『前田建設ファンタジー営業部』レビュー:マジンガーZの格納庫をマジに見積もった人々の奮闘を描いた一大快作!

(C)前田建設/Team F (C)ダイナミック企画・東映アニメーション 

2020年も1か月経ったばかりではありますが、結論から先に申すと早くも今年度屈指のケッ作の登場です!

というか、この映画を試写で見たのは昨年の秋で、実は2019年度のベスト・テン上位に入れたくて入れたくて仕方なかったくらいの大興奮!

その名も『前田建設ファンタジー営業部』!

一見お堅そうな割に“ファンタジー”って何? と突っ込みたくなるタイトルではありますが、その実、何ともくだらないことに一所懸命マジメに取り組んだ大人たちの一大奮闘劇!(こういうテイスト、個人的にも大好き!)

その中身は……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街435》

何と『マジンガーZ』の格納庫を作るというシミュレーションをマジにやってしまったサラリーマンたちの、衝(笑!)撃の実話の映画化なのでした!

何と実話を基にした
壮大なプロジェクト!?

映画『前田建設ファンタジー営業部』は、タイトルに偽りなく前田建設工業株式会社なる実在の企業が、実際に敢行した一大プロジェクトを映画化したものです。

事の起こりは2003年、あるとき突然、広報グループの上司アサガワ(小木弘明)が「うちの技術でマジンガーZの格納庫を作れるか?」と部下のドイ(高杉真宙)に問いかけたことで、そこに同僚のベッショ(上地雄輔)、エモト(岸井ゆきの)、チカダ(本多力)も巻き込まれていきます。

そのうちアサガワは会社の広報企画として「マジンガーの格納庫を作っちゃおう!」と提言!?

マジンガーZとは、もちろん永井豪原作の人気SFロボット漫画であり、1970年代初頭に放映されたTVアニメーションは世界的に有名でもあります。

しかし『マジンガーZ』は当然ながらフィクション、架空の物語であり、要はマジンガーの格納庫を作ることは可能か否かをシミュレーションしてみようということなのですが……。

1990年代以降の閉塞&倦怠が続くサラリーマン社会の中で、働く生きがいなどまったく見出せないでいる若手社員のドイには、24時間戦い続けた1980年代バブル期を経験しているアサガワの熱気など(しかも頓珍漢な!)、ただただウザイばかり。

またさすがに1970年代の作品ゆえ、20代のドイはその存在は知っていても、マジンガーへの思い入れも特にありません。

しかし、まずはアニオタのチカダが、続いて世代的にぎりぎりマジンガーを再放送などで見ていたベッショがいつのまにかアサガワに陥落、いや共闘し始めた!

かくして、もしファンタジーの世界(つまりは『マジンガーZ』の世界観)からマジンガーZの格納庫製作を前田建設が依頼されたとしたら、いったいどういった設計で? どのくらいの工期で?どのくらいのコストで? などなど現実の仕事とみなして取り組み、それをwebで発表し、会社のPRに結び付けていくプロジェクトが始まってしまいました。

最初はしぶしぶと取り組まざるを得なくなったドイたちでしたが、これがいざ始めてみるとなかなかスケールの大きい手応えのある仕事でして……!

まさにファンタジックな
『プロジェクトX』!

本作の面白さは、生身の人間たちがあたかもアニメ世界の中に入り込んでマジンガーの格納庫を作るべく切磋琢磨していく模様を『プロジェクトX』もかくやのドラマティックな展開の数々で魅せこんでいくところにあります。

つまりは空想世界を利用して、まさに『黒部の太陽』『超高層のあけぼの』『富士山頂』など往年の建築スペクタクル超大作に匹敵するエンタテインメントを作り上げてしまったというカタルシス!

こういったところに“働き方改革”など持ち出すのも野暮で無粋でしかなく、むしろアニメや漫画といった夢の世界に真面目に熱く堂々と対峙できる時代が到来したことを、素直に喜びたいところ。

つまりは20世紀のモーレツ・サラリーマン奮闘記とは一線を画しつつ、何かに対して熱くなることを大いに称賛していく前向きなエンタテインメントとして見事に屹立しているのでした。

監督は『トリガール』『あさひなぐ』(17)『映画賭ケグルイ』(19)など熱くコミカル、かつみずみずしい青春映画に定評のある英勉で、今回もこちらの期待を何ら裏切ることなく、ファンタジー営業部のエネルギッシュな活動の数々を楽しく魅惑的に描出してくれています。

キャストそれそれも好演で、特に主人公ドイ役の高杉真宙は、低温気質だったのが徐々に体温を上げていく過程を巧みに好演。

また『愛がなんだ』(19)ではあまりにも痛すぎる片想いの恋を展開していた紅一点の岸井ゆきのですが、今回も恋ゆえにプロジェクトにはまりこんでいきつつ、実に幸せそうな乙女心を可愛く楽し気に体現しています。

ちなみに実際の前田建設ファンタジー営業部はwebにアップされた『マジンガーZ』格納庫受注プロジェクトが大いに注目を集め、その後も『銀河鉄道999』のメガロポリス中央ステーションや『機動戦士ガンダム』ジャブロー基地、『宇宙戦艦ヤマト』そのものの建造などの空想プロジェクトに取り組み続けています。ぜひググってwebをご覧ください。

それにしても、営業の見積もりひとつ採ってもこういった極上のエンタテインメントが成立できるとは、実に面白い時代になったものだなとも痛感させられた次第。

何となく今働くことに気合が入らなかったり、心のスランプに陥っている方々にも是非お勧めしたい、見終えて元気の出る快作です!

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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