喜劇映画で「死」を描くタブーに挑戦、『家族はつらいよ2』

(C)2017「家族はつらいよ2」製作委員会

5月27日、山田洋次監督がメガホンをとった大ヒット家族コメディ映画の第2弾『家族はつらいよ2』がついに公開となりました。

熟年離婚問題を乗り切った平田家が、新たに直面するものとは?

前回、周造(橋爪功)と富子(吉行和子)の熟年離婚の危機を見事(?)乗り越えた平田家の面々。今回、高齢者による運転の危険性を心配した家族たちは、周造に運転免許を返上させようとしますが、わがままで自分勝手な周造が家族のいうことを聞くわけがなし。富子の不在をいいことに、行きつけの飲み屋の女将・かよ(風吹ジュン)を誘ってドライブに出かけます。

そこで、偶然、高校時代の同級生・丸田(小林稔侍)と再会した周造。この丸田との出会いをきっかけに、平田家で誰も予想のつかなかった大事件が起こり、彼らは大騒ぎと奮闘を繰り広げます。

熟年離婚をテーマにした前作では、周造と富子の離婚問題について、他の家族たちがあたふたしている様がなんともおかしく、たくさん笑わせてもらいましたが、第2弾となる本作は、笑える一方で、考えさせられるセリフや場面も多く、コメディではありますが、よりシリアスさ、重みが増しているように感じられました。

今回、平田家の面々は、ある“死”に直面することになります。

彼らが目にするのは、幸せとはいいがたい “無縁”でのそれであり、それだけに、彼らはその死を前にして戸惑い悩みます。

ただ、悩むといっても、そこでドタバタするパワーを決して失わないのが平田家の素晴らしさ。驚き、悲しみながらも、喧嘩したり、兄弟を悪くいってみたり、おバカな失敗をしてしまったりと、前作同様、面白おかしく見ているほうを大笑いさせてくれます。

喜劇映画で「死」を描くことはタブーだけれど、あえてそのタブーに挑みたいと語っていた山田監督。(公式サイト・イントロダクションより)

実際、劇中の“死”と関わる場面は、多くの観客の皆さんが思わず笑ってしまうだろうという仕上がりでした。

ただ、そこで起こる笑いが旅立つ人を損ねることにはならないだろうと思うのです。

死を前にしても面白おかしい行動を繰り広げる平田家ですが、彼らはそもそもウケを狙っているわけではなく、いたって真剣。彼らの振る舞いの根底には、人生を生き抜いた故人への敬意がきちんと存在しています。

だからこそ、見ている側も平田家の滑稽な奮闘ぶりに安心して笑うことができ、実際、筆者は、彼らのドタバタを見て大笑いし、そして、彼らが死と対峙していく場面では、笑いの余韻の中でも涙がこぼれ、「これはこれでありなんだろうな」と泣き笑いしながら、映画の幕が下りるのを見届けました。

「無縁社会」というテーマから見えた『男はつらいよ』と変わらぬ思い

山田洋次監督が本作でテーマにしたのは、「無縁社会」だといいます。(公式サイト・イントロダクションより)

映画の佳境で、無縁であることについて周造が語るシーンがあり、おそらく、これこそが山田監督が何より伝えたかったメッセージなのではないかと、筆者はそう思えました。

そして、上記の周造のシーンが、筆者の中で山田監督の代表作『男はつらいよ』の一場面と重なりました。

『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』で、寅さん(渥美清)が画家の老人(宇野重吉)に怒りをぶつけるシーン。

当初、この老人が無銭飲食を咎められたのを寅さんが助けて自分の家につれていくのですが、その後、お金をだましとられた芸者を救うために絵を描いてくれと寅さんが頼みにいくと、老人は断り、そこで寅さんは激しく怒ります。

身よりもたよりものない宿なしのじいさんでかわいそうだと思ったから、家につれていった。もし、ずっといたいなら一ヵ月でも二ヶ月でも泊めていいと自分は思った。なのに、あんたはかわいそうな思いをしている芸者に同情もできないのかと。

『男はつらいよ』の寅さんと『家族はつらいよ』の周造は、実は非常に似ています。まず、二人とも非常に自分勝手。家族に迷惑をかけっぱなしにもかかわらず、本人はいたってお気楽でマイペース。だけど、ただわがままかというと決してそうではなく、家族や関わった人を大切にしようとする人情も持ちあわせています。

『家族はつらいよ2』で周造が何を語ったかは、ぜひ、映画館でじかに確かめていただけたらと思うのですが、自分が関わった人を助ける……という『男はつらいよ』の寅さんの心情と同じものを周造に見た気がして、人と人が社会の中で縁をつなぐこと、あるいは無縁で生きることについての何ら変わらぬ思いが、『男はつらいよ』から『家族はつらいよ』に語り継がれているような気がしてなりませんでした。

『家族はつらいよ』第1作のパンフレットでは、「男であり、女であり、人間であることは、難儀で厄介なことだけれど、でも何とか、生きていかないといけない」という山田監督のメッセージがありました。

人間であることは、本当に大変。家族で生きること、社会で生きることは煩わしいことだらけ。生きているかぎり、生や死と向き合わねばならない。本当につらい。

けれど、生きていれば、いつか誰かと縁ができて、楽しいことも、自分や誰かの滑稽さに大笑いできることもある。

『家族はつらいよ2』は、そんな人生を生きる意味を教えてくれた映画でした。

笑って泣いて、家族と生きて、誰かと生きていく、そんな人生をこれから歩んでいきたいです。

(文:田下愛)

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    ライタープロフィール

    田下愛

    田下愛

    フリーランス・ライター。雑誌、書籍、Webメディアで、幅広いジャンルの仕事をこなして活動中。ファンタジー映画が大好物で、『オズの魔法使い』『ナルニア国物語』『アリス・イン・ワンダーランド』など、魔法やおとぎの国を扱った作品にはすぐ飛びついてしまいますが、一方、『レインマン』のような人間をきっちり描いたドラマも好き。石ノ森章太郎先生をリスペクトする昭和特撮フリークでもあります。

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