

「子」の存在が、自分を「親」にさせる

どこまでもミーハーな話だけれど、家族をテーマにした映画としては『おおかみ子どもの雨と雪』も、DVDが壊れるんじゃないかってほど見た作品。

(C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会

宮﨑あおいが声を演じる花(はな)が母親になっていく姿はたくましすぎるし、非現実的すぎるって声も多いけれど、そんな細かな部分はどうでも良しとしなければ楽しめない細田守監督作品のご都合主義的なところが僕は嫌いじゃないし、なにより、花の第一子である雪(ゆき)の幼少期に描かれる「子どもあるある」が、「子育て最高やん」と思わせてくれる。

雪が散歩に行きたがってダダをこねて部屋中駆けまわるシーンや、保育園に入りたくて部屋の隅っこってグズっているシーンなどは、「わかる、子どもってそうやってダダこねたりイジけたりするわ」と、自分が子どもだったころを思い返すこともできるし、子どもがいる家庭には、「あーそうだよねウチの子もそうだわ」とヒドく共感してしまうシーンがある。

(C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会

作中に描かれる子どものそういった姿を通して、「自分も昔はあんなだったなあ」と振り返りつつ、子どもが子どもらしいことをするたびに、親は親らしいことをしなくてはと思い、その役割の連鎖が家族を紡いでいく。

「子育てなんてできる自信がない」と言う人は多い。でも、人は、子どもが生まれたからといって突然親になるのではない。子どもを育てていくうちに徐々に親になるのだと、そんなことを教えてくれた作品。

親という偉大な存在から、いかに自立できるか

子が親に影響を与え、親が親らしくなっていく一方で、今度は親が子への執着を持ちすぎて依存状態から脱せられなくなったり、子が親の存在をコンプレックスに思ったりすることが、「親子」を続けていくうえでひとつの関門となることがある。

「大切に育てたい」という想いは、度が過ぎると「自分の想定内に留まっていて欲しい」という欲圧へと姿を変える。同様に、大切に育てられた結果、いつまでも親の判断がなければ行動できなかったり、傍から離れられなかったりする子も見かける。

母と暮せば

(C)2015「母と暮せば」製作委員会

山田洋次監督作品『母と暮らせば』は、第二次世界大戦から3年後の長崎を舞台に、既に死んでしまった浩二とその母親を描いた作品だが、まさにこの共依存関係を如実に捉えている。表している。

二宮和也演じる浩二と吉永小百合演じる伸子。ふたりの狂気を感じるまでの親子愛は、死んでしまった人を惜しむ気持ちのそれとは一線を画しているようにも思え、僕らに死を乗り越えて自立することの大切さを強烈に訴えかける。

一方、劇中で出てくる小学校2年生の女の子が、父親がなくなったことを役場で聞かされるものの、「私には二人の妹がいて、母親もいないから、私が一番しっかりしなきゃいけない。だから泣かないと決めている」と言い切るシーンは、母親に向かって泣いてばかりの浩二とのギャップを克明に描く。

(C)2015「母と暮せば」製作委員会

子への自立を求めるタイミングというのはいつだってわかりづらいもので、先に挙げた『おおかみ子どもの雨と雪』だって、「もっと教えたいことがあったのに」と、自立して親元を離れる雨に向かって叫ぶ花のシーンが印象的である。

子は子、親は親。でも同時に、子も人、親も人なのである。
完璧な人間なんていないし、まったく同質化できる人間もいない。個として生きる以上はいずれ離れていくものだし、だからこそ、それまでの時間を精一杯愛し、認め、許してあげることが、親子にとって大切なのではないだろうか。

ああ、今日もまた、「家族」をテーマにした映画に弱い。

人物紹介カツセマサヒコ

1986年東京生まれ。下北沢の編集プロダクション・プレスラボでのライター・編集者経験を経て、2017年4月より独立。

広告記事、取材記事、コラム、エッセイ、Web小説等の執筆および、
メディア運営・企画・取材・編集・拡散等の領域で活動中。ラジオ番組を持つのが夢。

(文:カツセマサヒコ)

〜映画との出逢いで人生が動く瞬間がある。人生を動かす映画がある〜

誰にでも心のひだにひっかかり、ふとしたときに思い出す映画がある。理由も映画も人それぞれ。でも、その映画は誰かの人生の一部を、形成しているのかもしれない。
「映画で人生が動いた瞬間」では、そんな誰かの“人生の糧”となった映画を紹介します。それが、明日の誰かの新たな “人生の糧”なるかもしれない。そう思うと、少しわくわくします。

(松竹メディア事業部&シネマズby松竹編集部)

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