女性に性転換手術させられた殺し屋の復讐!『レディ・ガイ』!

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世の中、奇抜なアイデアで攻める映画があるものだなあと感嘆させられることは多々ありますが、さすがにこの作品を見たときは、ぶっとんでしまいました。

しかも、それが『48時間』(82)『ストリート・オブ・ファイヤー』(84)などヴァイオレンス・アクション映画の名匠ウォルター・ヒル監督作品となると、ただただ驚くばかりのような(いや、よくよく考えればそうでもないか)……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.280》

映画『レディ・ガイ』は何と、無理やり性転換手術で女にさせられた殺し屋の復讐を描いた、ぶっとびヴァイオレンス・アクション映画なのです!

まさにレディ・ガイな“兄貴”
ミシェル・ロドリゲスの役者魂!

『レディ・ガイ』のストーリーは極めてシンプルです。

裏社会で名を馳せる凄腕の殺し屋フランク・キッチン(ミッシェル・ロドリゲス)が、ある日突然、顧客でもあるマフィアのボス、オネスト・ジョン一味の襲撃を受けます。

「お前は敵を作りすぎた」

ジョンのその言葉と共に激しい銃撃戦が展開され、やがてフランクは被弾し、意識を失いました……。

そして目覚めたとき……何と彼の体は女になっていた⁉

そう、フランクは意識を失っている間に、性転換手術を施されていたのです!

まもなくして、彼(いや、もはや彼女?)を手術した女医(シガニー・ウィーヴァー)の声が聞こえてきます。

どうやら彼女はフランクに恨みを抱いているようです。

かくしてフランクは女医を見つけ出し、落とし前をつけるべく、復讐を開始するのでした!

いやはや、何ともぶっとびのお話ですが、映画の作りそのものもぶっとんでいます。

この映画の主演は女優のミシェル・ロドリゲスですが、何と彼女が男だった時代のフランクまで演じているのです!

しかもムキムキ・マッチョなヌード・ショットもあれば、女性との激しいSEXシーンまで用意されている⁉

つまりは特殊メイクやCGを用いて、これらの描写を可能にしているわけですが、それにしてもこうした設定の役柄に果敢に挑んだミシェル・ロドリゲスの根性に脱帽してしまいます。

思えば彼女はデビュー作『ガールファイト』(00)で主人公のボクサーを演じときから只者ではない目力を発散させながら、研ぎ澄まされた肉体美を披露していましたが、その後も『バイオハザード』シリーズや『ワイルド・スピード』シリーズなど、そこにいるだけで他を圧倒する存在感を常に見せつけてきた“兄貴”女優でもあるわけです。

『レデイ・ガイ』は、その邦題が示すように、そんな“兄貴”ミシェル・ロドリゲスの代表作として後世に伝えられることでしょう。

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実は名匠ウォルター・ヒル監督の
本領発揮(?)な快作

さて、ウォルター・ヒル監督です。

1970年代にチャールズ・ブロンソン&ジェームズ・コバーン主演『ストリート・ファイター』(75)で監督デビューして以来、『ザ・ドライバー』(78)『ウォリアーズ』(79)『ロング・ライダーズ』(80)『48時間』(82)『ストリート・オブ・ファイヤー』(84)『レッド・ブル』(88)『トレスパス』(92)などなど、タイトルを記すだけで心が燃えてくるヴァイオレンス・アクション映画を発表し続けてきた彼、最近でもシルヴェスター・スタローン主演『バレット』(12)で健在ぶりを示したばかりです。

今回はウォルター・ヒル監督にとって初の女優を主人公に起用した作品となるわけですが、これが実は既に70年代から企画されていたという事実にも驚かされます。

もっともヒル映画の中には整形手術を施した男の復讐譚『ジョニー・ハンサム』(89)もあります。
(思うにこの作品こそ、70年代に企画された『レディ・ガイ』の変型版だったのかもしれません)、

また一見男性主体の映画ばかり撮っているようでいて、実は『ザ・ドライバー』のイザベル・アジャーニのようにアダルト・ムーディな女性美を際立たせたり、『ストリート・オブ・ファイヤー』のエイミー・マディガンのように男顔負けの存在感を披露する“漢(おとこ)”が存在したりもしています。

要するに男と女のさまざまな組み合わせによって“漢”の世界をクールに、スタイリッシュに描き上げていくのがウォルター・ヒル監督作品の本領といってもいいでしょう。

また『エイリアン』シリーズのプロデューサーとしてしられる彼だからこそ、今回の敵役にシガニー・ウィーヴァーを起用することもできたのでしょう。

意外にこの作品、ウォルター・ヒル監督を語る際に欠かしてはいけない作品なのかもしれません。

最近は幻の未公開映画『サザン・コンフォート/ブラボー小隊恐怖の脱出』(81)や『ストリート・オブ・ファイヤー』などがブルーレイ化され、ファンには嬉しいこの時期に新作『レディ・ガイ』まで登場とは、日本の映画ファンにとって何ともめでたい2018年の新春でありました。

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(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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